第48話 三村くん(起動中ギガゴーレム戦)1

文字数 1,370文字


「僕が倒すって言ってるじゃないですか!」
「姫君はおとなしく、おれのうしろで守られてろ」
「王子です!」
「らんらん姫」
「ああっ、黒歴史ーっ!」

 言いあいながら、蘭さんとワレスさんはならんで走っていく。寝ぼけた盗賊たちはそのままムチやプチサンダーの餌食(えじき)となった。

 そのあとを僕や馬車がついていく。
 あっ、急がないと、ボス戦にまにあわなくなる。

「ミニコ。もうおろしていいよ」
「ミ〜」

 ギガゴーレムの前に男が現れた。遠目に見てもわかるぞ。三村くんだ。けど、なんか、背高くないか?


 ジャラーン、ジャラーン!
 シャケが現れた。
 ギガゴーレムが現れた。


 テロップを見て、僕はギョッとした。
 なんと、今回、三村くんだけじゃない。ギガゴーレムがお供だ。どっちかっていうと、三村くんのほうがお供なんだろうか。

 僕が急いでそこまでかけつけたときには、すでに蘭さんとワレスさんが両側から、はさむような形で戦闘始めていた。ああ、もう。

「シャケ! 僕があなたの目をさまさせてあげます。先制攻撃!」
「雷神の怒り!」

 パーティーが別々だから、蘭さんの先制攻撃が優先されないんだね。
 ムチと特大魔法をくらって、三村くんは倒れた。

 ごめん。三村くん。研究所で見たときより派手な筋力増強アームつけてたから、たぶんステはすごく高くなってたんだと思う。だけど、見ることすらできなかったよ。

「どうですか? 僕のほうが速かったでしょ?」
「今のは、おれがさきだろう?」
「僕です」
「おれだ」

 僕はため息をついて、二人のあいだに割って入った。

「あいこ! あいこね。もうそんなのいいから、ギガゴーレム、持って帰るよ? それに、シャケも今のうちにつれていかないと」
「そうでした。シャケは大丈夫なんですか?」

 さっき、容赦なく五万攻撃力でムチふるってたくせに、蘭さんはしおらしいことを言う。ふつう、死ぬからね?

「おーい、シャケ? 戦闘不能かな?」

 僕がヒョコヒョコ近づいていきかけたときだ。うしろから肩に手をかけて、ひきとめる人がいる。ふりむくと、ワレスさんだ。真剣な表情に戻ってる。

「待て。おかしい。まだ戦闘音楽が鳴りやまない」
「そう言えば」

 ビー、ビーと変な音がする。
 見なおすと、ギガゴーレムの目がチカチカしていた。
 あっ、これは、ミニコが起動したときといっしょだ。ギガゴーレムが覚醒しようとしてる!

 蘭さんもまじめな声で言った。
「さっき、テロップでギガゴーレムが現れたって言ってましたよね?」

 そうだ。言ってた。
 つまり、敵は三村くんだけじゃない。ギガゴーレムとも戦わないといけないんだ。

 ワレスさんは嘆息した。
「ばくだいな資金を援助したのに、ここで破壊しなければならないのか」

 んー、穂村先生は資金を流用してる疑惑が……。

「さすがに対ギガゴーレムは遊んでる場合じゃないですね」と、蘭さん。

 ワレスさんもうなずいた。
「しかたない。今回は引きわけにしてやろう。合流するか」
「引きわけに

のはこっちです。でも、手は組みましょう」

 やっと、まともなボス戦だ。三村くんはやっつけられてしまったけど、サブタイトルは三村くん戦だ。

 ワレスさんが告げる。
「ギガゴーレムが完全に起動する前に停止させよう。そうすれば、損害が少なくてすむ」

 ミニコが起動するときは数分もかからなかったなぁ。
 急がないと。
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