第110話 子白虎戦

文字数 1,599文字



「猛……攻撃できない」
「ああ、つまみ食いしようとしたからかもなぁ」
「えっ? そうなの?」
「聖獣相手のときには、たまに不敬な戦いかたすると、スタンがかかることがあるんだ。聖なる呪いってやつ」
「むう……」

 しょうがない。

「じゃあ、たまりんとアジは猫車に入っててね。たまりんは後衛援護——」

 って言いかけてる途中で、たまりんが分裂した。

「ギャー! 火の玉増殖!」
「ゆらり!」

 あ、イタ。たまりんのタックルを受けてしまった。
 なんかよくわからないけど、たまりんは分裂したほうを前衛に残して後衛に入っていく。ポロンとハープをひいた。

 なんだ? この分裂した火の玉?
 ま、まさか、たまりんって定期的に増えるんじゃ? 火の玉が……火の玉が増えていく。怖いよ。

 まあいいや。アジも猫車に入ったし、もともと猫たちはまだ外に出してない。ぽよちゃんは小さく丸くなって身を守ってる。

「じゃ、ミニコはせっかくだから、魔法攻撃してみて。どのくらい効くのか見てみたいなぁ」
「ミ〜」

 ミニコは動こうとしてから、首をふった。

「あれ? ミニコ、動けないの?」
「ミー……」
「あっ」と猛が声をあげる。

「かーくん。大変だ。おれも動けない。たぶん、さっきのつまみ食いのせいで、パーティー全員が身を守る以外の行動が、このターンとれない」
「ううっ、悪かったよぉ」

 しょうがない。僕らはみんな、身を守った。
 こんなことなら、ぽよちゃんも猫車に入ってもらっとくんだったなぁ。二発までは耐えられるだろうけど、三発めは怪しい。ぽよちゃんが戦闘不能になってしまう!

 とにかく、次のターンさえ耐えれば……。

 子白虎たちの番だ。
 子白虎Aのするどい爪が、たまりんの分身に! 一撃死——一撃……ん?

 スカッ。
 あっ、かわした。そうか。クリティカル以外の物理攻撃はあたらないんだもんな。

 子白虎Bの攻撃!
 スカッ。
 子白虎Cの攻撃!
 スカッ。
 子白虎Dの……スカッ。
 スカッ。
 スカッ。

 おもしろいほどにあたらない。

「そう言えば、たまりんはHP低いから、いつも後衛ばっかりにしてたもんね。こんなに通常攻撃あたらないもんなんだ」
「まあ、クリティカルの出る確率なんて四、五十回に一回ていどだろ?」

 やったぞ。子白虎のターンを乗りきった。今度こそ、こっちの攻撃だ!

「……猛、また動けない」
「だな」


 かーくんの態度が悪かったため、3ターンのあいだ攻撃できません。


 テロップが教えてくれた。親切。ありがとう。

「3ターンって長くないっ?」
「しょうがないよ。つまみ食いしようとしたから」
「兄ちゃんだって、よしやろうって言ったよね?」
「まあまあ。あと2ターン、身を守るしかないな」
「うう」

 でも、なぜか、たまりんだけは動けるみたいだ。前衛にいた分身が、さらに分裂した。

「ああッ! 後衛のたまりんも! 火の玉が四つにィー!」

 きょ、きょわいよ。
 かーくん泣くよ?

 でも、おかげで、次の子白虎たちのターンも、スカッ、スカッ、スカッ、クリティカル! スカ、スカ。

「たまりんの分身が一体やられたけど、なんとか2ターン耐えた。あと1ターン持ちこたえれば……」
「祈ろう。かーくん」

 たまりんの分身はまたまた増える。全五体がそれぞれに分裂して、合計十体に。

 3ターンめ。
 クリティカル! クリティカル! スカ、スカッ。クリティカル!

 おおっ、かなりクリティカル率高かったけど、保ったぞ。
 やっと反撃だ!

「やるぞ。かーくん」
「うん! 今度こそ、正々堂々と倒すよ」

 精霊王の剣(レプリカ)が舞い、猛は黒金の剣攻撃。コイツ、まだ前回と同じ装備だ……。
 一瞬で片がついた。


 チャララララ〜
 戦闘に勝利した。経験値12000、12000円手に入れた。
 子白虎は宝箱を落とした。
 子白虎のお札を六枚手に入れた。
 子白虎の魂を手に入れた。


 たまりんのおかげで、なんとか勝った……。
 かなりハラハラしたけどさ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み