第251話 オーク城脱出

文字数 1,394文字



 まだまだ話を聞いていたかったけど、そろそろ一時間だ。
 僕らは酒場を出て、もとの階段へ帰ることにした。

 その前に屋上へあがって、島の位置関係を眺望してきた。
 オーク城は、ぽよぽよたちの住む平原の南側に位置している。まっすぐ北へ進むとノーム村。そこから東——つまり、オーク城から北東へ進むと廃墟の古城がある。

 それだけ確認して、階段へ戻った。

「外門の場所わかりました。あと、いろんなウワサも聞いたけど、最強の魔物の改造に成功したとか言ってました。ふえ子のお母さんも捕まってるみたいだし、早く助けに行かないと」
「よし。すぐにここからぬけだそう」

 僕はおおまかな見取り図をメモ帳に描いて、ワレスさんに渡した。アンドーくんが隠れ身で軍用馬車をつれていく。

「ロランたちはどうするの? アンドーくんがすぐに戻ってくれば、つれてってもらえると思うけど。僕らはこのまま、馬車か猫車つれて移動するよ?」
「そう……ですね。馬車が城内を通っても怪しまれないですか?」
「うーん。まず、ちっちゃい猫車で試してみようか?」
「そうですね」

 階段にはまだクルウの隊がいる。蘭さんたちを残しておいても心配はないだろう。

 乗車人数とみなされないNPCのアジと、バラン、ケロちゃん、クマりんを猫車に移す。アジはいざとなったら干し草のなかに隠れてもらおう。なかがモンスターだらけなら、門番に見とがめられてもごまかせる。

「馬車にはモリー、ヒカルン、シルバン、スズランか。トーマスとランスは残ってて」

 猫車はつれて歩ける人数が少ないから、人間をたくさんは運べないのだ。

「わかった。この姿のままで待ってる」
「ブヒっ」

 ランス……本気でブタさんになりきってるわけじゃないよね? ただのジョークだよね? えっ? 僕もブヒって言ってた? い、いつのまに? ブタさん化が進んでいく恐怖……。

 とりあえず、外のメンバーは僕、ぽよちゃん、バラン、トイ。後衛にたまりん、ケロちゃん、クマりん、ラブだ。どこから見てもモンスターだけのパーティー。

 ところが、歩き始めてまもなくだ。なんか、やけに注目あびるんだよな。ブタさんたちが、食堂や詰所からかけだしてきて、ジロジロ見てくる。
 やっぱ、車はまずかったかな? イチャモンつけられたら、どうしよう?

「よっ、さっきの坊主じゃないか」
「あっ、はい。兵隊さん」

 詰所で話を聞いた兵隊さんが声をかけてくる。
 ドキドキ。無視してくれたらよかったのに。なんで僕に気づいちゃうかな?

「どうしたんだ? こんな車つれて」
「え? えっと、古城に商売に行こうと思って」
「なんだ。商売なんかしてるのか」
「へへへ。古い武器や防具があるんです。兵隊さんもお一ついかがですか?」

 僕がミャーコポシェットから、とっくに使わなくなった黒金の剣を出すと、兵隊さんはブタっ鼻で笑った。

「ブヒっ。おれはちゃんとハガネの剣を持ってるからな。今さら黒金なんかいらないよ。ま、せいぜい、がんばって売ってこいよ」
「はい。どうも」

 よかった。ごまかせた。
 僕らが立ち去ろうとしたときだ。

「ちょっと待った」

 ギックーン!
 な、なんですかぁ? まだなんかあるの? アジの匂いに気づいたとか? ああ、アジもオークの紋章で転職してもらっとけばよかったなぁ。

 僕は恐る恐るふりかえった。
「は、はい?」

 さすがに、アパレルショップ店員の僕でも、笑顔がひきつるよぉー。
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