第131話 ガンバレ、ぽよちゃん!
文字数 1,401文字
ああ、このままだと、ぽよちゃんがやられてしまう。小動物が虐待されてるみたいで見るのがツライ。
重騎士はニヤリと笑い、戦斧をふりあげた。
「オーッ!」
ぽよちゃんに向かって突進していく。
ああ、ぽよちゃーん!
巨大な斧が、ぽよちゃんの頭上に。
やめてェー! ぽよちゃんの頭が割れちゃうよぉー。
が、そのときだ。
パタパタっ——
「ん?」
「かーくん。今の見たか?」
「えっと、よく見えなかった」
なんか、ぽよちゃんの背中に白っぽい何かが見えて、スイっと攻撃をかわした。
どっかで見た動きだなぁ。
とにかく、このターンの重騎士の攻撃は終わりだ。なんとか、きりぬけた。
でも、このあと六回も同じ奇跡が起こるとは思えないけど……。
「クピコピ、コピコ」
「キュイ」
クピピコがなんか言ってる?
ぽよちゃんの行動順だ。
また通常攻撃するのかな?
ためる? せめて四回ためて、アルテマハイテンションになれれば、攻撃力が二百倍になる。そのかわり、アルテマハイテンションは必ずなれるものじゃないし、次のターンに攻撃を受けると、テンションがさがっちゃうんだ。
だけど、僕の予想は裏切られた。ぽよちゃんは大きく息を吸いこむと——
「キュイキューキュー!」
ああッ! ぽよちゃんの小さな体から、その何十倍もある巨大な炎が吐きだされた!
ファイヤーブレスだ。
「うわーッ!」
スゴイ。ひと吹きで120もダメージを。それが四連続だ。
これで重騎士のHPは半分以下だ。次のターンで落とせる。
「そうだった。ぽよちゃん、火竜をマスターしてたんだ」
「ブレスは防御力に関係ないからな。それ専用の防具を身につけてないと。そうとうやっかいな攻撃だよ」
重騎士はヨロヨロしながら、しばらく考えていた。回復するか攻撃するかで迷ったんだろう。
でも、顔をあげたときには意を決したようだ。キッとぽよちゃんをにらみ、斧を持ちなおす。
「必殺、風林投斧ー!」
聞いたことない技名だな。
個人の特技かな?
重騎士は戦斧を風車のように、ブンブンふりまわすと、いきなりなげた。斧は勢いよく宙を飛び、ぽよちゃんに迫る。
「ギャー! ぽよちゃんが真っ二つにィー!」
ヒドイ。ぽよぽよをイジメるなッ!——と思ったけど、スイッと、またあの錯覚が。
「あ、あれ? ぽよちゃんが……ぽよちゃんが、浮いてる?」
「かーくん、よく見ろ。羽だ。ぽよちゃんの背中に翼がある!」
「ほ、ほんとだー!」
わかった。アレだ。
ガーゴイルが使ってた『羽ばたき』って技。自分にむけられた攻撃を羽ばたいてかわし、そのぶん回避力もあげるという。
「でも、ぽよちゃん、ガーゴイル職にはついてないよね?」
「なんか、ほかに羽ばたきをおぼえそうな職業やってないか?」
「あッ!」
あった。小鳥師だ。
小さいモンスターがおぼえたら便利だって言われて買った、小鳥師のツボ。あれで、ぽよちゃん、小鳥師をマスターしたんだっけ。
「小鳥師って、羽ばたきをおぼえる職業だったんだ」
「かーくん、戦闘中だけじゃないぞ。移動中にも羽を使って空中飛行ができるようになるらしい」
「ほえー」
だから小型モンスターじゃないとダメだったのか。体重が軽くないと、羽が小さいから浮遊しないんだ。
天使のような翼を持つウサギ。ますます可愛くなったぞ。ぽよちゃん。
「キュイキュイ〜!」
ファイヤーブレスが四回、渦を巻いた。重騎士は倒れた。
やったね。ぽよちゃん、強い!