第84話 グレートマッドドクターの最期
文字数 1,772文字
チャラララッチャチャ〜!
グレートマッドドクターを倒した。ガーゴイルA、Bを倒した。経験値5700を手に入れた。2500円を手に入れた。
グレートマッドドクターは宝箱を落とした。
「…………」
「…………」
「な、何? なんでみんな、僕を見るの?」
「また『かぱっ』て言うのかなぁって」
「もう言わないよ!」
「そう? それならいいんですけど」
もういいですか?
テロップ流しますよ?
「えっ? 誰?」
「テロップが待ってくれてたみたいです」
「ごめん。テロップにまで気をつかわせて」
いえいえ。では続けます。
宝箱にはオークの紋章2が入っていた。オークの紋章2を手に入れた。
ガーゴイルA、Bは宝箱を落とした。ガーゴイルの羽を手に入れた。
ガーゴイルの羽は合成素材みたいだ。合成すると器用さ数値をあげられるみたい。
数値はスマホさえなおれば、いくらでも書きかえられるんで、できたら『羽ばたき』が使えるようになるガーゴイルの魂が欲しかったなぁ。職業特性で仲間を自動で守るのも便利だし。そしたら、バランにガーゴイル職をおぼえてもらうのに。
…………。
ん? なんか、テロップが悩んでる?
……ガーゴイルAは『ガーゴイルの魂』を落とした。ガーゴイルの魂を手に入れた。
テロップが去っていく気配。
今さ。絶対、最後の魂、つけたしたよね? まあ、ありがたいんだけど?
「わ〜い。勝った。バランにすぐガーゴイル職についてもらおうよ。前に合成した無職のツボあるから、アレに魂を入れたら職業のツボになるよね」
「そうですね。あとでマーダー神殿に行きましょう。ところでオークの紋章ってなんでしょう?」
僕はアイテム欄で確認した。
オークの紋章2
装備中、オークに変身できる。
「いらない!」
そこそこ苦戦して手に入れたのに、オークに化けることができるだけのアイテムか。
「あっ、ちょっと待って。かーくん。オークに化けることができるってことは、化けてるあいだ、オーク職につけるんじゃ? もしそうなら、死毒の霧おぼえられますよ?」
「そうか」
たしかに一回の攻撃で敵全体のHPを1にできる技は強力。しかも敵のターンに移った瞬間に毒のダメージで全滅に追いこむって、やっぱり極悪非道な技だ。
「オークになってるあいだ、姿がブタになったりして」
「うッ……」
蘭さんは黙りこんだ。
強力な技をおぼえるか、ブタになるか、究極の二択だ。
「そ、それより、早く子どもたちを助けましょう。制限時間が迫っています」
「そうだね」
子どもたちは僕らより長いあいだ捕まってる。この洞穴のなかに隠されていたなら、命に危険がおよぶ可能性も……。
すると、グレートマッドドクターがヨロヨロしながら口をひらいた。
「ふん……お、愚か者めが。子どもたちはとっくに、港に…………お、オーク族に栄えあれ! ブヒーッ!」
叫ぶとグレートマッドドクターは立ちあがり、猛毒を煮つめたナベに突進した。
「あっ、何するんですかっ?」
「わあっ、やめろよぉ!」
僕らの言うことなんて聞いてない。グレートマッドドクターは大ナベにタックルして、盛大に中身をぶちまけた。あたり一帯、すさまじい毒の匂いで満ちる。
「ブッヒッ……ヒッ。人間どもに……悲惨な末路を……」
ああッ、自分でまいた毒かぶって死んだ! ヤバイやつじゃないかー!
「これじゃ、街の人たちが全員……」
「水神さまと水守も危ないよ」
「ど、どげすう?」
うろたえる僕らに、ホムラ先生が告げる。
「ロラン。君の特技を使いなさい。虹のオーロラだ。勇者の気合で毒を浄化するのだ」
「でも、虹のオーロラは戦闘中しか使えないんじゃ……」
「迷ってるヒマはない。君にしか、街の人々を救うことはできないのだ!」
「わかりました」
蘭さんが両手をあわせて祈ると、ピカーッとあたりが光って、毒の匂いが消え失せる。
よかった。助かった。
大事件が一瞬で解決したけど、僕らには時間がないんだ。よって、ここは、はしょらせてもらう。早く、さらわれた子どもたちを助けないと。
「さっき、グレートマッドドクターが、子どもたちは港にいるって言ったよね?」
「言いました。とっくに港に……って」
「大変だ! 外国につれだされる前に救出しないと」
「急ぎましょう」
エレキテルに港があったっけ。ここから一番近い港だ。
僕らは急いでエレキテルへむかった。