第237話 職神さまの決心

文字数 1,380文字


「わーい、勝ったー!」

 大喜びする僕の前で、考えこむ職神さま。

「ぬーん。見事であった。今回は運もあったが、商神をマスターさえすれば、文句なくわしに勝てる。世界には、これほど強い者が現れたのだな」
「僕らより強い人がいますよ」
「ぬーん。さきほど途中で話しておった者か。それほど強いか?」
「強いです。めちゃくちゃ強いです。でも、もしかしたら、今なら、攻撃をかわすことだけなら、僕にもできるかも」

 倒されないけど、倒せない。そういう関係。

 職神さまはうなった。

「よし。決めた! わし、修行する!」
「へっ?」
「わしを倒す者が現れたら、職業の魂を残して成仏しようと思うておった。が、わしがちょっと死んどるうちに、それほどの強者が何人も現れるとは思うとらなんだ。何やらやる気がアゲアゲじゃ。ぬおーっ! わし、強くなるぞ!」
「えっと……」

 オバケに生気をあたえてしまった。

「では、かーくんよ。そなたには、わしの魂のかわりに、望みの職業のツボを贈ろうぞ。何がよいか?」
「えっ? ツボくれるんですか? なんでもいいの?」
「よいぞ。わしの生前のコレクションだ」
「と言われても、どんなのがあるかわからないし……すごく貴重で強い職業とかありますか?」
「それならば、オーロラドラゴンのツボかのう?」
「オーロラドラゴン?」
「この世のどこかにいる聖なる竜での」
「この世のどこかって、職神さまがちょくせつ戦ったんじゃないんですか?」
「むろん、わしが戦ったぞよ? 方向オンチなのだ。わし」
「……そうですか」

 なんか、前に会った水神さまと言い、この世界の神様って、こんなのばっかり。

「この世にいるすべてのドラゴンのブレスを習得できるという、すぐれたドラゴンなのだ。しかも、これ一つで六色のドラゴンをマスターしたことになる」
「それって、オーロラドラゴンをマスターしただけで、レッドドラゴンやブルードラゴンやイエロードラゴンを習得したことにるってことですか? つまり、竜王にもなれる?」
「うむ。なれる。それも聖獣だからの。天使職につくためにも役立つ」
「それ、ください!」
「よかろう。オーロラドラゴンのツボだ。大切に使うがよいぞ」
「ははーっ!」

 やったね。大ラッキー。
 じゃあ、レッドドラゴンとかは仲間の誰かにあげるとして、僕はオーロラドラゴンを習得しよっと。

「いいなぁ。かーくん。六色のドラゴンを全部マスターしたら、すごい竜職につけるって聞いてたから、兄ちゃんもドラゴン系の職業集めてたのに」
「ごめん。猛。これは僕が自分で使う」

 すると、しれっと職神さまは告げた。

「そなたらは強い。わし、特訓じゃ! いつでも、わしに挑戦するがよいぞ。わしに勝てば好きなツボを与えよう」
「じゃあ、兄ちゃんもチャレンジしようかな」
「タケルさん、ズルイです。僕もやります!」
「ああ……わはまだムリだけん」

 猛や蘭さんだけじゃなく、ラフランスさんやトーマスも見物していた。

「おれもムリそう。剣聖くらいまでなら、なんとか」
「私も個人戦では勝てないな」

「何人でも、何度でも挑戦するがよい。そのかわり、一度でも勝利した者が相手のときは、わし、さらに強くなっちょるけんね」

 うん? 関西人じゃなかったのか? 博多弁? 山口あたりか? 広島?

 謎は残るけど、何度でも挑戦できるのはありがたい。
 僕もまた強くなったら、挑戦してみようかな?
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