第231話 職神戦1

文字数 1,383文字



 職神か。
 さっきはなにげに聞いてたけど、よく考えたらスゴイ。だって、ツボを使えば自分に不向きの職業にもなれるけど、ツボ未使用で全部の職業につける人は、そうそういない。僕らのまわりでは、ワレスさんだけ。

「じゃ、行きます。ミニコは装備品なんですが、いっしょに戦ってもいいんですか?」
「装備品なら、かまわん」

 そうなんだ。
 ミニコの数値、爆あげしてるけど、いいのかな?

 音楽がホワイトドラゴンと戦ったときのやつだ。めったに聞かない戦闘音楽。これは相手が聖獣ってことか。獣じゃないけど、オバケだもんな。


 野生の職神が現れた!
 職神の職業変化!


 わっ、ビックリした。
 職神って野生なんだ。とりあえず、魔王軍ではないと。
 職業変化ってなんだろう?

 職神の姿が変わってくる。薄ぼんやりした火の玉だったのが、ハッキリとした人の形になった。
 ちょっと透けてるけど、戦士っぽいカッコした男に見える。正直言うとそんなに強そうじゃない。

「さあ、来るがよいぞ。そなたはどこまで耐えられるかな?」
「はい。じゃあ、行きます。ぽよちゃん、聞きみ——」

 そうだった。聞き耳、使えないんだ。個人戦だもんな。武闘大会の試合といっしょだと思えばいいか。

 とりあえず、足パタパタだ。でも、風神のブーツの性能をあげた上、僕自身の素早さと器用さは三万になったので、一歩、二歩、これだけで数値は限界マックスまでふりきってしまう。聞き耳はできないけど、職神さんのステータスでも、さすがに僕の素早さにはおよばないんじゃないの?

 聖獣とか神格あつかいなら、たぶん、つまみ食いすると、またスタンがかかる。
 僕はふつうに精霊王の剣レプリカをぬいた。

「えい!」

 思いっきり、なで切りにすると、わあッ! スプラッター! ちょっとカクヨムでは載せられない状態になった。職神、よ、弱い。弱すぎるんだけど?

「ギャー! 兄ちゃん、どうしよう! 職神が死んだー!」
「いや、かーくん。もともと死んでるから」
「あっ、そうだった」

 それにしても口ほどにもなかったなぁ。ウワサじゃ、力自慢の強者が何人も命を落としたらしいんだけどな。

 すると、

「ははははは。まだまだ、これからだ!」

 あれ? 生きてたんだ? いや、死んでるんだけど。

 職神は笑いながら起きあがり、半分になった自分の上半身をひろう。えっと、上半身が下半身をひろったのかな? ま、いいや。どっちでも。

 みるみるうちに、また姿が変わった。今度は武闘家っぽい。武器も持たずに身軽なカッコしてる。

「えい!」

 これも、あっけなく倒れる。
 ミニコの出番がない。

「ははは。まだまだ!」
「しつこいですね」
「だから、まだまだだ!」

 次に職神は魔法使いになった。とんがり帽子とローブと杖。

 もしかして、これって、基本職のリストに載ってる職業に順番に変化してるのか?

「えい!」
「まだまだ」
「えい!」
「まだまだ」
「えい!」
「まだまだ」

 やっぱり、そうだ。僧侶、商人、盗賊、詩人、遊び人、ニートと変化していく。

「ふむ。やはり、基本職など、まったく物ともせぬか。どこまで、わしを楽しませてくれるかな?」
「んんー」

 これは……この感じは、もしかして?

「次は中位職だ!」
「やっぱり!」

 職神は武人に化けた。
 これはつまり、個人職をのぞくすべての職業の一つ一つに変化していくわけか。
 つまり、だんだん、強くなってく!
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