第288話 分裂するゴドバ
文字数 1,397文字
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はい。かーくんだよ。
ロランたちがね。ずっとポーカーやってたって、あとから聞いたときはさ。ぼうぜんとしたよね。まあ、ノームたちの神様だから傷つけるわけにいかないのはたしかなんだけど。
とにかく、蘭さんたちが、やっと解放されてこっちへ向かってるころ。
僕らはまだゴドバと戦っていた。戦ってっていうかさ。手足がひっつきそうになると、コロンと落とす。そのくりかえしだね。
「火がだいぶ弱まってきたんじゃない?」
「そうだな。こげくさい匂いが薄くなった」
城内の鎮火は進んでる。
これなら、大きな被害はなくてすんだかも。
そう思ってたときだ。
「かーくん」
「うん? 何?」
「今さ。ゴドバが変な動きしなかったか?」
「えっ?」
猛に言われて、僕は木に縛りつけたゴドバを見なおした。なんか、ブルブルけいれんしてる。ブルル。ブルブル……。
イヤな感じがする。
「あれ? 猛。手足は? 首は?」
「そう言えば、どこ行ったかな?」
本体のブルブルに見入ってるうちに、首や手足が消えていた。
「どこ行った?」
「逃げやがったかな?」
「手足だけで?」
「ははは。そうだよな」
なんて言ってたんだけど、とつぜん、城内からギャーッと悲鳴が響いてきた。変だぞ。さっきまで火も消えて、お城のなかは落ちついてきてたのに。
「猛。なんか気になる。僕、ようす見てくるよ。猛はゴドバ見張ってて」
「わかった。かーくんこそ気をつけろよ」
「うん」
僕はお城に走っていった。一番近い裏口から入ると、細い廊下がまっすぐ続いてる。その前方に奇妙なものがはいずってる。二、三十メートルはありそうな大蛇だ。ん? よく見ると、違う? 蛇っぽいけど、なんか変だな。
もっと近くで見よう。
トコトコトコ。
間近で見て、ギョッとした。
それは蛇なんかじゃない。腕だ。消えたゴドバの腕。その一本が床をはってる。もう、ほんとにキモイな。
あんまり近づきすぎたみたいだ。ジャラーン、ジャラーンと、いつもの音楽が!
「ええー? 戦闘なの? 今? コイツと?」
ジャラーン、ジャラーン。
ゴドバの右腕が現れた!
うう。右腕。
しょうがないな。ほっとくわけにもいかないし。
「もう、気持ち悪いんだよぉー! えい!」
精霊王の剣(レプリカ)をふりかざして、僕はタターっとかけよると、ポコンと大きな腕をなぐる。
チャララララ〜。
ゴドバの右腕を倒した。経験値五千、五千円を手に入れた。ゴドバは灰を落とした。ゴドバの灰を手に入れた。
「わあーっ! 灰! 灰になったー! ミャーコ、灰、灰、灰を吸いとってー!」
「ミャッ!」
ミャーコがすうっと灰を吸いこんで、ビニール袋に小分けにする。でも、まだ半分も吸えないうちに、灰のなかから何かが盛りあがってきた。
むっ。目玉がにらんでる!
それはススーっと大きくなり、人型をとると走りだした。ゴドバだ。小さいゴドバ。小さいと言っても五メートルはあるけどね。
「しまったー。復活してしまった。やっぱり一人で灰を回収するのはムリだったかー!」
「ニャア……」
申しわけなさそうなミャーコの頭をなでながら、僕は人型になったゴドバを追った。
もしかして、消えた手足や首は、みんな個別で逃げだした? 大変だぞ。やっつけたら、小型ゴドバになってしまう。
それにしても、腕や足はともかく、首はどうやって移動してるんだろう? うーん。わからん。
とにかく、全部、捕まえないと!