第168話 グリーンドラゴン戦3
文字数 1,760文字
変だな。最初、楽勝だと思ってたのに、えらく苦戦してる。
こっちは二人倒れ、むこうは無傷。しかも、猛がギガファイヤーブレスを封じられた。ふりだしどころか、それ以下だ。
「だいたいさ。ふつう蘇生されたターンって動けないよね。なんで攻撃してくるの?」
「復活の祈りっていうのは蘇生魔法じゃないからな。特殊な効果で、そのターンから動けるのかも」
「じゃあ、市松人形二体を同時に倒さないと、キリがないってこと?」
「そうなるな」
ようやく、こっちのターンだ。これ以上、被害が出る前に、なんとか市松人形を倒したい。
「総額なげは封じられたけど、まだ傭兵呼びや小切手を切るが使える。試してみようか?」
「いや、いい。まだファイヤーブレスが使える」
「ギガファイヤーブレスにくらべたら、攻撃力が低いよね?」
「半分だな」
「じゃあ、三千ダメージか。十回行動できれば倒せるね」
「正確には雄叫びするから十一回だな。火の結界は3ターンもつ」
「十一回、動けるの?」
「問題ないよ」
そうだよね。グリーンドラゴンの素早さは三百だ。素の僕でも二回動ける。
猛は雄叫びをあげ、ファイヤーブレスを十回、吐いた。グリーンドラゴンは倒れた。
ここまではいいんだよね。
問題は市松人形。
「ああっ、やっぱり隠れてた! なんかさ。アンドーくんは一回使用したら、そのあと2ターン、『隠れる』使えなかったんだけど。なんで、この人形たちは使えるの?」
「たぶん、特技ランクが高いんだろ」
「そっか!」
つまり、アンドーくんももっと特技のランクあがれば、毎ターンで隠れるが使えるようになるんだ。これは鍛えてもらわなければ。
「あっ、かーくん。兄ちゃん、通常攻撃が使えるようになってるぞ」
「ほんとだ。総額なげも使える」
「つまり、封じ噛みの効果は1ターンだけだ。次のターンには使える」
「なんだ。安心した」
とは言え、ここぞってターンで得意技を封じられたら困るよね。とことん、イヤな攻撃してくるなぁ。あの人形。
僕は素早さマックスまであげたから、余裕で二十回は動ける。けど、僕が今まさに剣をかまえて攻撃しようとした瞬間、市松人形は姿を消した。
「ああッ! 二体とも隠れた! ほんと腹立つー!」
どうしよう。とりあえず、アジとぽよちゃんは蘇生しておく。次のターンでまたグリーンドラゴンにやれちゃうかもだけど。
「ふあっ。ビックリした。戦闘不能ってあんな感じなんだね」
起きてくるなり、アジが口をひらく。
「ごめん。アジ。今回はミニコに守ってもらうから」
「うん」
アジは戦況を把握したもよう。
「ねえ、かーくん」
「うん。何?」
「今、おれが行動したら、かーくんは動けるの?」
「いや。ダメだと思うよ。さっきアジとぽよちゃんを生き返らせたから、今が僕の行動順だ。アジが動いたら、残り行動数を未消化のままで、順番をゆずったことになる」
「ふうん」
とは言っても、どっちみち、魔法を使おうにも、通常攻撃をしようにも、ターゲットがいないから、行動の項目の字が薄くなっていて選択できない。
「うーん。できるのは、身を守ると味方にかける補助系魔法と……あっ、つまみ食いはできるんだ」
僕はつまみ食いしてみた。姿は見えないのに、なぜか僕の器用さが15あがった。
「市松人形の器用さって150なんだね。一回でつまみ食いできるの、相手の最大値の10分の1だもんね」
「兄ちゃんは5分の1だ」
「いいなぁ。僕も早く、つまみ食いランク5になりたいなぁ」
悔しいんで、やけになって何回もつまみ食いするんだけど、どれも不発。あわよくば、市松人形のHPをゼロにしてやれるかもって考えたんだけどねぇ。HPをそれぞれ、40から60減らしただけだ。
するとそのときだ。
「ぽよちゃんって何回攻撃できるかな?」と、アジが聞いてきた。
「市松人形の速さにもよるけど、四回以上は動けると思うよ」
「じゃあ、充分だ。僕に任せて。算術ー!」
算術か。学者の特技だよね。
特技って就労中しか使えないのと、覚えたあとは転職しても使えるのがある。算術は後者。
「これで、ぽよちゃん、あの人形を倒せると思う」
「えっ? ほんと?」
「うん。やってみて」
「キュイ」
ぽよちゃんは走った。
妖精のネイルがササッと虚空を切りさく。
チャラララッチャチャ〜!
あっ、勝った!
見えないのに倒せたぞ。