第46話 ケンカをやめて〜
文字数 1,714文字
一瞬で終わった戦闘を見て、ワレスさんはつまらなそうだ。せっかく、ついてきたのに、見物のヒマもないもんね。
「先制攻撃か。今の五万攻撃力があれば、ほとんどの敵は瞬殺だな」
「今なら、あなただってワンパンで倒せますよ?」
あらら。蘭さん、それは言っちゃダメ。
僕は見た! ワレスさんの
ああ、怒ったかな?
すると、ワレスさん、ふっと笑ったね。ニヒルにね。
「ほんとに、そうかな?」
「だって、そうでしょ? あなたはレベルも高いし、補正がすごく入ってる。けど、防御力1000で50000攻撃はふせげない」
「ロラン。たしかに、おまえは強くなった。だが、おれから言わせれば、まだまだだな。特技も職業もこの前から、ほとんど増えてない」
「それは王族のつとめで忙しかったから……」
「言いわけしてるヒマがあったら強くなれ」
あっ、今度は蘭さんの秀麗なおもてがピクっと。
美形二人に両側からはさまれて、ある意味幸せなんだけど……怖い。
「あ、あの、二人とも。潜入中だし」
「じゃあ、勝負してみましょうか?」
「いいだろう」
「いやいやいや、ダメだよ? かーくん泣くよ?」
「だが、どうやって勝負する? 敵地のまんなかで
「僕はそれでもかまいませんよ? どうせ、先制攻撃ですぐに倒しちゃうから」
「いやいやいや、だから、ダメだって! 敵に気づかれちゃうよ!」
言ってるそばから、戦闘音楽。
チャラララララララ……。
スパン!
戦闘に勝利した。盗賊は倒れた。秘宝の地図を手に入れた。
「じゃあ、おれが勝ったら、どうする?」
「どうって?」
チャラララララ……スパン!
秘宝の地図を手に入れた。
「賭けないかと言ってるんだ」
「何を?」
チャラララ……スパン!
秘宝の地図を——
「そうだな。金で買えるものはつまらない。どうせ、おまえは薫にねだって買ってもらうだけだろ?」
「僕は負けないから、なんでもかまいませんけどね」
チャラ……スパン!
秘宝——
「ふうん。なんでもね。じゃあ、負けたら、次の舞踏会で、おれとダンスを踊ってもらおうか。もちろん、おまえはドレスを着てな」
「うっ……」
チャラララララ…………スパン。
秘宝の地図を手に入れ——
「……いいでしょう。僕が勝ったら、その舞踏会であなたがドレスを着るんですよ?」
「……いいだろう」
ああっ、どっちが着ても似合うと思うよ?
蘭さんなんか、この世界では女の子として育ってきたんだし。罰ゲームになってない。
チャラチャラ鳴ってはやんで、鳴ってはやんでた戦闘音楽がとだえたあたりで、道が二手にわかれた。
ワレスさんはそれをさし示して宣言する。
「アジトは八階層。この二つの道は一度も交差しないまま、最上階に到達する。そのさきはギガゴーレムの保管されている場所だ。おそらく、ボス戦になるだろう」
ミラーアイズで、ダンジョンマップもバッチリだ。
「で、どうするんですか?」
僕が聞くと、ワレスさんはあっさり言った。
「どっちがさきにそこまで到着し、ボスを倒すか競争だ。道は好きなほうをロランに選ばせてやる。おれには見えてるからな」
「メンバーはどうするんです?」
「おれは一人でもかまわないが?」
「それじゃ互角とは言えない。うちのメンバーを貸してあげます」
「それくらいハンデをつけてやるのに」
「ハンデが必要なのは、あなたのほうじゃないですか?」
ああっ、もう! バチバチしてる!
けっきょく、この二人って似た者同士だから衝突するんだな。
「じゃあ、数値的に僕の次に有利なかーくんを貸します。ほかは——」
蘭さんが僕を
すると、馬車からあわてて、ぽよちゃんとたまりん、ミニコがおりてくる。
「キュイキュイ!」
「ゆらり〜」
「ミ〜」
おおっ、僕についてきてくれるのか。
「でも、ロラン。いいの? ミニコのステ、スゴイよ?」
「力3000でしょ? そのくらいはつけてあげないとね」
あーあ。蘭さん、調子に乗っちゃってるけど、いいのかな?
そんなわけで、僕らは二手にわかれた。
「じゃあ、僕は右の道へ行きます」
「おれは左だな」
「レディー、ゴー!」
それぞれの道へ走る僕ら。
なんで、こんなことになったんだか……。