第260話 ノームの地下鉱脈

文字数 1,661文字



 どっちの道も広い。
 人工の坑道だ。ノームたちが長い時間をかけて、せっせと掘りだした場所だろう。

「このどっちがお城に行くのかな?」
「かーくん。ここらで僕らも二手になりますか?」
「そうだね」

 どちらかがただの坑道なら、行くだけ時間のムダだ。ワレスさんたちが入口をこわして強行突破するんだし、こっちも急いだほうがいい。いつ魔王軍の大軍と戦闘になるかわからない。

「よし。じゃあ、そうしよう。メンバー、このままでいいね?」
「ちょっと待ってくれないか」

 言いだしたのは、トーマス。
「ロランさんの隊にはバランがいれば、壁役はたりてる。そっちに行ってもかまわないかな?」
「いい? ロラン」
「そうですね。まあいいです」

 すると、逆にランスが「悪い。こっちの人口密度が増えすぎた。おれ、あっちに行く」と言う。

「ああ、人間嫌いだから」
「違う! アレルギーだ!」

 ナッツは僕らについてくることになった。

「じゃあ、ロランたちは上の道。僕らが下の道ね。何かあったら預かりボックスで連絡とりあおうね」
「わかりました」

 さらば、友よ。しばしの別れ。

 ガラガラガラガラガラと馬と猫は上下の道を進みだす。
 向こうは蘭さんの危険察知にアンドーくんの隠れ身、バランの逃げる成功百パーセントがあるから、戦闘をさけるのには適してるよね。隠密行動に特化してる。

 僕らは、ぽよちゃんと猛の聞き耳だけだ。逃げるは商人系の職業マスターで僕のパーセンテージが高めだけど、それも百パーセントじゃない。もうちょっと考えて人選すればよかったな。

 チャララララ……。
 あれ? さっそくモンスター出た。なんだろなぁ。急いでるのに。


 チャララララ……。
 野生の逃亡ノームが現れた!
 ノームは混乱している。


 野生のノーム!
 逃亡? どこから?
 あっ、たしかにノームだぞ。たれた三角帽子に長ぐつ。身長は三、四十センチ。四頭身くらいで鼻が長い。

「えっ? ノームなんだよね? 戦えないよ」
「あっ、かーくん。ノームが襲ってきたぞ」
「ツルハシふるってくるよ! 暴力反対!」

 なんかよくわからないけど、凶暴化してる。バーサーカーみたいだ。話しあいでどうにかなる感じじゃない。
 しょうがないので、戦うことにした。

「ぽよちゃん、聞き耳!」
「キュイ」
「えーと、レベル……レベル1! 職業、精霊(ノーム村人)HP30だよ。ネコりんたちといっしょだ。ツンっとやったら倒れるやつ」
「そっと……そっと倒そう」

 ほっぺツン!
 やっぱり、ぶっ倒れた!


 チャラララ〜ン。
 ノームを倒した。経験値500、五百円を手に入れた。秘宝の地図を手に入れた。


 ああ、そう言えば、盗賊も秘宝の地図っての落としたよね。これ、なんなのかな? お宝の隠し場所?

 まあいい。とりあえず、倒れたノームを抱きおこす。魔法だ。魔法。蘇生魔法。

「大丈夫? ノームさん!」
「だばッ? コピッピコ、ピコクピだば」
「……えっと、猛、お願い」
「だばだば言ってるな」
「いや、そこはいいから」
「はっ? ここは? おれは何をしてたんだ? みたいなことかな」
「さらわれてたあいだの記憶がないのかな? 猛、お願い!」
「ちょっと聞いてみるよ」

 つかのまのダバダバ。いや、クピクピしゃべる猛とノームをながめる。

「うーん。かーくん。この人はダバさん」

 いや、ダバさんじゃないでしょうよ。たぶんね。

「金鉱を採掘中にノーム狩りにあって、地下深くへつれられていった。そこでは大勢の仲間が捕まり、むりやり働かされている。あまりに過酷な労働なので、見張りのすきをうかがって逃げだしたものの、変なガスを吸って意識をなくしたらしい」

「ふうん。地下で働かされてる? 何してるんだろう?」

 はい。しばし、クピクピクピ……。

「なんかを採掘してるらしいぞ。魔王軍が何かを掘りだそうとしてる。それで、採掘のプロであるノームたちをさらってるんだ」
「その場所へ行ってみよう!」
「ああ」

 魔王軍の資金源かな?
 金鉱脈をほってるの?
 そんな生やさしいもんじゃないと、まもなく僕らは知ることになるんだけどさ。
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