第123話 予選決勝!
文字数 1,702文字
予選決勝だ。
僕ら、ほんとは推薦枠だったはずなんだよね。予選で負けるなんて、あってはならない。ワレスさんの期待にこたえないと。
朱雀組はもう決勝も終わったらしい。広場のなかで戦ってるのは、僕らだけ。
広々とまんなかを使って、それぞれのチームの先鋒が出てくる。白組、赤組、不戦勝組だ。
僕らは白ね。
赤組は男だね。西洋人特有の茶髪。染めた色じゃなく、金に近いようなツヤがある。それをオールバックにして、いかにもどっかの兵隊っぽいんだよなぁ。
不戦勝組は……ああ、女戦士だ。やりにくいな。女の人とは戦いにくい。
「ただいまより、白虎組の決勝戦を始めます。三チームの先鋒は位置についてください」
アナウンサーが持ってるのはマイクだ。レトロ大正世界なのに、マイクはあるんだ。まあ、ないと会場のすみずみまで聞こえないよね。エレキテルから輸入してるのかも。
トライアングルを描いてひかれた白線。僕らはある意味、微妙な三角関係。
誰が誰を落とすのか?
それとも二人がかりで僕に来るのか?
えーと、僕はとりあえず、女の人は叩けないので、茶髪オールバックの兵隊さんを狙おう。
ところがだ。
「始めッ!」
旗がふりおろされた瞬間、兵隊さんは走った。女の人の方向だ。僕はそのあとを追う感じ。
あれ? 二パーティー同時に動けてる?
そっか。乱取りだからターン制じゃないんだ!
そして、兵隊さんは血も涙もなく、女戦士をぶんなぐった。ひ、ヒドイ。
「不戦勝チーム戦闘不能。赤チーム一勝です!」
ああっ、やられた。
一勝とられたぞ。
いや、まだ一勝だ。僕が兵隊さんを倒せば、勝ち星はならぶ。
でも、兵隊さん、僕が追っていくと逃げるんだよなぁ。
「ちょっと、待ってくださいよ」
「愚か者め。待てと言われて待つものか」
「まあ、そうなんですけど」
そんなこと言いながら追いかけっこしてるうちに、不戦勝チームから次鋒が出てくる。また女の子だ。巻毛のツインテール、可愛い! たぶん、魔法使いだ。軽装だし杖を待ってる。
兵隊さんはまた走った。
「トアッ!」
「やーん!」
魔法使いの女の子は倒れた。
「不戦勝チーム次鋒、戦闘不能。赤チーム、二勝です!」
や、ヤバイ……。
そうだ!
「ミニコ。お願い」
「ミ?」
「ごにょごにょ、ごにょごにょ」
「ミー」
僕はミニコと打ちあわせると、ふたたび兵隊さんを追いかけた。
「待て。待て」
「待たないと言ってるだろう」
言ってるうちに、不戦勝チームから、また人が出てくる。中堅も女の子。ガールズパーティーなのか。うらやましい! うちと真反対じゃないか。
「ああっ、まにあわない」
兵隊さんのほうがちょっと早く、女の子に迫る。
「とうーッ!」
「きゃーん」
ああ、僧侶だったと思う。ミニスカのシスター風コスチュームのお姉さんも失神してしまった。
「不戦勝チーム中堅、戦闘不能。赤チーム三勝です」
でも、その直後、男は身動きとれなくなった。ミニコがすぐ背後にいたからだ。
そう。僕の作戦とは、はさみ打ち。僕から逃げる男を反対側からミニコが追えば、男はみずからミニコに向かってることになる。
「燃えろ〜」
「ミミミ〜」
「ウギャーッ!」
両側から火の粉と火炎のかたまりをあびて、兵隊さんは白目をむいた。そりゃそうだ。ミニコの知力三万だからねぇ。最弱魔法の『燃えろ〜』でも、ふつうの人の『燃えつきろ〜』をはるかにしのぐ威力だからね。
「赤組先鋒、戦闘不能です。白組の勝利!」
わあっとどよめきが会場をゆるがす。
「なんだ? 今の」
「あんなデッカい火球、見たことねぇぞ」
「あれ、燃えつきろか?」
「にしても、ふつうの十倍どころじゃないデカさだったぞ」
「なんだ? あの小僧。とんでもねぇ大魔法使いか?」
「いや、大富豪だって話だぜ」
「大富豪があんな火球、出さないだろうよ」
「スゲエやつが来やがったな!」
ああ、賞賛の嵐だ〜
僕の魔法じゃないけど。
「勝利数、赤組三。白組一。不戦勝組ゼロです。よって、決勝戦、勝ち残ったのは、赤組、白組!」
ああ、そっか。ガールズパーティーいなくなっちゃったから、赤組全員倒さなくても、勝ちぬきは勝ちぬきなんだぁ。
本戦、出場決定だー!