第261話 捕まったノームたち
文字数 1,852文字
我に返ったノームのダバさんを案内役にして、僕らは下へ下へと進んでいく。
キラキラとキレイな鉱脈がどこまでも続いていく。
けど、なんだろうな。坑道が下にむかうにそって、息苦しいような。空気が薄くなってるのかな? 地下坑道って酸素が少ないんだよね。
「クピ、コクッピ。ピコピコ、コピコ」
「ピーコ、コクッピ? クピコピー」
「コクッピ、ピークピ」
ああ、猛がますます人間離れ……兄ちゃーん。戻ってこーい。
「なんかな。ダバさんが言うには、むりやり地下を掘らされるようになってから、変なケムリがわいて出るようになったんだそうだ。それを吸うと気分が悪くなる。毒なんじゃないかって言ってる」
「毒ーっ?」
「うん。毒」
毒ー! どうしよう。危ない。そんなの死んじゃうよー。
「防毒マスクってなかったっけ!」
「ないだろ? 兄ちゃんは毒耐性あるから平気だぞ?」
「ん? 僕も毒耐性あるよ? アクセサリーの効果だけど」
「なら、いいんじゃないか?」
「そっか」
とりあえず、僕らは毒にやられる心配はないみたいだ。ダバさんには猫車のなかに入ってもらう。念のため、トラっちの首にも毒を防御してくれるアナコンダの牙をつけた。
進んでいくと、たまに戦闘に突入する。さっきのように混乱したノームだったり、見張りのガーゴイルだったりする。
「かーくんさん。戦闘のあと、毎回、私のレベルをさげてください。お願いします」
トーマス、やっぱりそのために僕らの隊に……? ま、いいや。仲間が強くなるのはいいことだし。
「じゃあ、ついでに、たまりんとネコりんたちもレベル下げしよっか。猛は?」
「おれはいいよ」
「ふうん? ぽよちゃんみたいに、あっというまに強くなれるよ?」
「いや、いいんだ。おれたち兄弟は数値にゆとりがあったほうがいいんだよな」
「ふうん?」
とにかく、出るのは魔王軍のガーゴイルや竜兵士だ。倒すのに手間はかからない。
どんどん進んでいく。
やがて、その場所に出た。僕らの通ってきた道のさきに、ぼんやりした光がある。天井が高くなっているようだ。
いきなり光のなかへとびこむのは危険だ。手前の壁にへばりついて、ようすを見る。
「あッ!」
「これは……」
「ヒドイですね……」
「あそこに村長さんがいる!」
「キュイ……」
ノームたちが働かされてる現場だ。ムチを持ったガーゴイルや竜兵士が、足かせをつけられたノームたちに岩壁を掘らせたり、重い岩のかたまりを運ばせている。
ヒドイ。ノームたちはみんな、食べ物もろくにあたえられていないのか、顔色が悪くやつれてる。ふらふらしてよろめくたびに、ピシピシとムチが鳴っていた。
「早く、助けよう!」
「そうだな。見たとこ、ガーゴイルや竜兵士だけだ。とくに強いボスはいないな」
「うん。行こう!」
僕らは走って採掘場にとびだしていく。
「かーくん。わかれてガーゴイルたちを倒していこう」
「うん」
「あんまり離れすぎるなよ?」
「わかってるよー」
僕らもう強いからね。猛、僕、ぽよちゃんは一人ずつでも千人力。それぞれに手近な敵を次々に倒していく。もう、バッサバッサだ。
猫車は僕についてくるな。
「えい! ノームたちをいじめるな! えい、えい!」
「わあっ、きさまたち、何者だ?」
「うげー! なんで、こんなところに人間が!」
そうだった。竜兵士って人間語をしゃべるんだよな。
もしかして、彼らって竜人族なんだろうか? ってことは、この世界では猛の仲間? でも、竜兵士ってたいてい魔王軍だからさ。やっつけないわけにはいかない。
「あっ、ぽよちゃん。遠くまで行ったらダメだよ?」
「キュイ〜!」
「トーマスやアジは、ノームたちを早く猫車のなかに入れてあげて。たまりん、看病が必要な人に回復呪文を」
僕やぽよちゃんが見張りの兵士と戦い、そのあいまをぬって、アジやナッツたちがノームを救出していく。
あるていどのところで猛とも合流した。
「みんな、しっかり。今、足かせをはずすよ」
なぜか、牢屋の鍵で開錠できた。便利だなぁ。
「これで全員かな?」
「かーくん。応援部隊が来る前に逃げだそう。この人たちはすぐに村に帰したほうがいいぞ」
「そうだよね」
見たところ、もうノームたちはいないようだ。
ところがだ。
助けだした村長さんが、こんなことを言いだした。もちろん、猛の通訳つきだけど。
「わしらのほかにも、奥にまだ捕まっとるものがおるだば。助けてやってほしいだば」
「わかりました」
奥へ進んだ僕らは絶句した。
魔王軍はこれを掘りだそうとしてるのか?
でも、これって……?