第29話 鉄クズ戦1
文字数 1,467文字
「おおっ、君たち、いいところに来た。私を助けなさい。よろしく頼んだよ」
足モゾモゾおじさんはそう言って、サッと僕らの背後に逃げこむ。す、素早い。
それにしても、やっぱりどこかで見たことがある。汽車で会ったときより、もっと前だ。どこだったかなぁ?
「鉄クズ……ばっかりですね」
そう。見たところ、まわりにいるのは鉄クズばっかりだ。それも数が尋常じゃない。五十か六十はいる。
でも、蘭さんはひるまない。
「やりますよ! 前衛は僕、かーくん。バラン、シルバンで。アンドーさん、たまりん、ぽよちゃん、ケロちゃんで後衛をお願いします」
「そうだね。じゃあ、ぽよちゃんは聞き耳や、ためるからの仲間、ケロちゃんは水の結界で補佐して。アンドーくんとたまりんは回復をメインに、自分の判断で臨機応変にお願い。バランとシルバンはロランを守る。ミニコは敵を攻撃してね。自分のHPが少なくなったら、身を守るんだよ?」
「ミ〜」
うーん。可愛いなぁ。
装飾品あつかいは意外だったけど。でも、装備できる数のなかには入ってないし、不思議なアイテムだ。
「じゃあ、みんな、行くよ?」
蘭さんが足をふみだそうとする。ふと思って、僕は呼びとめた。
「そうだ。ロランってブーメラン持ってたっけ?」
「ブーメランは持ってませんね」
「じゃ、さ。これ使ってよ」
僕はミャーコポシェットから
「僕、ムチのほうがいいな……」
「でも、ムチは敵グループしか攻撃できないでしょ? ブーメランは敵全体をやれるんだよ。今のロランの攻撃力なら、全体攻撃のほうが絶対に優位だから」
「まあ、そうですね」
しぶしぶではあったけど、蘭さんはブーメランを受けとった。なんで、そんなにムチが好きなんだろ? 女王様か? 女王様になりたいのか?
よし。やっと戦闘だ。
チャラララララ……。
野生の鉄クズA〜Zが現れた。
うっ、Zって字、テロップ上で初めてかも。出られるだけ出てきたって感じ。
視界を覆うほどいっぱいの鉄クズがフワフワ宙に浮いてる。これが全部、自爆したらと思うと、かなり怖い。
(これは数が残りそうなら、僕の最強奥義使ったほうがいいかも? お金をケチってる場合じゃないぞ?)
僕の最強奥義。それは、所持金を使って援軍を呼ぶ『傭兵呼び』だ。
傭兵呼びはそのとき手元に所持してるお金の百分の一を使用して、金額ぶんのダメージを敵全体にあたえる。さらに進化系の『総額なげ』では、読んで字のごとく所持金すべてをなげうって、それと同等の全体攻撃をおこなう。
はい。ここで計算ですよ。僕の今の所持金は……四百五十億円だ。さっきから研究所のなか、やたらとムダにウロウロしてたからね。
つまり、百分の一の傭兵呼びでさえ、四億五千万のダメージをあたえる。まあ、ザコなら即死だよね。ボスでも即死。
というわけで、僕は蘭さんと相談した。
「ロラン。もしものときのために、僕はターンの最後に行動するよ」
「わかりました。先制攻撃!」
蘭さんがブーメランをなげる。おおっ、スゴイ。スゴイ。見事に鉄クズたちが落ちていく。
鉄クズAは999999のダメージを受けた。鉄クズAは倒れた。
鉄クズBは999999のダメージを受けた。鉄クズBはたおれた。
鉄クズCは999999のダメージを受けた。鉄クズCは倒れた。
鉄クズDは…………。
くりかえされること二十六回。なかなかの壮観だった。
もう戦闘終わったと僕は思ってたんだけど。
野生の鉄クズA2〜Z2が現れた。
えっ? 鉄クズ、まだそんなにいたの?
いったい何匹いるんだよ?