第54話 猛毒ガス発生装置

文字数 1,444文字




 天井に穴があいてるせいか、ダンジョンのなかなのに転移魔法が使えた。研究所もワープ拠点になってる。よかった。

「とにかく、アジ。君も来て」

 僕らはアジをつれて研究所へ飛んでいく。ピュンと一瞬ののちには研究所だ。

「ホムラ先生! いますか?」

 大声で叫びながらかけこむと、どこからともなく、ヒョロリと現れる。

「ああっ、ビックリした! 影かと思った」
「いやはや。失敬だな。呼んだから来てやったというのに」

 ニヤニヤ笑ってるなぁ。
 この人、正体が人じゃないからなぁ。おもしろがってるんじゃないだろうか?

 蘭さんが割りこんだ。
「先生! かーくんの充電器、できあがりましたか?」

 かーくんの充電器って言ったら、僕を充電する機械みたい。

「まだ昨日の今日だよ。それにギガゴーレム対策で忙しくて。もうしばらく待ちなさい」
「早く作ってくれないと、僕の体力が5のままなんです! これは死活問題なんですよ!」
「いやはや。若者はせっかちだな。おじさんにはついていけんよ」

 蘭さんはガックリした。
 穂村先生を説得するなんて、ペテルギウスが超新星爆発するより、あり得ないことだ。

「それより、先生! そのギガゴーレムが大変です!」

 急いで、ことのてんまつを語る。

「——というわけで、エレキテルの街を襲撃しに行ってしまいました。ワレスさんが止めに追ってますけど、ギガゴーレムって、猛毒ガス発生装置っていうのが装備されてて……」
「ああ、あれか」

 穂村先生、ニヤニヤ笑いのまま、あっさり認めた。
 あの変な謎の大男が勝手に改造したのか、くらい考えてたのに、まさか初期装備だったとは。

「あれかって、なんなんですか? 猛毒ガスなんて人間を大量に殺すための兵器じゃないですか。対魔物用の防衛ロボットに、そんなの必要ないですよね?」

 問いつめよると、先生は笑った。
 なんで、ここで笑えるかなぁ? やっぱり悪魔だ。

「いや、じつはだね。数日前に巨額の資金を提供してくれた男がいるんだが、条件として、ギガゴーレムに猛毒ガス発生装置をつけてほしいと言ったんだ」
「えッ? どんな男でした?」
「すごく背が高くて、マッチョだったね。巨人めいてた」

 今度は僕もガックリだ。
 もう絶対、あの謎の大男じゃないか。

「そいつは魔物ですよ! なんでかんたんに請け負ったんですか? お金? やっぱりギャンブルのためなんですかァー!」
「無礼なことを言わんでくれたまえ。誰がカジノに夢中で、とくにスロットが大好きだと?」
「自分で言ってるじゃないですか!」
「そんなことより、ギガゴーレムを止めに行かねばならんな。とにかく頑丈に作ってあるから、停止させるのはひと苦労だよ、君」

 穂村先生のギャンブル好きのために売られた市民の安全を守らないと!

 僕らは先生を馬車に押しこみ、エレキテルまで魔法で飛ぶ。街の外までついたとき、すでに

が見えた。ギガゴーレムだ。

「うわぁ、デッカい……」
「どこにいるのか、ひとめでわかりますね」

 ギガゴーレムは街の北側から侵入したようだ。
 僕らがいるのは南の外。
 かなり離れているのに、三十メートルの高さは遠くからでもよく見える。高層ビルなんてないからね。

「急いで、あそこまで行きましょう」
「うん」

 僕らは全員、馬車に乗りこみ、ゲートをくぐると全速力で北をめざす。
 でも、すぐに異変に気づいた。


 チャラララ……。


 あれ? モンスターと遭遇した? 街のなかなのに?


 竜兵士A、Bが現れた!
 野生の盗賊が現れた!
 野生のミニゴーレム(量産型)が現れた!
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