第174話 ゴライの陰謀?

文字数 1,475文字



 夕飯まで特訓したから、それぞれ二つずつ職業をマスターした。
 僕は踊り子と勇者。
 猛は武闘王と重騎士。
 アジは大僧侶と大魔法使い。
 ぽよちゃんは木竜と市松人形。芸達者になっていく、ぽよちゃん。

 たまりんは大賢者。
 そして、なんと、賢神というのになることができた。最高職だ。詩人と賢者をきわめていくとなれるらしい。最高職だけあって、マスターに時間がかかる。まだ習得中。

「やったー! 勇者マスターしたよ。マスターボーナススキルで装飾品が一個多くつけれるようになった。僕の流星の腕輪〜」
「兄ちゃん、勇者マスターしたけど、たくさんつけるほど、アクセサリー持ってないな」
「しょうがないなぁ。精霊のアミュレットあまってるから、やるよぉ」
「サンキュー」

 みんながあたりまえの顔して僕にたかっていく。まあ、いいんだけどさ。

「じゃあ、ご飯食べて、お風呂入って寝よう」
「そうだな。明日はいよいよ決勝だもんな」
「ゴライとかぁ。うちも闇討ちにあわないように気をつけないとね」
「かーくん、夜中に目がさめても、一人でウロウロするなよ?」
「う、うん」

 だけど、前のときは兄ちゃんがなかなか起きてくれなかったんじゃないか。あんなこと、もう二度とないとは思うけど。

 さて、僕らはギルドでお金を預けたり、それぞれの職についたりしてから街へくりだした。今日は何を食べようかなぁ。

「たまにはお寿司にする?」
「ダメだよ。かーくん。肉じゃないと。明日、力が出ないぞ」
「わかったよー。じゃあ、ジンギスカンね」
「おっ、いいね」

 ちょっと高級そうな店が王宮の近くにあった。カウンター席はなく、全室個室だ。

「何名さまですか?」
「人間は三人だけど、ぽよちゃん用にニンジンがあれば、生でください。あと、デザートは四人前で」
「かしこまりました」

 僕らは店員さんに案内されていく。細い廊下を通って客室の前をよぎった。なかの話し声がもれてる。

「……今日のことは失態だった」
「どうしますか? これでは予定が……」
「今さら、どうしようもないだろう。しかし、まだ機会はある。明日は三位決定戦だ」

 ん? 三位決定戦?
 それって、蘭さんたちの試合だな。なんだろう? 今日の失態で三位決定戦ってことは、もしや、蘭さんを拉致しようとした犯人か?

 思わず、立ちどまる。
 なかは見えないんだよね。入口が衝立(ついたて)で隠されてる。

「お客さま。こちらでございます」

 ニッコリ笑う店員さんが言うので、しょうがなく奥の部屋へ行った。
 こっちには大食い四天王がいるんで、手始めに五人前、肉を持ってきてくれるよう注文する。

 かなり満腹になったころ、僕はトイレに行くために席を立った。

「ふん。ふん。ふ〜ん。羊うまうま〜。羊なのにウマ〜。ふふ〜ん」

 すると、ちょうどそのときだ。あの怪しい会話が聞こえてきた部屋から、数人の男が出てきた。一人だけめちゃくちゃノッポ。ゴライだ。

 僕は蒼白になってたと思うね。さっきまでのご機嫌かーくんは一瞬にして消え失せた。ビビリまくりかーくん出現!

 つっ立ってる僕の気配を感じたのか、ゴライがふりかえる。
 ゴライはジロジロと僕を見た。僕が大会参加者だってことは、ひとめでわかったと思う。目立つ赤いパーカー着てるしねぇ。

 ギャー! やられる。闇討ち! ヤバイ! 助けてー。猛!

 ところがだ。
 ゴライは僕を見ても、とくに襲ってくるようすはない。店内だし、事を荒立てるわけにいかなかったか。よかった。そのまま去ってく。助かった。

 ——思ったら、そのやさき、やっぱりゴライはもう一度、帰ってきた。

 ギャー! 今度こそ、やられるー!
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