第286話 消せない特技

文字数 1,426文字



「もしかして、この吸血のせいで、勇者がいないと勝てないってことなのかな?」
「そうなんじゃないか? つまみ食いしても吸血されたら、キリないよ。こっちのほうが一回で全数値とれるから、特技としては上だけど、万一にも戦闘中にランクアップされたらヤバイ」

 それにしても僕らが話しあうよこで、手足が大蛇のようにウゴウゴ這いまわって、自分の体のほうに戻ろうとしてる。

 キモイ! 強烈キモイよ! キヨミンさんがキモイですよ〜と言ってたのは、これか。

「僕、ちょっと小説を書くでこの特技、なんとかならないかやってみる」
「そうだな! 特技じたいを使えなくできればいいんだもんな」

 スマホだ。スマホ。
 スマホを出して、ここまでのてんまつを小説に書く。馬車の移動中に、こまめに書くようにしてるから、オーク城にかけつけるとこまではすでに記してある。

 えっ? ぽよちゃんの一人称のとこが変? トーマスやアジのことバカにしてるって? そのわりに僕のことは褒めたたえてた?
 いやぁ、あんなふうだったらおもしろいかなって。決して僕の願望じゃないよ?

 それはともかく、ゴドバの特技。あるね。吸血。

 吸血
 ランク1 敵単体から任意の数値を最大値の十分の一吸いとる。戦闘終了後も吸いとった数値は減らない。

 うん。以前、僕が吸血の指輪を手に入れたときに書きなおしたまんまだ。しかもランクは最低の1。ランク2で対称がグループに、ランク3で敵全体になるんだよな。

 ん? ちょっと待って。コイツ、吸血だけじゃないぞ。

「猛。吸血・改って特技がある!」
「あっ、あるな」

 吸血・改
 ちょくせつさわった相手から自動で吸血する。攻撃を受けても発動する。吸血できるのは最大値の十分の一。吸血できる項目はランダム。

 うッ! これか。さっきから、さわった相手の数値をとってくの。

「なんで僕はやられなかったんだろう?」
「白虎の守護のおかげだろうな」
「うーん。そうか。ふつうの攻撃なら、白虎の守護でパーティー全員が守られるのにな」
「改造された技だから、効果範囲がせばめられたんだな」

 まあいいや。小説を書くで特技じたいを消してしまえばいいんだ。


 *

 ゴドバのステータスを見ると、なるほど。吸血って特技がある。それに、吸血・改だ。

 僕は吸血・改の特技をなかったことにした。そう。小説の上から消そうと——


 *

「ダメだ! 消せないよ! エラーになる。まだ僕のランクではできないことみたい」
「できないのか?」
「できないね」
「特技の書きかえはできたろ?」
「書きかえね」


 *

 ゴドバのステータスを見ると、なるほど。吸血って特技がある。それに、吸血・改だ。

 吸血・改
 攻撃を受けた相手から自動で吸血する。吸血できるのは最大値の百分の一。吸血できる項目はランダム。


 *

「書けた。なんとか、被害を十分の一から百分の一まで減らしたよ。あと、攻撃を受けたときに発動するように限定したから、戦ってないときにさわっても害がなくなった」

 百分の一でも数値とられるのはやっかいだけど、攻撃しなければ大丈夫だ。つまり、白虎の守護で守られてる僕が攻撃するぶんには無害。

 それと、猛や吸血の指輪で、奪われた数値をとりもどすことのできるぽよちゃんも、まあ大丈夫だろう。

 でも、それ以外の人はうかつに攻撃すると数値をとられちゃうな。

 これは困ったぞ。
 今はまだゴドバのランクは1だけど、ランクアップすると、もっと戦いにくくなる。

 早く、蘭さん来てくれないかなぁ。
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