第271話 グレート研究所長戦1

文字数 1,582文字



 グレート研究所長。
 グレートマッドドクターと、グレート大海賊キャプテンの兄。三匹のブタさんの長兄だ。

 人間を魔物に変身させる古代魔法を機械で再現し、大勢の人間たちをさらってきてはモンスターへ変えていた。
 その人たちは人間の世界に送りこまれて、ほんとは自分が人間だということも知らずに人々を傷つけた。

 極悪非道きわまりないオークだ。

「ブ、ブヒッ? きさまは勇者ではないか! 勇者はぽよぽよに変身させたはず。どうやって人間に戻った?」

 あいかわらず、僕のことを勇者だと勘違いしてるなぁ。

「えーと、そこ説明するのめんどい」
「ブヒッ! な、なんと! 魔改造の壁が破壊されている! き、きさまか? きさまがこわしたのかッ? ブヒッ?」
「うん。僕がこわした。ブヒッ」

 ハッ! つられてしまった。は、恥ずかしい……。

「かーくん。のんきに話してないで、コイツ、倒すぞ?」
「そうだね」

 ワレスさんが僕らに告げて走りだす。
「そっちは任す。おれたちはゴドバをやる」
「了解です!」

 ワンワンっ。

 ワレスさんと馬車は、ゴドバが入ってるという大きな箱に突進していく。
 僕らはグレート研究所長の前に立ちはだかった。

「グレート研究所長、おまえのせいで、ナッツのお母さんは、ゴーレムにされて死にかけたんだぞ。街の人たちも大勢、苦しめられた。絶対、ゆるさない!」
「ふん。勇者め。わがはいが倒してくれるわ! 行け! バンシー!」

 えっ? 何? バンシー?
 ああっ、仲間呼びやがった。
 前のときといっしょだ。やっぱり下劣なブタだな。一人じゃ戦えないんだ。


 ジャラーン、ジャラーン!
 グレート研究所長が現れた!
 バンシーが現れた!
 ゴーレムが現れた!


 むーん。お供が二体も。
 どっちも改造された人間なんだろうな。倒して、もとに戻してあげないと。

 なんか、ズシンズシンと、やたらに床がゆれるけど、ワレスさんたちが戦闘してるのかな? 気にせず、こっちはこっちでやるぞ。

「じゃ、猛、聞き耳!」
「はいよ。ピクピクと」
「あっ……ぽよちゃんのマネしてくれない」
「さっき、するなって言ったろ?」
「やってくれないと、それはそれでさみしい」
「やろうか? キュイ!」
「やっぱ、なんか違うな」
「どっちだよ!」

「ブヒっ……」

 あっ、ブタさんが待ってる。
 ごめん。ごめん。

「えーと、グレート研究所長のレベルは35。HPは15000。力とか体力とかは1000前後。特技は(げき)をとばす。死毒の霧。魔改造——ええ! 魔改造はヒドイでしょ。何それ?」
「ブヒヒっ。オークこそ至上の魔物」
「なんか腹立つなぁ。まあいいや。バンシーは泣く。ああ、バンシーって泣き女か。イギリスの魔物だっけ? 死人が出る前に泣き声が聞こえる妖怪みたいなやつ。ゴーレムはフルスイングアームアタック。雄叫び。ためる」

 一番やっかいそうなのは、やっぱり、魔改造だ。どんな特技なのか、くわしくはわからないけど、仲間の数値を急にあげたり、進化させたり、そんなことができるんじゃないかな?

「じゃあ、やっつけようか。今回は味方を守るモンスターいないから、さきにブタさん倒しとこうか」

 僕が言ったとたんだ。

「ブ、ブタだとぉー! この美しいわがはいをブタとぬかしたか? このみにくい子ブタめがー!」
「…………」
「…………」
「…………」

 僕らは、そっと目を見かわす。

「えっと、どこからつっこんだらいいかな?」
「せやなぁ。ブタが美しいかどうかっちゅうとこも、もちろんやけどな」
「でも、直後に自分で『みにくい子ブタ』って言っちゃってるよ? やっぱ自分でもブタみにくいと自覚してるじゃん」
「せやなぁ」

 ブタさんは怒り狂ってる。
「ぐぬぬ……ゆるさん、ゆるさんぞ。オーク族、積年の恨み、今こそ晴らしてくれるわ! バンシー、ゴーレム、やってしまえ!」

 あっ、檄をとばした。
 まだ僕らの番なのにぃー。
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