第285話 燃えるオーク城

文字数 1,628文字




 オーク城は炎に包まれていた。ゴドバが火を吹いて、城ごとオークたちを丸焼きにしようとしてたからだ。

 このままじゃ、森にまで火が燃えひろがってしまう。

「アジ。水属性魔法、おぼえてたよね?」
「うん。海賊の大波小波使える」
「ここで二手にわかれよう。アジとたまりんは城の消火して。ぽよちゃんもウォーターブレスが使えるよね。トーマスはオークに転職できるから、オークたちの救助。シャケもトーマスを手伝って。僕と猛でゴドバを止めに行く」
「でも、かーくん。いくらなんでも二人で行くんは危ないで」

 心配そうな三村くんに、
「大丈夫。つまみ食いで力と知性を奪ってしまえば、攻撃力はゼロになるから」
「ほんまか? ほな、行くで?」
「うん。そっちこそ気をつけてよ。かなり火勢が強い」

 僕らは城門で別れた。
 僕と猛だけが猫車から降りて、ゴドバの足元へ走っていく。

 お城の外壁にそって進むと、ヤツはいた。
 ジャラーン、ジャラーンとすでに聞きなれたボス戦の音楽が響く。

「ゴドバ! こっちをむけ。僕たち兄弟がおまえを倒す!」

 いや、倒さないけどね。なんか、蘭さんがいないと倒せないらしいから。なんて言うか、言葉のあや? 勢いあまっちゃった。

 ゴドバにはもう知性は残ってないみたいだ。
 僕が叫んでも、まったく見向きもせずに、城の屋根をこわして上半身をつっこみ、両手でオークをつかまえようとしている。城の窓の部分から、なかのようすが見えるんだけど、ゴドバのヨダレで水たまりができてる。き、汚い……。

「兄ちゃん。やっちゃおうか」
「そうだな。どっちがさきにやる?」
「えっと、じゃあ、今回は猛がさきでいいよ。僕のほうがたくさん動けるから。僕、パタパタしとく」
「よし。じゃあ、まず力だよな。つまみ食い!」

 猛のエアパクパクが発動した!
 ゴドバの力がゼロになる。
 続いて、知力。これで、直接攻撃、魔法攻撃、ブレス攻撃。すべての攻撃をゴドバから奪った。

「力の数値がなくなったんだから、コイツ、無力なんじゃないか? なあ、かーくん。足ひっぱって、城からひきずりだそう」
「そうだね」

 僕と猛で左右の足を一本ずつ。両手にかかえて、ズルズルズル……と。おもしろいようにひっぱれる。力がゼロになってても体重そのものがなくなったわけじゃないんだけど、抵抗がないからね。

 だが、そのときだ。

「わッ」と言って、猛が手を離した。

「どうしたの? 兄ちゃん」
「今、すっごい寒気したぞ。力がぬけた——って、うわッ! おれの力が減ってる。ゴドバに吸いとられてるぞ! 吸血だ。ゴドバのやつ、吸血の特技がある!」
「早く、早く力、つまみ食いして!」
「あ、ああ」

 どうやら、魔改造の壁と長いことつながれてたから、吸血の特技が使えるようになったらしい。ランク1だから対称は単体だし、吸えるのも最大値の十分の一だけど、これじゃ、うかつにさわれない。

「ちょくせつ、さわってなければ問題ないみたいだが、体のどっか一部でもあたってると、コイツのターンじゃなくても吸ってくるぞ」
「マズイね」
「とりあえず、身動きできないように手足と首をちょんぎろう」
「そ、そうだね」

 ワレスさんの言ってた策だ。今のところ、それしかない。

「あれ? まだ兄ちゃんの行動順だな。やっとくよ」
「ありがとう!」

 はぁ。キモイ。さわったら力吸いとられるとか、キモイよ。

 コロン、コロン、コロンと首やら手足やら切りおとされて、まん丸のボールみたいになった筋肉のかたまり……これもキモイ。

「かーくん。ロープ持ってるか?」
「うん。探検のときに必要かもしれないから、ロープも懐中電灯もロウソクも、チョークや水着やお菓子だって、なんでも持ってるよ?」
「……水着はいらないから、ロープくれ」
「はいよ」
「じゃ、かーくんはこっちの端っこ持って。走るぞ」
「ん?」

 僕と猛がそれぞれ両端持って反対方向に走ると、あら不思議だ。ゴドバの胴体は大木にグルグル巻きにされた。

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