第293話 豪のゴドバ戦(進化)1

文字数 1,750文字



「コイツ、知性を完全になくしたわけじゃない。たぶん、復活したら強くなるって特性を理解して、本能的にそれを利用したんだ。おれたちに力を奪われて動けなかったから。手足で城のなかをはいまわったのは、わざと倒されて復活するためだ」

 猛、いらん解説するなぁ。
 それでなくても絶望的な気持ちになってるのに。

「これ以上、復活させるわけにはいかないね」
「手足をちょんぎって動けなくする作戦も通じなくなった」
「とにかく、蘭さんが来てくれれば、なんとかなる」
「そうだな」

 それまで、どうやって、ここを守るかだ。とにかく、全滅をふせぐために、アイツの力を減らさないと。

「かーくん。兄ちゃんは反射カウンターで攻撃を全部、返せる。ゴドバの特技は吸血、吸血・改、復活、闇ブレス、進化、のっとるだ。相手の特技を打ちけしたり、弱化させる特技は持ってない。つまり、鉄壁を使えば、反射カウンターを全体効果にできるんだ。兄ちゃんがみんなを守るよ」

「そうだね。それなら、無傷で戦える。じゃあ、トーマスは後衛にさがって、教えるの技で前衛の僕たちを支えてほしい。かわりに、誰を前に出そうか」

 すると、三村くんが言った。
「かーくん。おれの人形師の技で、仲間の分身、作れるで。ただし、前衛におらんとあかんねん。タケルか、かーくんの分身作ったろか?」
「じゃあ、お願い! タケルの分身で反射カウンター率をあげよう」
「おれ自身は隠れるで標的にならんようにしてもええしな」

 よし。なんとか全滅だけは防げそうだ。

 そのとき、待ちくたびれたのか、ゴドバが右手をふりあげた。
 ハッ! しまった。のっとるを使われてしまったのか?

「ヤバイ。ターンをのっとられた?」
「違う」

 ゴドバは僕らを狙ったんじゃない。オーク城の屋根をたたいた。オーク城は轟音(ごうおん)を立ててくずれる。ヒドイ。安心して暮らせるお城が建ったって、ブタさんたち喜んでたのに……。

 やっぱり、コイツ、ゆるせないよ。あれだけグレート研究所長の研究成果を利用しといて、感謝とか敬意とか、せめてもの仲間意識とか、ぜんぜんないんだな。グレート研究所長が大事にしてた一族を食ったり、お城をこわしたり、よくも平気な顔でできるもんだ。

「かーくん。コイツに

たら、おれが《のっとりかえす》》」
「うん。お願い」

 ゴドバのレベルは99だ。特技の優先順位で言えば猛より上だけど、同時に発動するわけじゃないから、ゴドバの技のあとに使うぶんには問題ないはずだ。

「じゃあ、かーくん。兄ちゃんはアイツが『のっとる』を使ったときのために、自軍の最後に行動する」
「わかった」

 のっとるが使えるの、猛だけだもんね。のっとるをボスが持ってるなんて、もはや反則だ。強くなりすぎるよ。

「ねえ、トイやぽよちゃんの封じ噛みで、復活を封じられないかな?」
「封じ噛みは職業特技だろ。ゴドバの復活や吸血が生来特技あつかいなら、効力がない」
「そうか」

 それに職業特技だったとしても、どっちみちレベル99の壁にはばまれるか。

「じゃあ、ぽよちゃん」
「キュイ?」
「ぽよちゃんは吸血できるから、ゴドバの素早さや体力を吸えるだけ吸ってほしい。あっ、その前にスピードファイターね」
「キュイ! キュキュウキュイキュー!」

 あっ、スピードファイターって言った。可愛いなぁ。

 ぽよちゃんはそのあと、やたらと走りまわった。僕もいっしょに走った。はたから見たら、浮かれてスキップする少年とペット。少年じゃないけど、たぶん、まわりにはそう見えてる。

「よし! ぽよちゃん。素早さマックスになったね!」
「キュイ! キュウキュイ!」

 あっ、たぶん今度は吸血と言った。なんとなく、わかるときはわかる。

 よしっ。ゴドバの素早さはゼロになった。体力も一万まで減ったよ。僕が自分の順番のときにつまみ食いすれば、体力もゼロにできる。

「闇ブレスってのがあったよね。力と知力も吸っとこうか。ぽよちゃん」
「キュウキュイ!」

 ぽよちゃん、もともと力と知力は高いから、力が五万、知力四万五千しか吸えなかった。マックス99999になって、打ち止めだ。

 まあ、猛の反射カウンターがあれば、ブレス攻撃もそのままゴドバに返せるからいいんだけどさ。
 ほんと、猛がいてくれてよかったなぁー……って、思ってたんだけどね。
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