第111話 抽選しよう〜
文字数 1,739文字
「なんで、たまりんが分裂したんだろう?」
たまりんの分身は戦闘が終わると消えた。もしかして、なんかの特技なんだろうか?
「かーくん。パリピの特技に『仲間を呼ぶ』っていうのがあるぞ」
「火の玉の仲間を呼んだってこと?」
「いや、違うな。おれも仲間呼びは使えるけど、出てくるのは竜兵士とガーゴイルだ。パリピの仲間を呼ぶっていうのは、自分と同じステータスの分身を呼びだすみたいだ」
「えっ? じゃあ、猛ならHP10000超えの力5000とかの分身が出てくるの?」
「そうなるな。よし。おれ、パリピ覚えよう」
「僕も覚えようかな……」
まあ、僕の数値は猛ほど強くないから、今はそれよりさきに大富豪になったほうが便利だろう。
ダンジョンをぬけだすと、夕食〜。焼肉だ。
ヤマトの国には現代日本で食べられる食べ物はなんでもある。和食もB級グルメもフランス料理やイタリア料理、中華にロシア料理にタイ、ベトナム……。
「はあっ、うまかった。ジョジョ園の焼肉」
「美味いなぁ。ずっと、かーくんといっしょにいたいなぁ」
「……金目当てだね? 兄ちゃん」
「そうじゃないぞ? 兄ちゃんはかーくんが心配だからだぞ?」
「いいけど。そうだ。職業のツボが少なくなってきたから、抽選に行こうよ。景品で役立つツボや魔法書をくれるんだよ」
「へえ。いいね」
というわけで、満腹になった僕らはギルドに向かった。
ギルドの二階のかたすみに、抽選会場はあった。
うーん。ガラポンの前にすわってるおばあさんが、ボイクドの王都にいた合成屋のおばあさんに見える。すごく、くどい喋りのおばあさん。
「あ、あの、あなたは大合成魔女さんですか?」
「カァーッ! わしは大合成魔女ではない。大魔女魔女じゃー!」
あっ、やっぱり「カァーッ」って叫ぶんだ。
魔女魔女が何かとか、もう聞かないどこう。めんどくさい。
「抽選……お願いします」
「抽選券を出しなされ」
「はい。ミャーコ、出して」
舞った〜。紙吹雪。そりゃまあね。さんざん、あちこちで買い物したからね。もう出る出る。スゴイ数。数えきれない。たぶん数千枚はあった。
それを見たおばあさんは抽選券をすべてかき集めたのち、こう言った。
「はい。これを持ってとっとと帰りなされ」
ドン、と山積みのお宝をカウンターの上に乗せてくる。
「ええーッ! ガラポンは? ガラガラしたいよ?」
「カァー! 黙らっしゃい! これらがここにある景品のすべてじゃー! この枚数なら、玉も出つくすでの。ほれ、残りは返してやるわい」
半分くらいの抽選券をたたき返されてしまった。
嬉しいような、悲しいような……。
「ああ……ガラガラしたかったのに。『わあっ、あたった、一等だ!』とか、『あはは、うふふ』したかったのに」
「いやなら景品置いて帰るがいいわい」
「いらないとは言ってないよ!」
文句言ってもムダだとわかった。
「いいです。もらいます」
しょうがないので、僕はたくさんのツボや魔法書やアクセサリーをミャーコポシェットにつめこんだ。
「ん? ツボに書いてある字がいつもと違う」
抽選会場でもらえる景品のツボは、これまで戦士のツボ、僧侶のツボ、盗賊のツボだった。紙には『戦』『僧』『盗』の字だった。
でも、今あるツボは『商』『詩』『武』の三種類だ。
「これって、もしかして、商人、詩人、武闘家のツボですか?」
「そうじゃ。ありがたいじゃろ?」
「ですね!」
職業は個人の生まれつきの素質によって、なれるものとなれないものがある。それを超えることができるのが、職業のツボだ。
今回もらったのは、それぞれ二、三個。すごく少ないけど、でも、商人があるぞ。
「たまりん。これで、たまりんも商人になれるよ」
「ゆらり! ゆら〜!」
あれ、なんかすごく喜んでるな。
商人って学者系とか、盗賊系とか、以外とほかの職になるための条件になってることが多いんだよな。
魔法書は『みんな、かたくなれ〜』と『みんな、よけろ〜』か。補助魔法だな。
「よーし。これで明日から、ますます、がんばれるね」
「かーくん。兄ちゃんな、じつは商人になれないみたいなんだ。このツボ一個くれないかなぁ?」
「しょうがないなぁ。はい。かーくんさまって呼んでよね」
「ははぁ。かーくんさま」
へへへ。気持ちいいなぁ。