第4話 帰ってきました。この世界!

文字数 1,515文字




 ん? あれ? ここは?
 気がつくと、僕はそこはかとなくネズミランドによく似た、なんちゃってヨーロッパの街なかに立っていた。

 ああ、この感じ、戻ってきた?
 戻ってきたんだー!

 アレだよね? 前のときは最初だったから、てっきり、ずっと夢見てるんだと思ってたんだけどさぁ。どうも、こっちの世界の女神さまに召喚されちゃってたらしい。

 やっと魔王の四天王のうち一匹(あんなやつは神さまじゃないもんねぇ)、悪のヤドリギを倒して、お役ごめんになったのかなって思ってたんだけど、やっぱりそうじゃなかったんだなぁ。

「かーくん。何、ぼーっとしてるの? 早く、行きますよ?」

 あっ、目の前にいるのは、蘭さん——じゃなかった。ロランだね。

 現実世界では僕らといっしょに暮らしてる友達なんだけど、こっちの世界では、なんと勇者だ! 勇者ロラン。それが、こっちでの蘭さんの名前。

 へへへ。蘭さんが勇者ってことは、僕は勇者の友人だよ。誇らしいなぁ。ふふふ。

 それにしても、ここはどこなんだろ? あっ、汽車か。蒸気機関車の駅じゃないか。
 そうそう。スマホのバッテリーが切れそうだから、この国の東の端にあるエレキテルって街に行くつもりなんだったね。

 この世界って基本は魔法中心の中世あたりの文明みたいなんだけど、妙に近代的なところもあって、まあ、だいたい、ふわふわしてる。

 さて、じゃあ、僕らの新たな冒険の始まりだ〜
 ふへへ。楽しみだなぁ。今回はいくら拾うんだろうなぁ。僕の愛する小銭たち。


 *

 黒光りする車体にオリエンタル急行みたいな立派な内装。
 わ〜い。汽車、汽車〜
 僕はね。汽車に乗るの二回めなんだ。前にも、こっちの世界で乗ったからね。

 ところで、今の僕らのメンバーは、僕、蘭さん、アンドーくんの三人と、モンスターだ。モンスターは蘭さんの得意技でたまに仲間になる。

 ちなみに、ウサギ型モンスターのぽよちゃん、ピンクのテディーベア型のクマりん、カエルのぬいぐるみケロちゃん、青い火の玉のたまりん、黒ぽよに乗った小さな薔薇の騎士バラン、グリーン色の森スライムのモリー、身長は僕よりちょい低いシルバーゴーレムのシルバン。これが今の僕らの仲間だ。

 あっ、あと、戦闘要員じゃないけど、身長十センチの小人族、コビットの戦士たちが三人いる。

 だけど、モンスターをウジャウジャつれていくわけにもいかないし、そもそも馬車は汽車に入らない。なので今は、ぽよちゃんと、たまりんだけ。

 あとのメンバーは馬車で待機させといて、エレキテルについたら転送魔法で呼びよせることにした。

 プラットホームに行くと、すでに蒸気機関車は到着していた。ここは王都シルバースターだ。つまり、始発駅だから、早めに来て客を待ってるわけだ。

 改札に立ってる車掌さんに、僕らはね。へへへ。切符? 切符なんか買ってないもんね〜

「お客さま。乗車券をお出しください」
「へへへ」

 僕はうちの愛猫ミャーコにそっくりな白猫型ポシェットから、

をとりだす。あっ、ちなみにこのポシェットは冒険者が必ず一人につき一個、宝箱から貰うことのできる無限にアイテムが入るカバンだ。

「ほら、これ!」

 たぶん、僕は思いっきりドヤ顔してただろうな。
 だって、僕がさしだしたのは、ボイクド国内の公共乗り物無期限無賃乗車パスだ。ゴールドに輝くパスだよ。

 僕だけじゃない。
 蘭さんも、アンドーくんも、なんならモンスターのぽよちゃんや、たまりんだって持ってるんだ。

 だって、僕らは冒険者ギルドに認められた最上級Sランクパーティーだから!

 Sランクの特典の証であるゴールドパスが次々に出てくるのを見て、車掌さんは目をまわした。へへへ。気持ちいいなぁ。
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