第91話 ミニゴーレム(遠隔操作中)戦1
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これは、アレだな。
鉄クズ大量戦のときといっしょ。
たぶん、前衛のAからZを倒しても、すぐに後衛のミニゴーレムが次々に出てきて連戦になるやつ。
兄ちゃんがいてくれてよかった。じゃないと僕らだけでは、ちょっと怪しかった。いくらミニゴーレムの一体ずつは、さほど強くないって言ってもね。数で来られると、そのうちバテるからね。
「じゃあ、かーくん。兄ちゃんに任せろ。ファイヤーブレスで全滅させるから」
「ちょっと待って。ファイヤーブレスって全体攻撃技だよね? てかさ。なんで人間なのに炎吹けるの?」
「だからな。兄ちゃん、魔王軍だから、マーダー神殿に行くことできないんだよ。モンスター職にしかつけないんだよな」
「……へえ。そうなんだ。どんどん人間離れしてくね。兄ちゃん」
ちなみに、こっちの世界での猛には、背中に黒い竜の羽がある。これには深いわけがあるんだけど、長くなるので割愛。気になる人は前作『悪のヤドリギ編267話 飛んだ、飛んだ』を読んでほしい。
パッと見、人間と言うより竜人だ。竜兵士とかの仲間だよね。その上、特技がファイヤーブレスとか、モンスターそのものじゃん。
そういえば、この前、ワレスさんも火を吹いてた気がする。さてはドラゴン系の職業についたことあるんだな。
「えーと、それはいいけど、なんにも見えないとこで急に火吹かれると困るんだよね。ちょっと待って。前に宝箱からカンテラひろったから」
なんでも出てくるミャーコポシェット。
可愛い僕らのミャーコポシェット。
カンテラを出すと、あたりが明るくなった。
思ったとおりだ。あたりじゅうにミニゴーレムがいる。しかも、その一体一体が、まだ子どもを持ちあげたままだ。
「ほら、ファイヤーブレスしたら、子どもも傷つけるよ。ダメダメ」
「おっと、これは難しいな。子どもはおれたちにとっての人質みたいなものか」
どの子も泣いてる。
そりゃそうだ。不安で怖いし、それにお腹も減ってるだろうし。
「子どもを傷つけずにミニゴーレムだけやるしかないね」
「そうだな。しかたない。めんどうだけど、一体ずつ倒していくか」
猛の素早さは約4700だった。流星の腕輪は……つけてないと。ということは、パタパタしてマックスにしたら、僕のほうが速いのか。
「とりあえず、猛はミニゴーレム倒してて。僕、素早さあげとくから」
「へえ?」
「あっ、それと、ミニゴーレムはあやつられてるだけだから、なるべく壊さないでね。戦闘不能にするだけにしてよ。持ちぬしに返さないと」
「そんなことまで気にしないといけないのか?」
「いや、だって、一体一億円だよ?」
「高いな」
「高いでしょ?」
「ラーメン何杯食えるかな」
「えーと……計算機使わないとわからない」
「とにかく、壊さないように倒すか」
大技を使えない、セコセコとみみっちい戦いが始まった。
手数だけは多いんで、僕とミニコが1ターンに六、七十体ずつ、猛も四、五十体は倒す。ぽよちゃんは『はねる』で素早さをあげて、七体は。たまりんはハープひきながら僕らの援護。
つまり、1ターンで二百体ていど倒してるのに、いっこうに終わりが見えない。
「ねえ、猛」
「なんだ?」
「変じゃない? ミニゴーレム、見た感じ、三百くらいしかいないよね?」
「ああ。だな」
「でも、もう5ターンは戦ってる」
「うーん。もしかしたら、一度、戦闘不能にしても、ターン経過で回復するのかもしれない」
「キリないよ」
「ないな」
たしかにすぐ倒せる。こっちに受けるダメージもそれほど強くはない。でも、このまま、えんえんと復活されたら、そのうちにはこっちのMPがつきて、体力が回復できなくなる。困ったな。停止ボタン押したいけど、こう密集してると、背中側までまわりこめないし。
「もうしょうがないよ。かーくん。ミニゴーレム、壊しちまおう」
「ええー? それはなんかなぁ。賠償金払えって言われたら、どうする?」
「かーくん。金持ちなんだろ?」
「そうだけど」
だからって、こっちが悪いわけじゃないのに、三百億円も払うのヤダなぁ。
「あっ、そうだ」
僕は思いだした。前にミニコがプログラムFでミニゴーレムの大群を停止させたことを。
あれだ。もう一回、あれをやってもらおう。
「ミニコ、お願い!」
「ミ〜?」
「プログラムF、やってくれない?」
「ミー!」
ミニコは前に出て、両手をつきだす。
「ミー……」
ぽんっ。花がひらいた。
どうだ? 効いたか?
赤く点滅しているミニゴーレムたちの目が、しだいに黄色く……いや、ダメだ!
「ノー。ノー。ノープロブレムですよ。ミーの増幅装置は強力ですね」
ああ、また変なの出てきた。