第223話 セイラのお礼

文字数 1,521文字



 タツロウとともに、セイラ姫をお城につれ帰った。王様は大喜びだ。

「そなたらには、まこと世話になったな。褒美にこの鍵をやろう」
「ははーっ」

 前に蘭さんのお父さんは、ご褒美として毒消し草五十枚セットをくれたっけな。もちろん、あのときはめちゃくちゃ役立ったんだけど。

 今度は鍵か。世界中の扉をあけられる鍵だといいな。
 でも、違った。

「これは名人墓場の奥にある、強者の墓へいたる通路の門をあける鍵だ。これまで大勢が挑戦しながら、誰も勝利することができなかった。そのまま、自身がさまよう魂になった者も多い。あまりにも危険ゆえ閉ざしていたが、そなたたちならば問題なかろう。好きに使うがよい」

 あの二又のもう一方につながる道か! あれってゲートで閉ざされてたんだ。強い魂が待ってるんだよね。ありがたくいただいておこう。

 受けとったのは僕だけど、答弁は蘭さん。僕ってみんなの荷物係。

「それにしても、国王陛下。セイラ姫が狙われたのは、夢の巫女と勘違いされたからです。聞けば、夢の巫女はセイラ姫の姉上だそうですね。今、そのおかたはどこにいるのですか?」

 王様は答えない。
 そうか。巫女姫の身の上を案じてるのか。そこはやっぱり、親心なんだな。

「……あれは変わり者ゆえ、養父母のもとをとびだし、今は行方が知れぬのだ」

 えッ? マジで?
 そんな無謀なお姫様いるの?

「いるのだ」と、王様は僕を見て言った。
 心が読まれてるぅー!

「むろん、探してはいる。が、どうやら国を出奔したらしく、ヒノクニじゅう捜索しても見つからなかった」

 うーん。とんでもないお姫様。

「ただな。アレは美形が大好きだ。いるとすれば、美形の集まる都会であろう」
「…………」

 美形が大好き。
 そして、たぶん、腐ってる……。
 やっぱり、どう考えても、あの人なんだよなぁ?

 僕らはそこで王様やタツロウたちと別れた。タツロウとセイラは婚約したって言うし、近々、結婚するんだろう。セイラ、幸せになってね。

 これでやっとヒノクニの騒動は終わりかな。
 あんまりタツロウと戦うことができなくて残念。でも、人となりは思ってたとおりだった。満足。満足。

 そう思って廊下へ出たときだ。うしろからパタパタと、セイラが追いかけてくる。

 ん? なんだろう?
 なんか表情は怒ってるんだけど?

「……あげる」

 僕の手に何か渡すと、くるっときびすを返して走っていった。
 指輪だ。お姫様の指輪ってアイテムのようだ。
 きっと、助けてあげたお礼なんだな。素直に「ありがとう」って言えないとこが、セイラらしい。

「指輪、ありがとうー! 大事にするよ」

 大声で走り去る背中に呼びかけると、チロリとふりかえる。照れたような目をして、その頬は真っ赤になっていた。

 なつかない猫がなついたー。ツンデレがデレると、こんなに可愛いのか。タツロウがメロメロなのもわかる。

 セイラはタツロウのもとへ帰っていった。二人で肩をよせあって手をふっている。

「じゃあ、僕らは僕らの旅に出ようか」
「そうですね。夢の巫女のことは、アイツに報告しないと」

 はいはい。ワレスさんにね。
 こっちもまだデレない。

「とりあえず、名人墓場の奥にはもっと通わないとな」と、猛が言った。
「そうだね。今日もたくさん魂、手に入れたから、無職のツボまた買わないと」

「ギルドによって転職しよう。変わった職業のツボないか?」
「召喚師とか、手品師とか、絵師とかあるね。あっ、マッスル王ってのがあるよ。マッスルマニアをマスターしないとなれないみたいだけど」

「マッスル王、なんかマッチョそうだなぁ」
「だねぇ。ぽよちゃんがマッスルマニアになったんだよね」
「マッチョなウサギだな」

 僕らは笑いながら王宮をあとにした。
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