第166話 グリーンドラゴン戦1
文字数 1,577文字
ホワイトドラゴン。
レッドドラゴン。
これまでにも何度かあったドラゴン戦。みんな強敵だった。
グリーンドラゴンはどれくらい強いんだろうか?
猛がやるって言ってるから、まあ安心だ。念のため、僕は足をパタパタして素早さだけはあげておく。
ところがだ。その直後、テロップが告げた。
遅れて、野生の市松人形A、Bが現れた!
市松人形の攻撃!
えっ? ちょ……なんだそれ? 遅れてくるなんてことあるの? しかも攻撃した! こっちのターンなのに。
「うわッ! かまれた!」
「猛、大丈夫?」
「……通常攻撃が使えない」
ホッ。よかった。通常攻撃なら、どっちみちグリーンドラゴンにはきかない。
とか言ってるうちに、市松人形Bもとびかかってくる。
「ギャー! 今度は僕に来た!」
「何を封じられた?」
「えーと、総額なげだね」
これも、ホッ。小切手を切るをおぼえた今、全財産をなげうって傭兵を呼ぶことは、もはやない。
今や一回の小銭拾いで千億円ひろうようになった僕。今日なんか、ここに来るまでに二十二棟を移動したから、約二十二兆円を所持してる。二十二兆だよ? 国家予算なみ! 総額なんてなげられない。
「うーん。市松人形、何を封じてくるかで今後の戦いが大きく変わってくるね」
「そうだな。グリーンドラゴンに効果のある技を封じられたら、もうおしまいだな」
何が封印されるのかはランダムみたいだ。猛とぽよちゃんのファイヤーブレス系が封じられたら、実質、戦闘は敗北だ。全滅必至フラグだね。かまれるたびにビクビクしてなくちゃいけない。なんとか早めに市松人形を倒さないと。
「じゃあ、猛とぽよちゃんはグリーンドラゴンに専念して。僕が市松人形を倒す。アジはみんなの回復。たまりんはいつもの補助でお願い」
「キュイ」
「ゆらり」
「オッケー。わかった」
えーと、とは言ったものの、通常攻撃は使えないしな。僕は猛の攻撃が終わるのを、おとなしく待つ。
猛は急に叫んだ。
「ウオーッ!」
「わっ。ビックリした。兄ちゃん、何?」
「雄叫びだよ。ブレス攻撃の効果がこのターン、倍になる」
「なるほど」
はぁ。おどろいた。兄がとつぜん、人間やめたのかと思った。技か。じゃあ、しょうがない。
続いて、猛の技。
「火の結界!」
あっ、あたりが熱くなった。うっすらオレンジ色のもやがかかる。
雄叫びは猛のブレス効果しかあげないけど、火の結界なら火属性の攻撃は誰が使っても効果あがるもんね。
「ギガファイヤーブレス!」
おおっ、いよいよブレス攻撃だ。巨大な火の柱がメラメラと音を立てながら、グリーンドラゴンを襲う。
す、スゴイ。一撃でグリーンドラゴンのHPが6000減った。ブレスは相手の防御力無視だから、もうちょい行くかと思ったけど。
「ブレスのダメージって物理攻撃や魔法攻撃と計算式違うよね」
「聞いた話だと、力と知力の平均値をレベルで割って、十かけた数値がギガブレス攻撃の与ダメになるらしいぞ。ふつうのブレスは、かける五。プチは三。今は雄叫びで二倍、さらに火の結界で二倍。その上、グリーンドラゴンには弱点属性だから、受けるダメージが1.5倍になってる」
へぇ。そうなんだ。
「兄ちゃん、まだまだ動けるから、グリーンドラゴンは倒しといてやるよ」
「たのんだよ」
「おおっ」
勇ましい声をあげといて、猛はつまみ食いした。ほんと、欲張りさんなんだから……。
でも、そのあと五回、ギガファイヤーをくりかえすと、グリーンドラゴンは倒れた。
さすが兄ちゃん。
「わ〜い。ぽよちゃんまで順番行かなかったねぇ」
「キュイ」
「市松人形も倒れてるよね?」
ブレスは全体攻撃だ。グリーンドラゴンに6000もダメージあたえるんだから、当然ながら、かよわいおかっぱの人形も倒れてるはず……と思ったら。
「あれ? いる」
「いるな」
なんでッ?
市松人形、生き残ってるんだけど?