第246話 オーク城潜入

文字数 1,728文字



 そのときだ。
 軍用馬車からやってきて、キヨミンさんが口をひらく。

「あの、夢で見たんですけど、ブタさんのお城のなかを移動するとき、みなさん、モンスターに化けてました。あっ、タケルさんはそのままで竜人だと思われるので大丈夫。モンスターたちもオッケーです。とくにオークの姿だと好意的なので、おすすめですよ。なかのお店で買い物できたりします」

 さすが、夢巫女! ありがたい夢の助言だ。

 ワレスさんは考えこんだ。
「なるほどな。たしかに敵から情報を得られるなら、得てみたいな」

 うん。ゴドバの弱点とまではいかなくても、耳よりな話が聞けるかも。

「わが隠れ身使えば、馬車一つぶんくらいなら、隠せえよ?」と言いだしたのは、アンドーくんだ。
 そうだった。前もアンドーくんのこの技にすごく助けられたんだよね。

「じゃあ、モンスターのふりして情報収集する隊と、隠れて脱出する隊にわかれましょうよ。それとも、ここがゴドバのいる廃墟なの? もしそうなら、このまま、ゴドバのところへつっこむけど」

 と、蘭さんは強気な意見を述べる。そういう性格なんだよ。みためはお姫様なんだけどね。

 僕は前に見た廃墟を思い浮かべた。

「違うね。こっちのほうが建物、新しいよ。どこも崩れてないし、様式も別だね。なんか、オークの像がいっぱいあるから、廃墟のお城とは別物だと思う」

 前のとき、僕といっしょに廃墟をさまよったアンドーくんもうなずく。

「違あね。今、わも見てきた。ここにはオークしかおらんけど、前の廃墟は竜兵士やガーゴイルが守っちょった」
「だよね。ここは完全にオークの住処なんだよ」

 猛が言った。
「おれは疑われないみたいだから、このまま、情報収集してきてもいい。なんなら一人で」
「えっ? 兄ちゃん、行っちゃうの?」
「違うよ。ゴドバを倒すまでは、かーくんについてるからな。竜人族や竜族は単体行動するのがふつうだからさ。怪しまれないよう、この城のなかでだけ一人になるんだ」

 そうか。よかった。
 兄ちゃんが行っちゃうかと思った。

「そうだな。ヤツら、仲間だと思えば、いい情報をくれるかもしれない」

 って、ワレスさんが言うのは、たぶん、猛が裏切りのユダだってことを示唆してるんだろうな。仲間の上に四天王なら、僕らには言わないようなことも教えてくれるかもしれない。

「軍用馬車で人目につかないよう移動するのは至難の業だ。アンドーの特技で運んでほしい。そのためにも、まず少数で城内調査だ」

 ワレスさんはそう言いながら、僕らの顔をじっと見まわす。選抜メンバーを選んでるんだろう。

「ワレスさん。じつは、ぽよちゃんの力がふりきったんです。めちゃくちゃ強いから、戦力的な問題はないと思いますが、やっぱりモンスターだけで行かせるのは心配なんですよね。モンスター職についてれば、ごまかすことができますかねぇ? もしそうなら、僕は山びこに転職できるんですが」

 ワレスさんの驚愕の表情は、そこじゃなかった。

「ぽよぽよがッ? 力の数値ふりきった?」

 そこか。そこですよね。

「マッスル王に就労中、力の伸び率が五倍になるんで、一日半、ずっとマッスル王のまま、戦闘のたびに、僕がレベル1に戻して特訓したんですよ。そしたら、3000レベルもあがっちゃって。吸血の指輪効果もあって、ふりきりました。今、うちのパーティーで素手の力数値が一番強いの、ぽよちゃんなんです」
「ピュイ〜!」

 マスターボーナスでの余剰ぶんはふりわけたから、知力も七万超えてる。世界最強のぽよぽよ、ぽよちゃん。

 ぽよちゃんを見つめたワレスさんは絶句した。

「…………」
「キュイ?」
「……そうか。ぽよぽよがな。では戦力の問題はないな。人間が一人か二人ついていれば、こちらと連絡もとれる。だが、職業だけでブタをだませるものかな? 司書長はどう思う?」

 ああ、いいな。身のまわりに美少女がウロウロしてる。馬車から出てきた司書長は首をかしげた。

「オークは仲間意識の高いモンスターだと、この世界の文献に書いてあります。できればオークに扮していることが望ましいでしょう」

 オークねぇ。だからって、こっちにオークはいないし……ん?

 僕は気づいた。
 そう言えば、あんなアイテム持ってたっけなぁ?
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