第181話 決勝戦4

文字数 1,459文字



 まあ、しょうがないよね。
 一発でキマるとは限らない。確率の問題だ。
 でも!

「ぽよちゃん!」
「キュイ?」
「まだ動ける?」
「キュウ……キュイ」

 えーと……ムリ——と言ったっぽい。
 しょうがないね。ゴライは素早さ500だし、二回行動するためには数値千以上ないといけない。

 とりあえず、今のターンは猛とアジで、ぽよちゃんの素早さをあげてあげて、あげまくる。
 これで次のターンには二回行動できる。二回もかめば、66%の確率で反射カウンターだ。まあ、大丈夫でしょ。

 僕はやることないんで、素早さだけあげといて、身を守る。

 次のゴライのターンは千手観音を封じられてる。通常攻撃をしてきた。バリアが一定量のダメージで消えるかも、と思案したんだろう。僕らも白虎と戦ったとき、最初はそう思ったもんね。

 よしっ。こっちの番だ!

「ぽよちゃん。頼んだよ。封じ噛み!」
「キュイ、キュイ!」

 走る。走る。ぽよちゃん、速い。
 これ、観客席からだと、どう見えてるんだろうな?
 ぽよぽよに頼るしかない僕ら?
 そんなことないぞ。ぽよちゃんは最強のぽよぽよだ。

 ガブリ! ガブリ!
 行った。二回かんだ。
 どうだ? 何が封じられた?

「かーくん」
「うん」
「ふんばると、千手観音だな」
「だね」

 よりによって、反射カウンターだけが残ったか。
 まあ……しょうがない。確率だ。

「ぽよちゃん。もう一回動ける?」
「キュウ……」
「あっ、いいんだよ。次こそ、がんばろ〜」
「キュイ!」

 ゴライ、運のいい男。
 時の勝負には運も必要か。
 二年連続で勝ち残った意味が、なんとなくわかる。

 ただ、ゴライは今回も千手観音を封じられてる。できることは、通常攻撃と身を守るだ。ポテンと一発攻撃してくるんだけど、やっぱり神獣の気にはばまれる。

 観客席からブーイングが……。

 いや、わかるよ? たしかに地味な戦いだよね。お金払って見物してるんだから、もっと華麗な技を次々くりだしてほしいよね。
 お願いだから、もうちょっと待って。

 観客に失望させながら、またまた僕らの番。
 今度こそ、今度こそ……。

「ぽよちゃん。封じ噛み」
「キュイ」

 タタタタタ——
 ガブリ! ガブリ!

「おーい、いいかげんにしろ!」
「ちゃんと戦え!」
「金返せー!」
「弱虫! ヘナチョコ!」
「チョコバナナー!」

 いや、チョコバナナは美味いでしょ?
 僕らはブーイングに耐えながら、恐る恐る、ゴライのステータスをながめる。

「……に、兄ちゃん!」
「うん。かーくん……」
「キュ、キュイ……」

 思わず、僕らは声をふるわせて、たがいの肩をくんだ。

「や——やったぞ!」
「反射カウンター、封じた!」
「よかったね。かーくん。タケル!」
「ピュイ〜!」
「ゆらり〜」

 ついにこのときが来た。
 待ちに待った奇跡が。
 三度めにして、ようやく、ゴライの反射カウンターが封じられた!

「おい、こら、てめえら、戦え!」
「何、肩くんでんだー?」
「ふざけんな!」
「金返せ!」
「チョコバナナー!」

 誰かお金とチョコバナナに異常に執着してる人がいる。

「猛。観客が怒ってるから、なんか派手な技でやっちゃってよ。思いっきり、ド派手なやつ」
「やっぱ、ギガファイアーブレスじゃないか?」
「そうだね」

 ブーイングの嵐を一瞬で黙らせるほどの咆哮を、猛はあげた。雄叫びだ。何回見ても、人間やめたみたいで、兄の身が心配に……。

「ギガファイアーブレス!」

 会場全体を真紅に染めあげるほどの、巨大な炎が渦を巻く。やがてそれは空まで届かんばかりの竜と化す。

 静まりかえる観客たちの前で、竜は舞った——
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