第236話 職神戦6
文字数 1,617文字
「猛、職神さまのHPは?」
「三万弱だな」
「えっ? ふんばるじゃないの?」
「ふつうにかわしたみたいだ」
「器用さ四万って、そんなにかわせるものなのか……」
「まあ、たいていの人間は百の単位だからな。数値」
なんてことだ。じゃあ、一兆百一億円も使ったのに、たった一万ていどしかダメージ与えられなかったのか。それなら僕がなぐったほうがマシだ。
「ハッハッハッ。残念だったのう。そなたが商神をマスターしておれば、一度めの小切手を切るで、わしの負けだったものを。あせらず、マスターしてから来ておればよかったのだ」
「ほんと、そうですね」
ムダにお城の人たちを喜ばせてしまった。なんか着物の人もいたから、たぶん、ヒノクニのギルドの人もいた。
「では、わしの番だな? 覚悟するがよいぞ」
「いや、ちょっと待ってください。まだミニコの行動が残ってるんで」
「ミー!」
あっ……ミニコのロケットパンツが三回、宙を待った。
そうだった。ミニコは僕の行動をマネるから、全体攻撃のときはパンツが飛ぶんだったな。
当然、かわされた。
まあいい。まだ、ミニコ自身の行動が残ってる。僕のマネのときはミニコの行動数を使ってるわけじゃないから。
「ミニコ、魔法使って!」
「ミミミミミー!」
燃えつきろだ。しまった!
雷神の怒りだったら、敵ランダムに複数回の大ダメージだ。一回の雷が燃えつきろに相当。つまり、三回発射されれば、燃えつきろの三倍のダメージだったんだ。
思ったとおりだ。燃えつきろ一発では、わずかにHPが残ったらしい。職神さまは瀕死ながら立ってる。
これは完全に僕の命令ミスだ。ちゃんと『雷神の怒り』って言っとくべきだった。
「ふはははは。ようやく、わしの番か。そなたは強い。だが、わしはさらに強いんじゃー!」
ああっ、職神さまの反撃が。素早さは僕の三分の一だから、職業特性の加算ぶんで四回行動か。
「ほれ、死神乱舞ー!」
えーと、剣の舞のような剣技だ。複数に見えるほどの剣の切先がパーティー全体を襲ってくる。要するに、僕とミニコを。
僕はあわててよけた。
なんかよくわかんないんだけど、ヒョイっとよけると、剣の切先がかすめていった。
「むっ? では、魔王切りじゃー!」
「ヒョイっとな」
スカッ。
「むむっ? では、これならどうだ? 魔神ブレスー!」
「ヒョヒョイのヒョイ」
虹色の豪華なブレスのあいだを、かるいフットワークで、ススッとかわす僕。
か、カッコイイ! 僕、今、最高にカッコイイ?
いや、仲間たちは笑ってる。
「かーくん。可愛い。幼児が踊ってるみたいですよ」
「スキップしちょうがね。それか、ケンケンパ」
「しかも、微妙にヨチヨチなんだよなぁ。かーくん、いくつになっても、あどけないなぁ」
くすん。そんなふうに見えるんだ……?
人生最高のカッコよさだと思ったのに。
でも、これは完全に器用さ99999の恩恵だね。
「あれ? よく見たら、素早さと器用さ、99999じゃない。無限大のマークになってるんだけど?」
「かーくん、風神のブーツの効果で最大値の10000%まで数値あがるんだろ? だから、マックス以上の数値は無限大で表されてるんだよ」
そうか! ということは、僕のもともとの三万が最大三百万まで伸びるってことか。
だから、職神さまの攻撃が、まったくあたらないんだ。
「むーん。では、これではどうだ? 職神の知恵!」
「ヒョイっとな。ふへへ」
なんかデカイ魔法とブレスが来たけど、ヒョロヒョロとかわしていく僕。
えへへ。これは気持ちいい。
僕、今後いっさい敵の攻撃があたらないんだ。へへへ。ふひひ。
「むう……強い。そなた、何者だ?」
「かーくんです!」
じゃ、次は僕の番ですね。
調子に乗ってたんで、言ってみた。
「賭けてみる〜?」
チャラララッチャッチャー!
職神を倒した。経験値二十万、一円を手に入れた。
職神は宝箱を落とした。職神の進軍ラッパを手に入れた。
ヤッター! 勝ったー!