第214話 暗殺者スリーピング戦1
文字数 1,567文字
立派な墓の前でもつれあう人影。
僕らは急いで、彼らの前に立つ。
「兄上! 姫を——セイラを離せ!」
温厚なタツロウが怒り狂ってる。タツロウはさ。物静かで優しいけど、まがったことは嫌いなんだよね。悪人に対しては激しい一面も見せる。
「ウルサイ! きさまさえ生まれてこなければよかったものを。おまえのせいで、おれが今までどれほどみじめな思いをしたかわかるか? いつもいつも、優秀なおまえとくらべられ、家臣にも見くだされ、あげくのはてにフィアンセを奪われた!」
「だからと言って、セイラを傷つけることはゆるさない!」
争う兄弟。
うちなんか、オカズとった、とられたとか、そんなことでしか争わないのに。
きっと、セイラが美女すぎるのがいけなかったんだな。なおさら恨みがつのったんだ。
「タツロウさん!」
「セイラ! 今、助ける!」
すると、最上のクズ男は大声でわめいた。
「スリーピング、行け! アイツらを皆殺しにしろ!」
「御意に」
ああ、ジャラーン、ジャラーンって、この音楽はボス戦だ。スリーピングが僕らのほうへ近づいてくる。階段の前に立ちふさがるから、イヤでも戦わざるを得ない。
ジャラーン、ジャラーン!
暗殺者スリーピングが現れた!
あッ! 今、テロップ、
野生の
って言わなかった。僕は階段に伸びる細長い影を見つめる。これって、もしかして……。
「コイツだ……僕が前に宿屋で聞いた会話。義のホウレンと話してたの、コイツだよ」
「ほんとか? かーくん」
「うん。まちがいない」
ということは、スリーピングは魔物だ。義のホウレンの配下。
「夢の巫女を探してた。そうか。だから、セイラ姫をさらったんだ!」
夢の巫女はヒノクニのお姫様だってウワサがあった。スリーピングの耳にも、そのウワサが届いたのか。
ケケケケと声をあげると、スリーピングはとつぜん大きくなった。身長が二メートル以上に。しかも、長い牙が口からはみだしてる。獣人……? いや、悪魔、かな?
「バレてはしかたないね。おまえたち、皆殺しだ!」
ああ……戦わないとな。
「前のメンバー、これでいい?」
猛、僕、蘭さん、バランだ。
「今の僕らの最強だと思いますよ。後衛はたまりん、ケロちゃん、ぽよちゃん、アンドーで」
「うん。それがいいね」
「おれも戦う!」
アジがとびだしてきた。アジはNPCだから、人数以上でも外へ出られる。タツロウもNPCだ。
人数増えたな。後衛に四人つけても、まだあまる。二つパーティーでちょうどいいくらいだ。ラフランスさんの魔法も強力だし、使えないのはもったいない。もちろん、途中で入れかえはできるわけだけど。
「ちょっと待ってくれ。おれ、後衛もできる。詩聖マスターしてるんで。攻撃魔法じゃないのは不本意だが、補助魔法や回復魔法も使えるよ」と、ラフランスさんが主張する。
「じゃあ、ケロちゃんに水の結界を使ってもらったあと、後衛チェンジしてもらいましょうか」
「そうしよう」
後衛の補欠までできてしまった。
じゃあ、いよいよ試合……じゃなかった。戦闘だ。大会ボケ、早くなおさないとな。
まずは、蘭さんの先制攻撃だ。必ず敵より先手をとれるのは、たしかに嬉しい。でも、作戦練る前に自動で通常攻撃入っちゃうのは痛いなぁ。物理攻撃きかない敵だった場合、蘭さんの行動数がムダに消費されてしまう。
これ、なんとかならないかな?
僕はふと思いたった。
蘭さんの生来特技の欄をながめる。
危険察知
ランク3 戦闘に突入すると、必ず自身が最初に先制攻撃できる。
これ、書きかえちゃえ。
危険察知
ランク3 戦闘に突入すると、必ず自軍パーティーが最初に先制攻撃できる。
書けた。書けたな。
チャラララッチャチャ〜!
かーくんの小説を書くがランクアップした。特技を書きかえられるようになった!
あっ、イベントだった。