第208話 オバケ軍団
文字数 1,387文字
どうしよう。オバケ出ちゃったよ。本物だよ? 本物オバケだよ?
「……とにかく、のっとられるとやっかいだから、早めに倒そう。まず動く死体からかな?」
「キュイ!」
ぽよちゃんが走る。
あっ、そうか。昨日の夜、数値書きかえたから、僕より初期値が素早いのか。
サッ、サッと数回、青い爪の軌跡が闇を切り裂く。動く死体は一瞬で倒れた。
けど——
「ギャー! ぽよちゃん、痛い! 僕だよ?」
「キュ、キュイ……」
バーサーカーか?
バーサーカーだからなんだね?
思わず攻撃が僕にむいてしまったと。二回も……。
「えーと、ぽよちゃんの攻撃力、昨日3000あげたんだよね。だから、もう攻撃しなくていいよ。あとは僕がやるからね」
「キュイ……」
ごめんって言ってる。可愛いなぁ。
「さてと、じゃあ、オバケにちょくせつさわるのヤダから、小切手を切ろうかなぁ。一万で充分か」
ふふふ。小切手を切るなら、攻撃は傭兵たちがやってくれる。これならバーサーカーだからって仲間を襲う心配もないし……って? あれ?
「勝手に体が動くー!」
パコン!
「キュイ……」
「ああっ! ぽよちゃん! ごめん。痛かった? 痛かったよね? ごめんよぉ」
「キュイ……」
バーサーカー、恐るべし。
ダメだ。へたに動けない。
どうしたらいいんだ?
すると、スウッと火の玉が消えた。ん? 逃げた?
いや、違った。地面にのびてる、動く死体のなかに入っていく。取り憑いたんだ!
こ、怖い。怖いよ。なんで技がイチイチ怖いんだ?
ああ、そう言えば、前に僕も、たまりんにあやつられたことがあったっけ。
起きあがった動く死体は、ぼおーッと変な声を出した。その瞬間、僕は動けなくなった。しまった。のっとられた!
うーん。こっちはまともに戦えない。敵はターン行動をのっとってくる。
これは……真剣にヤバイやつだ。なんでこんなときにかぎって、うちの兄はいっしょにいてくれないんだ? おーい。弟が困ってるよぉー。
動く死体はくさい息を吐いてきた。けど、今回は大丈夫。前はこれで幻覚を見せられたよね。今はもうアクセサリーで状態異常は防御できる。
市松人形は封じ噛み!
やっぱりしてくるね。
「えっと、通常攻撃が封じられた。わりと通常攻撃になる確率高いんだな」
ヤツらはもう動けないみたいだ。素早さだけは、こっちが速い。
「うーん。通常攻撃も封じられたことだし、次こそは小切手を切るで——わあッ! 体が勝手にィー!」
パコン! パコン!
封じられてるのに通常攻撃できた! しかも、ぽよちゃんに。
「ぽ、ぽよちゃん。ごめん……」
「キュ、キュウ……」
ああっ、ぽよちゃんが目をまわして倒れたー!
もうダメだ。やっぱりバーサーカーじゃ、まともに戦えない。
いや、待てよ? ぽよちゃんが倒れたってことは、残るは僕一人。
なら、もう同士討ちになる危険性はない!
「よし。じゃあ、魔法だ。ミニコ、行くよ!」
「ミー!」
「燃えろ〜! わッ! アツツ……」
「ミ……」
まさかの自分に来た。
ミニコは仲間を攻撃できないプログラムらしくて、じっと動かない。いつもは僕の行動マネするのに。よかった。じゃないと、ミニコの『燃えろ〜』で燃えつきるとこだった。
はぁ……もうダメだ。くすん。猛。早く助けに来てー!
と、そのときだ。
「あんたたち、何してんの?」
ん? この声は?
もしや、救世主?
次回に続く!