第229話 名人墓場、特訓二日め
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なんか今回、とにかくずっと特訓してる気がする。
僕はようやく、念願の持たざる者になれた。これで断捨離っていう特技さえ覚えれば、僕の素手攻撃が億パンチになれるんだ!
猛は死神騎士をマスターしたから、ホワイトドラゴン。
たまりんは仕立て屋っていうのになりたいらしい。ツボを所望されたのであげる。
「仕立て屋でいいの?」
「ゆらり〜」
「ドレスでも仕立てるのかな?」
「ゆらゆら」
なんかわからないけど、たまりんがご機嫌だ。たまりん、いつになったら美少女に……ウールリカに行かないとダメか。
バランは聖騎士をマスターして、暗殺者になった。
みんなもそれぞれ転職するんだけど、蘭さんだけはまだ勇神をおぼえてない。
「さすが、最上位職だね。職業経験値、たくさん必要なんだ」
「明日にはマスターできると思います」
よーし。特訓、二日めだ。
僕らは墓地へピュン。
強い魂相手と格闘する。
レベル1だと一回、勝利するたびに、10レベくらいあがるんだよね。ぽよちゃんはそのたびにレベルリセット。十回も戦えば100レベルアップだよ。じっさいには一日百回は戦うんだけど。てことは、1000レベルアップだからね。
「ねえ、どうする? そろそろ、午後から奥の魂に挑戦してみる? ぽよちゃんの力も三万超えたしさ。僕、持たざる者おぼえたよ」
「そうだなぁ。おれも次の職になりたいな」
「僕も勇神マスターしました! 全ステータスにボーナスの25%が加算されます。力数値が一万あまるので、HPとMPに五千ずつふりわけてもらっていいですか?」
「オッケー。力を一万へらして、HPとMPに五千ずつ」
「細かいあまりの数値は、またあとで、ゆっくり」
「うん。了解」
「おれも弓使いおぼえたから、後衛から攻撃魔法使えるぞ」と、ラフランスさん。
たまりんは仕立て屋のままだから、挑むなら詩神に戻っとかないとダメだね。
「じゃあ、それぞれ、今なれる最高位職になって、昼ごはんのあとから挑戦だ」
「いいですよ」
「キュイ!」
「ま〜」
あっ、クマりん。予想してないときにしゃべる。
さて、昼ごはんはココイツのカレー。トッピングはカツとチーズだ。
ギルドで転職して、いざ、名人の魂にチャレンジだー!
で、折り返し。
帰ってきたぞー。わー。突撃だー!
王墓前には帰ってこれるんだけど、そこから最奥の墓までは徒歩だ。いっぱい倒した魂も、いつのまにか、また集まってる。モンスターよけのアイテムを使って、奥まで歩いていった。
「あれか」
「あれだね」
「わあっ、ガイなねぇ。墓って言うより、石碑だない?」
「いったい、なんの魂が眠っているんでしょうね? 魔神かな? それとも古代の精霊の王とか? ワクワクします」
上から順に、猛、僕、アンドーくん、蘭さんのセリフだ。なんとなくわかるよね。
「オベリスクみたいだなぁ」
「タケル。オベリスクって何?」
「古代エジプトの記念碑」
「タケルさん、意味不明なこと言わないでくださいよ。さ、行きますよ」
これは、猛、アジ、蘭さん。
そっか。この世界じゃ、古代エジプトって言ってもね。
けど、たしかにオベリスクって言うのが一番近い。頭にちっちゃなピラミッドの載った四角い巨石だ。それが洞くつの奥にズドンと建っている。
「誰が建てたのかなぁ? アレ」
「さあな。でも、人間の造ったものっぽい。モンスターじゃなく、人の魂かもしれないぞ」
「最強の人?」
「おっ、魂じゃないか? 影が見えるぞ」
岩壁の奥、オベリスクの手前に、ぼんやりと人型の炎が見えた。