第247話 オークになるには

文字数 1,435文字



「僕、こんなの持ってますよ」

 僕はミャーコポシェットをゴソゴソして、

をとりだした。

 オークの紋章2と3だ。
 グレートマッドドクターと、グレート大海賊キャプテンがドロップしたアイテムだ。
 これを持って神殿でお祈りすると、オーク市民とオーク貴族に転職できる。

 しかも、だ。転職すると、なぜか鼻や耳やしっぽがブタになる。つまり、外見もオークに変身するみたいなのだ。

「前にぽよちゃんやネコりんたちは、これでオーク貴族をマスターしてるんで、オークに化けられます。人間は試してなかったけど、スズランさんがいるから、ここで転職できるんじゃないですか?」

 あッ! なんだ? この一瞬でみんなのあいだに広がった緊張感は?

「えっと? オークに化けて潜入することが……」
「それは、わかった」
「ぽよちゃんやトイをつれてけば、みんな仲間だと勘違いされます。トイも合成屋で猫鈴たくさん精霊のアミュレットにつけたから、気まぐれが起きても、だいたい心配ないし」
「…………」
「…………」

 な、なんだろう?

 すると、猛が笑いだした。
「だって、かーくん。それ使ったら、ブタっ鼻になるんだろ? 兄ちゃんは竜人として行くから。じゃな。おさきに。三十分から一時間ていどで、ここに戻ってくる」

 そういうことか!
 美形さんたちはブタ鼻になることを恐れてるのか!

「……おれは、潜入調査向きじゃないから。ここで待ってる」
「あ、僕も。目立っちゃうんで。かーくんにお願いしていいですか? こういう重要な役は、やっぱり、かーくんしかいないと思うんですよ」

 ワレスさんも蘭さんも、僕に押しつけてー!

「いいよ。もう。行くよ。僕が行く。ぽよちゃんとトイつれてく」
「ゆらり」
「あ、たまりんも来てくれるんだ? ありがとう」
「ゆらり〜」

 というわけで、僕とたまりんは紋章を持って、スズランさんにお祈りしてもらった。
 これで僕も立派なブタさんだ。たまりんは見ため、火の玉のままなんだけど。そういえば、なんとなく形が耳と尻尾あるっぽい。ズルイ……。

 蘭さんやワレスさんはクスクス笑ってる。
 二人とも、僕にやらせたくせに!

「そんなに笑う?」
「いえいえ。かーくん。可愛いですよ」
「うん。キュートなブタだ。安心しろ。丸焼きにはしないから」

 僕が行こうとしたときだ。トーマスが呼びとめてくる。

「私も行こう。オークにしてくれ」
「あっ、じゃあ、おれも」と、ラフランスさん。

 二人とも、ブタを恐れない。勇者だ。

「ありがとう。僕ら、ブタ友だね!」
「ブタ、友」
「ブタ……」

 ブタ呼ばわりには抵抗あるのか。難しいな。ミニブタ、可愛いよ?

 これで総勢六人(三人プラス火の玉プラス二匹)になった。
 たれたブタ耳、丸いブタ鼻、くるんと巻いたブタしっぽのトーマスやラフランスさんを見ると笑いたくなるけど、自分のことは鏡を見なければいい。なんの問題もない!

「じゃ、行ってきます。何かあれば、誰かを連絡係としてよこしますので」
「かーくん。気をつけて」
「うん。行ってくるよ。ロラン」

 オークのお城かぁ。
 どんな感じなんだろうな。人間のお城とは違うのかな?
 マッド三兄弟の育ったところ、とか?

 さ、行くぞ〜

 階段をあがっていくと、右が詰所、左が食堂。

「どっちから行く?」
「とりあえず、食堂じゃないか? 食ってるときなら、みんな気がゆるんでる」と、ラフランスさんは言うんだけど、「いや、軍の情報を知るなら、まず詰所だ」と、トーマスは主張する。

 どっちに行こうかなぁ?
 迷うなぁ。
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