第238話 苦戦する雷帝

文字数 1,712文字



 さて、僕のあと、猛と蘭さんが職神さまと戦った。
 僕のときに観察してるから、二人はいいよね。対策を練ることができるしさ。

 猛は反射カウンター持ってるし、強力なブレス攻撃もあるしで、チョロい。
 やっぱ反射カウンターはスゴイ。職神さまって、わりと単純……って言うか、カウンターがあるからようすを見るとかって行動しないんで、ガンガンあたって自滅してくれた。

 次は蘭さん……のはずだったんだけど、
「私も試してよろしいですか? もしも死んだら蘇生してください」と、バランが言いだした。

「えっ? やりたいの?」
「どうしても欲しいツボがありまして」
「それって?」
「精霊王です」

 ああ、バランって精霊とか、精霊騎士とかの職業になってたもんね。

「精霊王になるといいことあるの?」
「精霊王は今現在、長いあいだ不在なのです。精霊騎士をマスターし、さらに生まれながらの資質があれば、きわめてまれに精霊王になることができます。残念ながら、私はなれません。ですが、我らの王が復活することを、精霊族は待ち続けています」

 職神さまが口をはさむ。
 おしゃべり好きな神様だ。

「すまん。わし、その職業のツボは持っちょらんぞよ」
「そうですか……」
「ただ、神獣クィーンハピネスのツボなら持っちょる」
「おおっ! それは偉大なる精霊族の女神ではないですか!」
「やるかの?」
「やります!」

 というわけで、バランも挑戦。バランはさ。ローズクォーツの杖の効果で、毎ターン全ステータスが千ずつあがるんだよね。

 で、職神さまは基本職から変化していくから、最後の職神になるころには最低でも50ターンは経過してる。ということは、そのころ、バランの数値はすべて五万超え。

 その上、庭師の特技で木属性の魔物——つまり、仲間の薔薇の精を際限なく呼びだすことができるようになった。呼びだして、庭師の特技で強化できる。

 奥の手は『みんな、ヘッチャラさ〜』だ。3ターン無敵が続くので、みんなでつねにかけあって、無敵のまま総攻撃。

 勝った。
 精霊族の女神の魂をもらって、バランはとても嬉しそうだ。

 これなら、蘭さんは楽勝かな? 雷帝も持ってるし。

「ぬう。強い。今日だけで、すでに三人もわしに勝つとは。いや、長生きはするものよ。ハッハッハッ」

 いやいや、だから死んでるって!

「職神さまって、なんで死んだんですか?」
「ん? 寿命だ。高齢だったからのう」
「なんだ。強すぎて魔王に殺されたとかじゃないんだ」
「ああ、魔王は若いころに、わしらが封じておった」
「えっ? 職神さまが?」
「うむ。いわゆる勇者パーテーだったんじゃ」
「へえ! 職神さま、勇者だったんだ!」
「いや、勇者はわしの友人だ。わしはそれを支える役目だった」

 そうなんだ。なんか、僕と立場が似てるなぁ。とたんに親近感。もしかしたら、職神さまが最初に僕を指名したのも、そのせいだったのかも。

「じゃ、次は僕です!」

 蘭さんがとびだしていく。
 攻撃力十万、知力も二万超え。その他の数値も高いし、雷帝という切り札も持ってる。職業は最上位職の勇神。

 かんたんに勝てるだろうと思ってたんだけど——

「あ、あれ? ロラン、一回しか動けてないね」
「素早さ三万だからな。職神のおっちゃんのほうが、ちょっとだけ素早いよ」

 蘭さん、一回ずつしか動けない最終戦。

「雷帝!」
「ほやッ! 職神の知恵!」
「キャー! 二回攻撃ズルイですよ!」
「ズルくはない。これは職神の知恵という特技だ。最上位職でおぼえる特技から二種類がランダムに発動する」

 ああ、僕のときにもやってたよね。

 なんか、蘭さん苦戦してる。鉄壁カウンターでせっかくの十万攻撃力をふさがれてるから、厳しいものがあるよね。パーティー全員の知力の二倍っていう雷帝でさえ、一万ダメージしか与えられてない。個人戦では充分な力が発揮できない魔法だなぁ。

「一回一万だと、10ターン戦わないと倒せないね」
「そうだなぁ。これはマズイぞ」
「えっ? なんで?」

 僕が猛と話してるうちに、蘭さんが青ざめた。

「ロラン、どうしたの?」
「MPが……もう雷帝が使えない」

 ああ、そうだった。雷帝は一回で二百もMP消費するんだっけ。

 蘭さん、どうする?
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