第64話 爆買い長者

文字数 1,558文字



 へへへ。ザラザラとミャーコの口から流れる金貨の雨あられ。いいよ、いいよ。もういくらでも出しちゃうよ〜

「はい。このムチください」
「ありがとうございます。では、こちらにご契約のサインを。はい、どうも。初めてご成約くださったお客さまにはサービスとして、こちらの記念品を贈答しております。どうぞ、お納めくださいませ」

 おおっ、白紙の魔法書だ。しかも五枚セット。
 これもそこそこ値段するんだよね。あとで魔法屋にも行ってみよ。

「そう言えば、さっき、マージンって言ってましたよね? もしかして、冒険者から買いとったものなんですか?」
「はい。そちらはかの有名な近衛騎士隊長ワレスさまがお持ちになられた品物でございます。ご自身で装備できなかったからだそうで。品質には百パーセントの信頼があります」

 そっかぁ。ワレスさんが持ちこんだのかぁ。きっと僕らの行ったこともないような遠いところで見つけたんだろうなぁ。

「はい。ロラン。このムチはあげるよ」
「ありがとう! かーくん」

 えへへ。気持ちいいな。
 大金はたいて美少年に感謝される。美少女ならもっとよかったんだけど。

 僕は気をよくした。

「ほかには変わったものないんですか? すごく強い武器や防具とか」
「ございますよ?」
「どんどん持ってきてください! 装備できたら買うから」

 なにしろ、まだ銀行も行ってないから、七千億円所持してるからね。百億円使っても、ぜんぜんヘッチャラさ〜(*'▽'*)
 あっ、思わず、呪文の顔になってた。

 ぞろぞろと店員さんたちが行列になって、僕らの前にいろんな品物を持ってきてくれる。装備品なんかキレイな女の子がまとって出てくる。スゴイなぁ。専属ハウスマヌカンだ。

「こちらの商品は精霊王の盾でございます。防御力はありませんが、すべての魔法、ブレス攻撃を無効にしてくれます」
「それ、ください」
「こちらは精霊王のブーツです。防御力30。体力、素早さ、器用さを二倍にしてくれます」
「ください」
「こちらは精霊王のブローチです。装飾品ですが、精霊王の装備をそろえるためには必須の一つです」
「ください」

 っていうか、どんだけ精霊王の装備、出てくるんだ! かんたんすぎるよ。こんなにチョロく勇者の最強装備、手に入っていいの? まあ、いいんだけどね!

「ありがとうございます。精霊王の盾が百億円。精霊王のブーツが百億円。精霊王のブローチが五百億円です」
「えっ? ブローチが一番高いの?」
「はい」
「でも、盾やブーツだって、魔法やブレスを無効にするとか、体力、素早さ、器用さを二倍にするとか、めちゃくちゃいい装備品なんだけど?」
「ですが、ブローチの装備品魔法は『精霊王召喚』ですからね」
「えっ?」

 精霊王召喚……それって、もしかしなくても召喚魔法か?

「せ、精霊王を召喚できてしまうんですか?」
「伝説では、そういう話です。精霊たちの祖先となった古代の精霊王を戦闘中、一度だけ呼ぶことができるそうです」

 スゴイなぁ。
 早く蘭さんに使ってみてほしい。

「では、あわせて七百億円ですが、かーくんさんは三割引きで四百九十億円。経費、マージン、その他もろもろで九百九十九億九千万円でございます」

 その計算、絶対、おかしいって。うーん。ぼったくりバー。

「もしかして、これも全部……」
「はい。ワレスさまのお持ちよりでございます」

 僕たち、どんだけワレスさんに貢いでるんだ?
 いや、違う。僕たちじゃないな。僕だ。
 美形(ワレス)さんから買いとって現金を貢ぎ、美形勇者(蘭さん)に商品を貢ぐ……。

「あれ? それにしても、かぶとはないの? 精霊王のかぶと。精霊王シリーズ、残りはかぶとだけでしょ?」
「残念ながら、当店にもまだ、その品物は入荷しておりません」
「そうなんだ」

 世界のどこかで、最後の勇者最強装備が、僕らを待ってるんだね。
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