第67話 今度は(呪いの)ツボ〜
文字数 1,633文字
「ツボはどんなのあるんですか?」
「はい。一番のお勧めは、こちらの呪術師のツボですね!」
「へぇ〜。呪術師かぁ。聞いたことない職業だなぁ」
「個人が自身でたどりついた独自の職業ですね。オリジナル職業。オリ職とも呼ばれます。そう言った職業はツボでしか転職できません」
「呪術師かぁ。変わった呪文をあやつるのかなぁ?」
ワクワクしたんだけど、
「装備中の呪われた武器防具の数ごとに、戦闘中、自身の攻撃力が十倍、百倍、一千倍とあがっていく職業です。ただし、この効果は呪術師の職業についているあいだだけの特技です。転職すると、その特性は失われます」
うーん。力十倍、百倍、一千倍はスゴイよ?
ちなみに一人が装備できる数は、武器一個、防具はかぶと、よろい、よろい下、盾、靴の五個。アクセサリーも効果あるんだとすると、二個までとりつけられる。蘭さんだけは勇者のマスターボーナススキルで三個。
ということは、合計八個、蘭さんは九個の装備品を身につけられる。
一個につき、力が十倍ずつ増加するなら、最大八個の呪いの装備品で、十、百、千……億? 一億倍? 数値ふりきるどころじゃないんだけど?
そんなの人間じゃない。もう魔神だ。
「うーん。でも呪われた装備品を身につけてると、戦闘中にスタンとか、しびれとか、ランダムで異常効果が出るんですよね?」
「出ます。一つの装備品につき30%の確率で異常が出ますから、三個装備すれば、ほぼ確実に」
そ、それは、どうなのかな?
強いのかな? 弱いのかな?
力は強くても、動けないんじゃ意味なくない?
「あっ! そうだ。天使の羽の効果ですべての状態異常をふせげば——」
お姉さんは鼻先で笑った。
「呪術師の特技は、状態をふせぐ装飾品や生来特技の効果を打ち消します」
確実に呪われる職業!
「使いどころ難しそうだなぁ。まあ、いちおう、もらっとく」
もしかしたら呪いの効果をふせぐアイテムが、どこかで手に入るかもしれないしね。何かに役立つかもしれない。
「ほかには?」
「小鳥師などいかがですか?」
「わあっ、なんか可愛い職業っぽい」
「戦闘中、小鳥を呼びよせて——」
「うんうん。小鳥を呼びよせてっ? どうするの? いっしょに戦ってくれるの?」
「……いやされる職業です」
「えっ? それだけ?」
「それだけです」
「……それは、いいや」
「あっ、でも、ですね。小型のモンスターに覚えさせると役立つ職業だということです」
「えっ? ほんとに?」
「はい。マスターさせたら、という話ではございますが」
ふうん。なんかいいマスターボーナススキルをおぼえるのかもしれない。
「じゃあ、ぽよちゃんに小鳥師になってもらおうかなぁ。それもください」
「はい。ありがとうございます。本体価格五千万円のアレやコレやで二億円でございます」
だんだんアレやコレやがおかしなことになってきてる! 絶対、変。異常。
これ以上、ぼったくりバーにいると、なんか怖いことになりそうだ。
「じゃあ、とりあえず、今日はそれだけでいいです」
僕は聞いたね。お姉さんがかすかにチッと舌打ちついたのを。
やっぱり、カモられてるんだろうか?
とにかく、ビップルームでの買い物を終えて、僕らは外に出た。満足。満足。いっぱいお金使ったー!
「ぽよちゃんを転職させるんですね。それなら、マーダー神殿に行かないと」
「マーダー神殿なら、たしか、このギルドの教会のなかにもあったよ?」
「そうですね……」
あっ、そうか。蘭さんは妹のスズランさんに会いたいのか。
スズランさんはお城で一人になってしまったお父さんを手伝うために、今回は旅に同行していないのだ。お兄さんはアレだし、お母さんは療養中。たまには蘭さんも家族に会いたいか。
「じゃあ、ミルキー城に行く?」
「いいんですか?」
「魔法でなら、パッパッと往復できるし。銀行に貯金だけ行ってくるね」
「はい」
さっき一千億円使ったんで、残りの六千億円をあずけた。
僕の貯金はただいま、八千億円なり。一兆円も目前だぁ。