第139話 最強者の証
文字数 1,500文字
翌日は準々決勝。
僕らは強敵とあたってるんだった。
「午前中は見学だね。僕ら第四試合だから、午後の最終戦だもんね」
「推薦枠が今日から出てくるからな。偵察だな」
そんなわけで僕らは見物だ。
今日の第一試合は、玄武組と朱雀組の推薦枠パーティー。いきなり推薦枠同士か。
今日は観客席にも貴賓席がもうけられて、ヒノクニの王様とか、将軍とかがすわってる。
王様は——ああ……アンドロマリウスだ。すぐわかった。西洋人らしいブラウンの巻毛と青い瞳のイケメン。目つきがするどい。これも青蘭の話のなかに出てくる。穂村先生の仲間だ。こっちではふつうの人間なのかな?
将軍は見たことない人だ。でも、将軍の息子として列席してるのは、タツロウだ。礼服なのか、今日の軍服は一段とカッコイイ。お兄さんはいないな。
ああっ、それに、あの輝くブロンドは、ワレスさんじゃないか! 遠目でも目立つなぁ。
試合の前に貴賓席の人たちが一人ずつ紹介された。
ワレスさんはボイクド国の国王代理として来てるようだ。それに大会で三回も優勝して殿堂入りした人だから、武闘大会の象徴的な存在でもある。
将軍の息子がなんで長男でなく、次男のタツロウなのかも、アナウンサーの言葉でわかる。
「最後に紹介するのは、わが国一の強者であり、第五回めの大会優勝者でもある、モトヤナギ・タツロウさまです」
タツロウが立ちあがり手をふると、大きな歓声がわく。ヒノクニの人たちはみんな、タツロウのことを尊敬してるんだな。人柄も優しいから、きっと庶民の人気者なんだろう。
やっぱり将軍の跡を継ぐんなら、強い人がいいよね。弟がこんなにもてはやされると、兄はやりにくいだろうな。
「今回の大会では優勝者に特別な記念品が贈与されます。これです!」
会場のまんなかにバニーガールがフタつきのトレーを持ってくる。そのフタをあけると、いかにも魔物の腕とわかるヤツが、デンと載っていた。青い肌の巨大な腕だ。あのバニーガール、よくあんな大きなトレー、一人で持てたな。
アナウンサーが告げる。
「これは先日、ワレス隊長さまが切りおとした、四天王ゴドバの腕です。優勝者はワレス隊長と対戦する特別試合の権利を得ます。それに勝てば、最強者の証として、この腕を授けられるのです」
なるほどね。殿堂入りしたワレスさんより強いってことになれば、それは優勝者にとって、ものすごいネームバリューになるもんな。傭兵ならどこの国でも優遇してくれるだろうし、それこそ将軍として迎えると言ってくる国だってあるだろう。
ゴドバでなくたって、その権利は欲しい。みんなが欲しがるものなら、ゴドバがまぎれこむことも難しくない。あまりにも怪しいと近づけないだろうけど、これならゴドバも安心してやってくる。
僕は別に欲しくないけど、ワレスさんとは対戦してみたいなぁ。今の強くなった僕らが、ワレスさんと対戦したら、勝てるのかな? それともやっぱり負けるのかな?
そんなことを考えてると、近くで「うう」とか「むう」とか、うなる男の声が聞こえた。
見ると、アイツだ。この前、バックゲートの前でぶつかった大男。めちゃくちゃマッチョで顔や体にも傷があって、見るからに怖い。
アイツ、なんだろうか?
ゴドバの腕を見て興奮してるみたいな?
すると、近くの観客がヒソヒソと話す声が。
「おい、あれ、ゴライじゃないか?」
「ほんとだ。ゴライだ」
「優勝最有力候補だ。今年勝てば、ゴライは史上二人めの殿堂入りだ」
「おおっ、今年は殿堂入り同士の特別試合が見れるかもしれねぇぞ」
ふうん。あれがゴライなんだ。だから試合を観察してたのか。よっぽど優勝したいのかなぁ?