第87話 侵入! 魔物船

文字数 1,423文字



 えーと、ウツボ兵士、ヒトデ船員、サザエ戦士。どれも新しいモンスターだなぁ。たぶん、ウツボ兵士は竜兵士の海バージョンなんだろうと思う。

「ぽよちゃん。聞き耳お願い」
「キュイ」

 いつもどおりのお耳ピクピク〜
 よかった。ぽよちゃんがいてくれて。いやされる。

 聞き耳によると、ウツボ兵士の特技は、かみちぎる。うっ、痛そうな特技。あきらかに攻撃特化型だな。

 前にウツボンってモンスターがいたけど、あれはまんまウツボだった。でも、ウツボ兵士はニョロっとした長い頭の二足歩行モンスターだ。竜兵士とよく似たよろいを着てる。キモイ。

 あっ、キモイって言ったら、またモンスターを傷つけるかもしれない。やっかいだから言わないでおこう。

 ヒトデ船員は船乗りっぽい服を着た、赤いヒトデだ。これもキモ……いや、まあよそう。特技はヒトデ分身。ん……たぶん、分身して増えるんだ。

 サザエ戦士は、これもよろいを着たサザエ。つまり、この三種類は頭部が魚介類になった人型モンスターだ。
 サザエ戦士の特技はツボ焼き……なんか美味しそうな技だけど、まさか自分の身を調理してさしだしてくれるわけじゃないよね?

「とりあえず、戦おうか。あっ、僕、蘭さんの預かりボックス借りたままだから、傭兵呼びはいつでもできるね。手紙もあとで書けば、連絡はとれる」

 港は競走だったから、落ちてる小銭ひろうヒマもなかったけど、これなら僕の最大の攻撃は使用可能。安心。安心。

「僕が最初に行動するから、そのあと残ったモンスターの数によって、みんなの行動を決めるよ」
「キュイ」
「ゆらり」
「ミ〜」

 うーん。モンスターだけだと、会話がさみしい。人間語が通じるって、大事なんだな。

 とにかく、足パタパタ。素早さあげる、あげる。
 うんうん。らくに動けそう。
 コイツら、そんなに素早くはないね。というより、陸地の敵よりちょっと弱い?

 試しに僕は精霊王の剣をぬいて、一番見ため凶暴そうなウツボ兵士に切りかかった。最近、つまみ食いしてるヒマがない。

 ギャー! クリーンヒットして、ウツボ兵士の頭がもげちゃった! 魔王軍とは言え、殺してしまった……と思ったら、ウツボ兵士はウツボンになった。あれ?
 ミニコが僕に追随(ついずい)する攻撃で、あっけなくウツボンを失神させる。

「もしかして、コイツら、人型モンスターなんじゃなくて、前に出てきた海洋モンスターたちがよろいの上に乗っかってるだけ?」

 そう言えば、ヒトヒトっていうヒトデのモンスターや、サザエは……サザエはいなかったな。ホタッテっていうホタテ貝のモンスターはいたっけ。

 ウツボンもヒトヒトも、前はそれなりに歯ごたえのある敵だったけど、今さら出てきても、ぜんぜん僕らの敵じゃない。それにレベルも1のままだ。

「首さえ切り落とせば、楽勝だね」

 これなら、傭兵呼び使うことは、まずないね。
 僕は続いて、ヒトデ船員の首も切りはなした。コロリ。
 そしてやってきたミニコが、かかと落としで倒す。

 あとはサザエ戦士か。
 サザエは前にはいなかったけど、きっと切りはなせば、らくに……。

「えいっ!」

 ポロリ。
 やっぱり、かんたんに頭が落ちる。うーん。海産物。ツボ焼きにしたら美味しいのかなぁ?

 なんて考えてたら、サザエのフタがあいて、急にジュウジュウと音を立てる。しょうゆのこげる、いい匂い。

 ん? これは、ツボ焼きでは?

 次の瞬間、サザエのフタがひらき、ビシャーッと熱湯がとびだしてきた。
 うぎゃっ、アツイー!
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