第143話 クマのファミリー
文字数 1,667文字
テディーパパの数値。
レベル40
HP7500、MP750、力1950、体力1950、知力750、素早さ750、器用さ750、幸運600。
うわっ、HP7500?
力と体力が1950なんだけど?
テディーキングになったときのクマりんでも、これほど強くなかったよね?
やっぱ、パパだからなのか。強い。強すぎる。もはやボス。
巨人女戦士はみるみる青くなった。が、キッと唇をかみしめて、長剣をふるった。
ガッツーン——
ものすごい音がして……あッ! 巨人の長剣が折れた!
テディーパパの腕による防御で、剣の刃先が折れたぞ。固い。なんて固いクマだ。ぬいぐるみなのに! 中身はほんとに綿か?
さあ、次はクマりんの番だ。
どうやら両者一回ずつしか動けないみたいだな。
クマりんは、
「ま〜」
また呼んだ。今度は誰だ?
ドスン……ドスン……。
また来た。デカイの。
さっきのパパは水色のクマだったけど、今度のはレモンイエロー。
「テディーママだね」
「ママも呼ぶのか」
「呼ぶんだよ」
テディーママの数値はパパと同じだ。色が違うだけ。
三メートルの巨人族をはるかにしのぐ、巨大なクマが二体も……。
さらにクマりんは、
「ま〜」
あッ! もう一回、呼んだ。
次は赤いクマが来た。変だな。クマりん、パパとママしか呼べないはずだったのに。
「あの赤いクマはどっかで見たことがあるぞ。そうだ! ミルキー城の地下洞くつに出てきた、子グマちゃん(赤)だ。いつのまに仲間にしてたんだ」
そうか。蘭さんはこの続編が始まる前、しばらく実家のミルキー城に帰ってた。あのときか。一人で冒険してたのか。外伝書かないとダメか?
ステータス画面を見たら、テディーシスターって書いてあった。ステータスはパパとママの三分の二。大きさも八メートルくらいだ。やや小さい。
「クマのファミリーだ」
「勢ぞろいだな」
「うん」
あれ? でも、クマりんはなんで今のターン、二回動けたんだろう?
「最初のターンでは一回しか動かなかったよね? 今のはなんで二回?」
「クマりんと巨人戦士の素早さの差が、1.5倍なんだろうな。2ターンに一回は二回動ける」
「ああ、そんなこともあるんだ」
勢ぞろいしたクマのファミリー。
ただの人間なら、ここであきらめるよね。力2000のクマが二体、力1300のクマが一体、プラス小さいクマが一体……。
だけど、巨人の女戦士はまだ戦意を失ってない。
「剣の舞!」
ああっ、全体攻撃だ。武闘王でおぼえる特技だね。
ザクザクだ。
さすがに固いクマファミリーも、ダメージが深い。とくに子グマちゃんは小さいままだ。HPがたった260しかない。1000超えの攻撃を受ければ一撃死だ。
その瞬間だ。クマりんが増殖し始めた。次々に子グマちゃんが現れる。
これは、アレだ。
子グマちゃんが倒れそうになると、仲間を増やして合体する。ピンチのときにだけ、まれに起こる子グマ特性。
クマりんは子グマちゃんたちと合体して、テディーキングになった。
クマりん……女の子のはずだよね? ふと思ったんだけど、なんでテディープリンセスとか、テディークィーンじゃなく、テディーキングなんだろう? えっ? まさか、子グマちゃん、男の子?
ぬ、ぬいぐるみには性別なんかない!
クマ一家、今度こそ勢ぞろいか?
ああっ、なんと!
テディーたちがより集まって、さらに合体し始めたー!
そう言えば、クマりんの特技に、合体ってあった。あれ、てっきり呼びだした子グマちゃんたちとしかできないんだと思ってた。もしかしたら、特技のレベルがあがったのか。
クマ一家は超巨大なテディーギガキングに……。大きさ百メートル超えてない?
数値は、たぶん、テディーキングの百倍。
テディーギガキングが片手をふりあげる。
巨人戦士はペタリと腰をぬかした。武器をなげだし、ふところから出した白いハンカチをふっている。
「ああっと、ここでヴィクトリアチーム、白ハタです。ヴィクトリアチーム次鋒、降参しました! トーマスパーティーの勝利です!」
クマりん……怖い。