第73話 ドロドロ

文字数 1,395文字



 これで洞穴が迷路になってたら最悪だよね。
 だけど、ここはそこまで複雑な作りじゃなかった。そこは神様もちゃんと考えてくれてるらしい。

 ほんと、この世界ってどういうふうに作られてるんだろう? じつは何かのゲームのなかなのかなって思わないでもない。

 ちゃんと順路どおりにしか進めないようになってるし、敵とのバランスもほどよく……とは言えないか。僕らのほうが圧倒的に有利だ。これは神様のひいきのせいかな?


 チャララララ……。


 あっ、敵は出るんだ。
 どんなモンスターだろ? それとも盗賊?
 違った。


 はいよるヘドロが現れた!
 ヘドロスライムが現れた!
 ガーゴイルが現れた!


 ガーゴイルか。最近、ひんぱんに出るようになったなぁ。全体的に数値が高くて、ふつうなら手強い敵だ。僕らには力五万の蘭さんがいるから、てんで相手になんないけどね。

「ヘドロスライムは初めてかな」
「かーくん。前に二人で廃墟の下水道、歩いたときに、はいよるヘドロと、ヘドロスライムは出たけん」と、アンドーくん。

「ああ、そうだっけ。キモイモンスターだから、すっかり忘れてた」

 僕が言いはなつと、モンスターたちがショックを受けたみたいだ。マンガなら『ガーン』と描き文字されてるところ。見るからにビクッとなって、青ざめて、消沈した。

「あっ、なんか、傷つけたみたい?」
「モンスターでも見ためを気にするのかもしれませんね」
「そういえば、グレート研究所長は『ブタ』って言われたら激怒してたもんね」

 グレート研究所長は人間をモンスターに変える研究所の所長だ。オークのくせに自分を美しいと思ってる。

「とにかく、戦わないとね」

 いつものように薔薇〜
 いいねぇ。やっといい匂い。

「ぽよちゃん、聞き耳!」
「キュイ!」

 えーと、ガーゴイルはレベル10か。けっこう強くなってきたなぁ。モンスターって、たいていはレベル1で出てくるんだけど、同じモンスターでもレベルあがると、急に強くなるよね。

 だけど、ガーゴイルの戦法はずっと同じ。得意技があるわけじゃなく、単純に高い攻撃力と防御力で強打をあたえてくる。

 ……ん? と思ったら、なんか特技がある。そうか。レベルがあがったから得意技が使えるようになったんだ。
 羽ばたきか。どんな技だろう?

 はいよるヘドロとヘドロスライムの見わけは、正直つかない!
 どっちも汚物っぽい色のドロドロ。スライムってふつう可愛いんだけどさ。ヘドロスライムは可愛くない。

「えーと、特技は、はいよるヘドロが『はいよる』で、ヘドロスライムが『猛毒ブレス』か。前はそんな技、使わなかった気がするんだけど。レベルがあかったからかぁ」

 猛毒ブレスは毒無効の装備じゃなければ痛かった。けど、こっちはすでに全員、毒状態をふせぐ装備をしてる。前に毒の森をぬけるとき、そりゃもう苦労したからね。

「よし。じゃあ、一番、手強そうなガーゴイルから倒そう。モリー、やっちゃって」

 蘭さんに化けたモリーに頼む。装備品まではマネできないから、モリーの武器は蘭さんが銀行からもらったフェアリーネイルだ。ぽよちゃんと同じ武器ね。
 スライムって爪があるようには見えないんだけど。そもそも手がないよね?

 サッ、サッと妖精の爪が光って、あっけなくガーゴイルは倒れた。五万攻撃力、無敵。

「じゃあ、次は僕かなぁ。ヘドロたちをやっつけよう」

 と思ったんだけど、ん?
 動けない? なんで?
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