第89話 再会の……

文字数 1,504文字



 カタン。カタカタ……。
 やっぱり音がする!

 僕はぽよちゃんを抱きしめて、あとずさる。
 ヤダよ? それじゃなくても、少ない仲間の一人が火の玉なのに、これ以上、オバケキャラなんかいらないよ?

 キョロキョロすると、アレだ。室内に置かれた細長いタンスがかすかにゆれている。ウツボ兵士が寝るにしては変な場所。

 だけど、このままほっとくと、うしろから追いかけられるかもしれない。
 勇気だ。ここは勇気を出して……。

 そっと近づいて、僕はタンスの扉に手をかける。
 あ、あけるぞ。あける。
 オバケなんて、この世にいないんだからね。だ、大丈夫だ。いたとしても今のところ僕が呪われる覚えはない。
 あれ? まさか、グレートマッドドクターの霊か? ブタブタ言って怒らせたから? なら、謝るよぉー! オバケはイヤ!

「い、行くぞ」

 勇気をふりしぼって、扉をあける——

「ギャー! 出たー! オバケー!」

 全身黒いオバケだ。怖い! デカイ! ムダにデカイ!

「しィーッ。しッ。さわぐと敵が来るだろ。しィーッ」
「オバケが僕を説得しようとするよぉ! ぽよちゃん!」
「キュイ?」
「静かにしろって。かーくん。あいかわらず怖がりだなぁ」

 ん? オバケが僕の名前を呼んだぞ。それに、どっかで聞いたことある声だ。

「…………」

 チロリとタンスのなかを見なおす。黒く見えたのは、着てる服が黒だからだ。全身黒ずくめだなんて悪趣味だなぁ。

 でも、フードの下にあるのは——

「ああッ! 猛だ。兄ちゃーん!」

 兄のハンサムな顔がニカニカ笑いながら、こっちを見てる。
 オバケじゃなかった。生き別れのわが兄だ。

「猛ぅー。ひさしぶり。元気だった?」
「ああ。なんか、また夢の世界に来てしまったな」
「そうなんだよ。猛はなんで、こんなとこにいるの?」
「ちょっとな。四天王のことを調べてるんだけど、どうも気になることがあって……」
「ふうん?」

 猛はそれ以上、僕に教えてくれる気はないようだった。黙りこんで思案したのち、急に笑った。

「それより、かーくんこそ、どうしたんだ? これ、ゴドバの船だぞ」
「だよね。でも、ゴドバは乗ってないと思うんだけど」
「へえ?」

 僕はゴドバが片腕を切り落とされて、どこかへ逃亡したことを告げた。エレキテルから子どもたちがさらわれたことも。

「——ってわけだから、子どもたちを助けに行くとこなんだよね」
「じゃあ、兄ちゃんもいっしょに行ってやろうか?」
「えっ? いいの?」
「ああ。ヤドリギがいたころは、おれにもずっと監視がついてたけどな。アイツがいなくなってから、わりと自由に動けるんだよな」
「わ〜い」

 やったー。猛が仲間だ〜
 今度こそステータス、見れるかな?

 さっそく、のぞいてみた。
 うん。見れるぞ。

 猛のレベルは50。
 職業は竜王。

「ええーっ? 竜王って何? そんな職業あるの? 棋士(きし)じゃないよね?」
「棋士なわけないだろ。竜系のモンスター職を三種類マスターしたらなれるんだ。竜王になると、HPと力と体力に30%のプラス補正がかかる」
「30%プラスってスゴイね」

 モンスター職か。
 そういえば、僕、レッドドラゴンと火竜の魂持ってるな。あと一種類あれば竜王になれる。
 さてさて、肝心の猛の数値はっと。

 レベル50(竜王)
 HP13261『12520』(17239)、MP2803『2558』、力5644『5139』(7337)、体力4148『3748』(5392)、知力3750『3400』、素早さ4692『4317』、器用さ4511『4207』、幸運3360『3257』

 な、なんじゃこりゃー!
 みなさーん、ここに化け物がいますよぉー!(前にも同じこと言った)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み