第9話 トレインジャック戦1

文字数 1,547文字



 僕たちが武器をかまえると、目の前にテロップが流れる。


 野生の盗賊が現れた!
 野生の大盗賊が現れた!
 野生の戦士が現れた!
 野生の武闘家が現れた!


 へえ。みんな野生なんだ。
 テロップで『野生の』って出るのは、魔王軍の兵士じゃないっていう意味。
 そっか。ただの列車強盗か。魔王軍だったら裏に怪しい陰謀がからんでたかもしれないけど、まあ、その点は安心。あとぐされがない。
 でも、手間取ると機関車に走っていった連中が戻ってくるだろうから、早めにやっつけないとね。

「ああっ、なんかひさしぶりで緊張するぅ。じゃ、ぽよちゃん。いつもみたいに聞き耳してねぇ」
「キュイ〜」

 ウサギ型モンスターのぽよちゃん。ぽよぽよのぽよちゃん。可愛いなぁ。

 ぽよちゃんは白ぽよだ。長いお耳にハート形の黒いもようがある。その耳をピクピクさせて聞き耳を立てると、あ〜ら不思議だ。敵のステータスや特技、使えるマジックなんかを見ることができる。聞き耳なのに聞くんじゃないんだよね。見るんだよね。

 さて、見えたかなぁ?
 えーと、盗賊と大盗賊は基本、同じ職業だね。盗賊の上級職が大盗賊。
 レベルは盗賊が20で、大盗賊が25。行動パターンは通常攻撃、盗む……盗む? イヤな予感。

 ちなみに僕も盗賊はもうマスターしたんだよね。だけど、盗むって言っても、なんでも自由にドロボーできるわけじゃない。モンスターがドロップするアイテムを、通常攻撃したときに、まれに手に入れることがあるだけだ。それも戦闘が終わるまで盗めたかどうかわからない。

 けど、じゃあ、盗賊が敵になったとき、僕らから何をとってくんだろう?
 ドロップアイテム?
 僕のドロップアイテムって何?

 そういえば、これまで、まだ無敗なんだよなぁ。戦闘で負けたことない。でも、そうだ。全滅すると所持金の半額、モンスターにとられちゃうんだっけ。
 金か。お金なんだね?
 まあ、今は所持金一億しか持ってないからいっか。

 ……ん? 一億?
 ああーっ! そうだった。こっちの世界での僕はとんでもない大金持ちだったっけ。半額五千万か。五千万もとられるのヤダなぁ。気をつけないと。

 あと戦士は、まあ、ためるからの攻撃だよね。武闘家は回避率高めで素早くクリティカル。たまにカウンター。

 戦士も武闘家も盗賊も基本職だから、できることはたいてい想像がつく。

「よし。武闘家のカウンターがやっかいかな。それ以外はこれって攻撃はなさそう」
「ですね。じゃあ、武闘家は魔法で倒すことにしましょう」と、蘭さん。
「うん。僕が魔法使いだから、やるよ」
「じゃあ、お願いします」

 戦闘は素早さ順だ。
 とくに理由がないかぎり、パーティーの素早さ平均値の早いほうが先攻だ。当然、僕らがさきね。

 で、パーティーのなかで今一番早いのは、僕。
 蘭さんのほうが資質的には素早さ伸びるんだけど、なんと言ってもレベルがね。蘭さん、まだ28だから。

 と言うわけで、僕はいきなり火属性最強魔法を放つ。魔法使いなりたてのくせに、金に物を言わせて、すでに魔法の秘伝書でおぼえちゃったんだよな。

「燃えつきろ〜」

 マッチョなおじさんは燃えつきた。早かった。一瞬の出番だったね。ごめん。
 髪の毛アフロになって、おじさんは失神。

 残るおじさんは三人ね。
 僕はつまさきをパタパタ。風神のブーツについてる装備品魔法で素早さがガンガンあがってく。これは戦闘中、ブーツの底面が地面に接するたびに、素早さが上がるっていう神アイテムだ。

「ああ、どうしよう。まだまだ動けそう」
「ええ、かーくん。ひとりじめするつもりですか? ひさびさなんだから、僕にもやらせてくださいよ」
「わかった。しょうがないなぁ。じゃあ、やっていいよ」

 蘭さん、ニッコリ。
 笑顔はそりゃもう可愛いんだけどねぇ。
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