第61話 次はスラム街、なんだけど
文字数 1,640文字
ギガゴーレムが停止したので、暴走してたミニゴーレムも止まった。
ホムラ先生は今後、敵に奪われたときにゴーレムたちが暴走しないよう、改良をしなければならなくなった。僕のスマホの充電器はまだできない。
「ミニコがあやつられなかったことが解決の糸口になる。プログラムに量産型ミニゴーレムとの差異がないか調べてみよう。ちょっと、失敬するよ。メモリデータをコピーする」と言って、ミニコの首にUSBメモリをつっこんだ。これで何かわかればいいんだけど。
とりあえず、エレキテルの騒乱はおさまったので、僕らは王都シルバースターへ帰った。
「ああっ、せっかくキヨミンさんにお菓子もらってたのに、食べてるヒマがなかった」
「食後のデザートにしましょうよ」
「そげだねぇ。わは和菓子も好きだけどねぇ」
そんなことを話してたんだけど、夜になって、ワレスさんがお城に帰ってきたので、僕らも会議室に呼びだされた。
「ワレスさん。ゴドバはどこへ行きましたか?」
「途中で魔物しか通れない道に入られてしまった。だが、東のほうへ行ったな」
「東ですか」
「片腕を失ったんだ。魔物と言えども、とうぶんは治療しなければならないだろう」
「じゃあ、しばらくは街が襲われることはないんですね」
それはいいんだけど、僕にはどうしても気になっていることがあった。会議室にはワレスさんや僕らのほか、ボイクド国の王様と、クルウ、ユージイなど数人しかいない。秘密会議だ。
「ワレスさん。じつは、僕らの仲間だったシャケが盗賊団のリーダーをしてて、でもそれには深いわけがあったんです」
アジが話していたスラム街の現状をうちあける。
「——というわけで、盗賊団も好きであんなことしてるわけじゃないんです。それにスラム街では、まだ謎の病気で苦しんでる人がいます。ゴドバにつれされた人質もいる」
「スラム街か。彼らはもともとボイクド国の民だったわけじゃない。わが国は豊かな国だからな。近隣の貧しい者たちがやってきて集落を作った。それがスラム街だ」
そうか。だから貧富の差がこんなに激しいのか。だって、エレキテルの貴族区の人たちは、一家に一台、一億円もするミニゴーレムを持ってるんだもんな。
「スラム街で悪いことが起こってるのは明白なんです。彼らを助けに行ってもいいですか?」
「そうだな。ゴドバがいるとは思えないが、魔物はひそんでいるかもしれない」
「ゴドバの仲間の医者がいるはずなんです。そいつも魔物じゃないかと思います」
ワレスさんたちはしきりにアレコレ相談しあったあと、了承した。
「いいだろう。こちらはギガゴーレムの処置で忙しい。おまえたちに頼みたい」
「任せてください」
勢いよくガッツポーズとる僕を、ワレスさんは微笑ましそうな目で見る。
でも、僕、ハニークレイジーじゃないよ?
「そうだ。ロラン。おまえたちに会いたいと言っていた男がいた。彼をつれていくといい。仲間が少なくなっているだろ?」
ワレスさんが優しい言葉をなげてくれる。ふへっ。
「僕に会いたいって、誰でしょう?」
「トーマスだったかな。もとはシルキー城で兵士をしていた」
トーマスか。おぼえてるよ。シルキー城で呪文の唱えかたを教えてくれたんだっけ。
「トーマス、元気になったんですね?」
「ああ。今はボイクド城に勤めている」
「では、明日から彼もつれていきます」
新しい仲間かぁ。楽しみだなぁ。
「じゃあ、僕たちはこれで」と言って、立ちあがろうとしたときだ。
「ちょっと待て」と、ワレスさんが呼びとめる。
「おまえたち、今年の武闘大会へ出てみないか?」
僕は蘭さんやアンドーくんと顔を見あわせる。
「武闘大会?」
「ああ。年に一度、ヒノクニで行われる。世界中の腕自慢が集まり、その強さを競う。わが国からも毎年、強者を選出して送りだしてきた」
わあっ、武闘大会!
もう聞いただけでワクワクするんだけどぉ。
「ワレスさんは三回優勝して殿堂入りしたんですよね?」
「ああ」
ぜひ、出たい。
今の僕らの腕前って、どのくらいなんだろう?