第309話 四天王の意地

文字数 1,417文字



「あっ、ほんとですね。いる」
「ほんまやぁ。ちっこいけど、おんなぁ」
「かーくん。あれ、昨日、おれが見たやつだよ。見間違いじゃなかった」

 さすが、バランは体が小さいから、自分たちサイズのものって見つけやすいのかな。

「カッハハハー! 今ここに来たことを後悔させてくれるわ。勇者どもめ」

「ぽよちゃん、聞き耳してくれる?」
「キュイ」

 蘭さんがとどめる。
「その必要ありません。危険察知で感知できないほど弱いです。モンスターっていうより、ほんとにコビットたちみたいなものかな」
「なるほど」

 一回だけクピピコたちと戦ったことあるけど、HPが1とか2とか3とかだった。僕らのレベル1のときでさえ、HPは30以上あるのがふつうだからね。人によっては80くらい。

 復活はしたけど、命のカケラをなんとか根性でつなぎとめたって感じかな。たぶん、ふみつぶしただけで、かんたんにプチッと終わってしまう。

「どうしよう。あれ?」
「魔法かブレスでやってしまいましょう」
「そうだね」

 ところが、戦闘音楽が聞こえるところまで僕らが近づいていこうとしたときだ。

 何やらブツブツ聞こえる。
 ゴドバが巨像の頭上でウロウロしながら、ひとりごとを言ってるみたいだ。ようすがおかしい。双眼鏡でよくよく見ると、ゴドバの下に何かが置いてある。ちょっと大きめの本……のような?

「アイツ、本を読んでるよ?」
「本? ちょっと、僕にも見せてください」
「ほら」

 すると、ランスの顔がサアッと青ざめる。

「魔法書だよ! アイツ、呪文を唱えてるんだ」
「呪文? なんの?」
「知らないよ。聞いたことない呪文だ。でも、禍々しい力を感じる」

 ゴドバがブツブツ言うたびに、大地がゆれる。巨大な石像が身じろぎする。

「もしかして、封印とこうとしてる?」
「そうかもしれません」
「と、止めないと!」
「やっぱり、魔法かブレスで攻撃しましょう!」
「でも、戦闘音楽が聞こえないんだよね」
「距離が遠すぎるんです。アイツが小さいから、僕たち、射程距離に入れてないんですよ」

 むうッ。ヤバイ。古代の魔物の封印が解けたら、どうなるんだろう?

 ゴドバはもともと、アレの封印を解こうとしてた。魔王軍の戦力としてってことだろう。見ためから言っても、とんでもなく強い。巨〇兵的なやつか。目覚めさせちゃいけない。

「どうやって戦えるとこまで近づけばいいのかな?」
「えーと、僕らのなかで空を飛べる人っていましたっけ?」

 ワレスさん——はボイクド城に帰ってしまった。猛も行っちゃったよぉ。

「そうだ! クマりんがキングになれば、頭の上まで届くんじゃない?」
「ダメですよ。そもそもクマりんが仲間呼びできるのは戦闘中ですから」
「ケロちゃんの舌、あそこまで伸びないかなぁ?」
「ケっ、ケロ……?」
「あ、ごめん。ムリだよね。じゃあ、ミニコ、まさか飛べたりは——」
「ミー……」
「ごめん。ムチャ言った」

 あわてふためく僕らの前で、ヒヒヒと笑いながら、ゴドバはモジョモジョと何やら唱え続ける。鳴動が激しくなった。ああ、もう、像がもう少しで真正面をむきそう。

 そのときだ。

「キュイ!」
「ん? ぽよちゃん?」
「キュイキュイ! キュイー!」

 あッ! ぽよちゃんが飛んだ!

「そうだった。ぽよちゃん、小鳥師の特技で移動中でも飛べるようになったんだ。ぽよちゃん、たのむよ! ゴドバを倒して!」
「キュイ!」

 背中の羽をパタパタさせて、舞いあがるぽよちゃん。
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