第43話 盗賊団のアジトをめざして
文字数 1,900文字
翌朝。
はぁ。お風呂につかったあと、ゆっくり寝た朝は清々しい。今日の冒険は特別なものになるぞ。
僕の英雄がついてきてくれるんだもんね〜
急いで出発前に、昨日ひろったお金ちゃんたちを銀行に預けておいて、王城前に集合だ。キヨミンさんがかけつけてきて、お菓子の差し入れをくれた。
「わたしは戦えないのでいっしょに行けないですが、これを食べて、がんばってくださいね。今日のはとびっきりのにしてみましたよ〜」
スイーツは嬉しいので、手をふる彼女が天使に見える。
だまってれば可愛いのに、口をひらけば腐ってる……。
さて、僕らは昨日のメンバーにワレスさんをたして、馬車で出発だ。エレキテルまでは魔法でかんたんに移動できる。
そこから西へは馬車をつれて徒歩だ。エレキテルのまわりに出てくるモンスターは、昨日とほとんど変わりがない。僕か蘭さんがリーダーになって、かわりばんこに外に出る。
すると、馬車のなかでいっしょになったとき、ワレスさんが言った。
「ロランの力が急に五万になったのは、なぜなんだ?」
ははぁ。それが気になって、ついてきてくれたのかな?
どうしても、わけが知りたいんだ。
僕は蘭さんたちの反応が予想と違ってたので、ワレスさんにも打ちあけることにした。
「じつは……」と、話したあと、やっぱり、ワレスさんの目つきも蘭さんたちと同じものになる。
「どうして今までナイショにしていたんだ?」
「いや、その……」
耳元でささやかないでください。ドキドキするんだよなぁ。こんくらい美形だと、もう性別とか関係ないのか?
「えっと、ワレスさんの数値も僕の特技であげましょうか? スマホが動くようになったらだけど」
「そうだな。おれもだが、信用のなる幾人かの部下のステータスをあげてもらいたい」
「一人につき十万ずつしか書きなおせないみたいです」
「おれはそんなにいい。自分で強くなった実感がほしいからな」
あっ、ワレスさんはそっち派だったか。レベルもしょっちゅう、あがってるし、マスターしたときのボーナススキル目当てに、職業もかなり習熟してるみたいだ。
「じゃあ、どのくらい?」
「すべてのステータスを千ずつ頼む」
「えっ? たった千? 八項目でも八千ですよ? あと九万二千もあまるのに」
「それで充分、今のロランと互角以上に戦える」
ふうん? 千で五万に太刀打ちできると? わかんないなぁ。
僕はチョロっと、ワレスさんの今のステータスを見てみた。仲間でもNPCだと詳細な数値は見えないんだけど、なぜか見えた。相手が見てもいいよって気分だと見えるのかもしれない。
レベル56(死神騎士)
HP742(3561)、MP471(1648)、力458(2748)、体力420(1260)、知力448(1120)、素早さ528(1742)、器用さ415(1452)、幸運173(570)
思わず、叫んだよ?
「ギャーッ! なんですか? これ。このカッコって、その職業についたときに補正された数字ですよね? 魔法使いがMPと知力プラス20%だけど、HPと力マイナス20%されるみたいな。なんで740が3500になるんですかーっ?」
おかしい。いくら、たくさん職業をマスターしてボーナススキルがあるとしても、これは伸びすぎ。
「あっ、それに職業が死神になってる! だから? だから?」
ワレスさんはおもしろそうにニヤニヤ笑ってる。僕のあわてぶりが見たかったから、わざとステを読ませたって気がするなぁ。
「死神じゃない。死神騎士だ。死神と呼ばれるほど強い騎士のことだ。だが、これじたいの就労補正値は、HP、力、体力にプラス20%、素早さ、幸運にプラス10%だ」
「じゃあ、なんで?」
「おれ個人の特技だな。カリスマのランクが5にあがったら、マスターボーナススキルの効果が十倍になった」
うっ。それはズルイよ……。
僕がせっせとつまみ食いして、やっとHPを1000まで伸ばしたって言うのに。
いいもんね。もっともっと、つまみ食いするもんね。
「ワレスさんって、個人特技のランク、全部マックスだったんじゃないんですか?」
「それはおまえの勘違いだろう。『カリスマ』はこの前なった。あとは『古の血』がまだランク3だ」
「いいなぁ。僕もそういう特技欲しいなぁ」
「何を言ってる? 小説を書いて、モンスターの生死まであやつれるくせに。おれの特技は基本的に戦闘に特化している。だが、むしろ、おまえの技のほうが将来的に重要になってくるかもしれない」
まあ、そう言われると、そうなんだけどね。
早く、ナッツのお母さんや、蘭さんのお兄さんを助けてあげたいなぁ。