第33話 プログラムF

文字数 1,516文字


 盗賊……やだな。
 それって列車強盗の仲間?
 つまり、ま、まさか、三村くんがボスなのか?

 ひしひしとイヤな予感が迫ってくる。
 僕らは黙々と歩いていく。
 二階は複雑な迷路と化していた。細い廊下と小部屋がえんえんと続いてる。

「あっ、宝箱だぁ。カパっ。この音がいいよねぇ? カパって。宝箱って感じ」

 研究所の宝箱は機械っぽいものが多い。あと、なぜかわからないけど、カジノのコインがよく出る。

「僕、カジノのコインなんかいらないんだけど? たった50コインなんて買えばすむし」
「僕も欲しい景品は、かーくんがくれるから必要ないかな。ギャンブルしたいと思わないです」
「わもいいわ。種セット、かーくんにいっぱいもらったけん」

 うちのメンバーはみんな僕の小銭拾いの恩恵で、お金で買えるものに無頓着になってる。
 そういうときは、そっとホムラ先生が手を出す。僕はなにげなくカジノのコインを先生の手にのせながら、ふと思いだした。

「ああーッ! カジノで僕にコインをめぐんでくれって言ったおじさん!」

 そうだ。まちがいないぞ。
 前に僕がぽよちゃんと二人でカジノで遊んでたとき、大勝ちしてる僕に恩返しするからコインをわけてくれと言ってきた、あつかましいおじさんだ。

 はーはっはっと、ホムラ先生はさわやかに笑う。

「そんなこともあったかな? まあまあ、いいではないか。言っとくがね。カジノは研究資金を増やすために行ってるだけだよ? 君」
「ウソだ! 思いっきり負けてたじゃないですか」
「運とは時の神の恩賜(おんし)なり」
「もしかして、研究資金をカジノの遊びに流用してるんじゃ? そ、そう言えば、今回も僕らと同じ汽車で王都から帰ってきた! あれってカジノ帰り——」
「まあまあまあ。ほら、その大きな歯車を貸しなさい。ミニゴーレムをカスタマイズしてやろう」

 宝箱から出てくる部品で、ホムラ先生はミニコをパワーアップしてくれた。たしかに性能はあがっていく。

「ほかにも何かカスタム用のパーツを持ってないのかね?」
「あっ、そうだ。前にミニゴーレム失敗作を倒したときに、プログラムFっていうのをドロップしました」
「おおっ、これはごく初期にしか作ってなかった、レアプログラムじゃないか!」
「えっ? スゴイんですか?」
「うむ。すごく珍しい。このプログラムを開発してたのはイソフク研究員だ。彼は半年前に研究所を退職してしまった」

 わくわく。初期にしか作られてなかったレアプログラム。どんな技を使えるようになるのかなぁ?

「じゃあ、とりつけてください」
「うん。こうして、こう。チョチョイと、これでよし」

 プログラムっていうわりに、なぜか頭のアンテナみたいな飾りに赤いリボンが結ばれた。ほんとに、これでいいのか?

 でも、期待値はあがる。

「わあっ。どんな技を使えるようになったんですか?」

 ホムラ先生はミニコの肩をポンとたたく。
「やってみなさい」
「ミ〜」

 生みの親なせいか、ミニコは先生の命令にしたがった。

「ミー!」

 両手をあげ、目をチカチカさせる。
 おおっ、これは、ミサイルか? それとも今度こそロケットパンチかなぁ?

 ドキドキしながら待っていると、ウィィーンとうなりながら——

 ポンッ!

「…………」
「…………」
「…………」

 はい。上から僕、蘭さん、アンドーくんのあきれて言葉も出ないようすだ。

 ポンッと音を立てて、ミニコの頭についた丸い飾りがひらき、花の形になった。それだけ。
 いや、なんかいい匂いはしてるかもね? アロマテラピ〜

「先生。これは……?」
「プログラムフレンドだよ」
「なんの効果があるんですか?」
「みんなと友達になれる」
「…………」
「…………」
「…………」

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