第303話 豪のゴドバ戦4
文字数 1,567文字
ん? 百億パンチをお見舞いしてやったのに、ゴドバが倒れない。今まで、かるく灰にしてやったよね?
「かーくん。HPが、まだ無限大やで」
「そのようですね。さっき復活したときに、HPが百億を超えたってことでは?」
なるほど。トーマスの言うとおりだ。この巨体になってからも二回倒したもんな。
どんだけ強くなってるんだ?
ちょっと、僕はひるんだ。いや、でも、素早さは僕のほうがずっと上だ。
連打左右のラッシュで、こぶしをたたきこむ。
ポコポコポコ、ポヨンって擬態語がピッタリなんだけど、これが一発百億ダメージだ。
「あ、あれ? まだ倒れない?」
まわりでは蘭さんの『みんな行くよ』が終わって、ランスの雷神の怒り。
クマりんのファミリー合体からの四連撃。
バランのチェンジリング出たー!
チェンジリングは自分より高い数値の敵とその戦闘中、ステータスを入れかえる技だ。つまり、今のアイツはHP二万くらい。今度こそ倒せる!
「百億パンチー!」
「雷帝!」
「ギガファイアーブレス!」
「剣の舞!」
「ケロケロロー!」
もう最後は誰の技で倒れたんだか、わからないよね。
同時にいくつもの技がキマる。
エンピツみたいに細いのに、半身が雲の上になって見えないほどの巨体が、グラグラゆれている。
どうだ? 倒れるか?
「ミ〜」
僕の行動をマネするからね。ぽすんとミニコのパンチが遅れて入る。
じっさいには、すでにHPはゼロだったと思う。でも、そのパンチが最後のひと押しになった。ヒョロ長い体が倒木のようにかたむく。
うわっ。下敷きになるー!
危ない。
「剣神の舞!」
目にも見えない速さで、ワレスさんの剣が舞う。
剣の舞じゃないんだ? 剣神? 職業の最上位職は剣聖だよね?
とにかく、巨体が切り刻まれて、灰になる。助かった。
チャラララッチャッチャ〜!
戦闘に勝利した。経験値五十万、五十万円手に入れた。ゴドバは宝箱を落とした。ゴドバの灰を手に入れた。
「ゴドバの灰……? それ、ひろわないとダメかな?」
ゴドバの灰は戦闘中、特技『進化』が使えるアイテムです。
テロップが親切にも教えてくれた。
「な、なんやて? 進化が使える? それ、売れるやんか!」
「ああっ、それは勇者の僕にふさわしいアイテムです」
「シャケ兄ちゃん。たくさんひろって儲けようね!」
「わにもわけてごさん?」
ギャーッ! 出遅れた! 全部とられちゃうー!
ハイエナのごとく群れる仲間たちをかいくぐって、僕はミャーコに頼んだ。
「ミャーコ、お願い!」
「ミャー!」
あわてる必要なかったんだけどね。体が大きいからさ。吸っても吸っても、まだまだある。
「やったね! ゴドバを倒したね!」
「やりましたね。かーくん」
「おーい。かーくんのカバン、便利だなぁ。兄ちゃんのカバンも自動で小分けにしてくれないかなぁ?」
「アジ! もっとひろうんや。そっちにも残ってんで」
「うん! これ、商売になるよね!」
みんな喜びに満ちていた。四天王をまた一体やっつけたんだ。
戦いはすんだ。少なくとも、この島では。
みんな、そう思っていた。
今回は悲しい犠牲もなかった。オーク城はこわれてしまったけど、建物はまたなおせばいいんだもんね。
あっ、でも、食べられたブタさんはどうなったんだろう?
考えていたときだ。
灰のなかから、何かが盛りあがってくる。
えっ? ゴドバ、まさか、まだ……? いいかげん、しつこいよ? ウンザリなんだけど?
あっちでも、こっちでも、ポコリ、ポコリ。
「ブヒっ」
「ブヒヒ……」
「ブヒー」
オーク族だ。食べられた人たちも灰のなかから復活してきた。少しだけフェニックスの能力が灰に残ってたんだろうか?
森のなかに逃げていたブタさんたちがワラワラとやってきて、よみがえった仲間と再会を喜ぶ。
よかった。これでもう、この島は平穏だ。