第92話 ミニゴーレム(遠隔操作中)戦2
文字数 1,888文字
いったい、戦闘の最中に誰だ?
見ると、ミニゴーレムたちの奥からブタさんがやってきた。
えっ? なんで、グレートマッドドクターが? 毒かぶって自滅したのに?
「グレートマッドドクター?」
「ノー。ノー。それはミーの愚かなる次兄ですね。ミーはグレート大海賊キャプテンでーす。ブヒッ」
ああ……やっぱり、ブヒッていうんだ。名前もくどいね。自分で自分をグレートって言うのがそもそもイタイんだけど、せめてグレートキャプテンでよくない? 大海賊いる?
「そっか。グレート研究所長、グレートマッドドクター、それにグレート大海賊キャプテン。三匹の子ブタなんだ」
「グアーッ! 誰が三匹の子ブタじゃ、われェー! ブヒッ」
「うん。もう、そのキャラ、飽きてきた。やっつけちゃうよ」
すると、グレート大海賊キャプテンはブヒヒと鼻をならす。
「おまえたちはミーを倒すことはできん。なぜなら、ここにいるミニゴーレムたちがすべて、ミーを守ってくれるからだぁー! そして、ミニゴーレムは自らミーにくわえられる攻撃にあたりに行くため、かかえている子どもたちにも同時に危害がおよぶのだ。ブッヒッヒ。どうだ、手も足も出まい!」
うーん。たしかに、ミニゴーレムは仲間を守るっていう技を使うよね。
「どうしよう。このままじゃ、何度倒しても復活するミニゴーレム相手に、ただただ僕たち、タコなぐりにされるだけだよ」
「だからもう壊しちまおうぜ。かーくん、三百億円くらい、チョロいんだろ?」
「チョロいけど……」
「ブヒヒ。手も足も出まい」
ああ、なんか気にさわるーっ。
猛が言った。
「よし。じゃあ、次からミニゴーレム倒したら、すぐに子どもを奪いかえすんだ。馬車はNPCを人数としてカウントしない。子どもを全員入れてしまえば、あとはミニゴーレムだけだろ」
「う、うん」
その方法もやってみた。でも、途中で根本的な解決になってないことに僕は気づいてしまった。
「兄ちゃん。子どもはとりもどせるけどさ。ミニゴーレムがブタさんを守ることはふせげないよね?」
「そうだよ。だから、子どもがいなくなったら、ミニゴーレムを破壊するんだ」
「ダメー! ミニゴーレムは悪くないよ。悪いやつにあやつられてるだけ! ミニゴーレム虐待反対!」
「だからって、このまま、おれたちが倒れたら、子どもはぶじに家に帰れない」
それもそうか。くうっ……どうしよう。
「ブッヒッヒ! 手も足も——」
「しつこいな! わかってるよ!」
「ぶ、ブヒ……」
えーと、どうしたらいいのかな。ミニコだって僕らの仲間だ。壊れたら悲しい。きっと、このミニゴーレムたちの持ちぬしだって、家族の一員として大切にしてるはずだ。お金ですませられる問題じゃないんだ。
うーん。うーん。
「ブヒヒ……早くそっちのターンを終わらせて——」
「わかってるよ!」
「ぶ、ブヒ……」
そのときだ。
困りはてる僕の袖を誰かがツンツンとひっぱった。
「ん? 誰? 兄ちゃん?」
「違うぞ。おれじゃない」
「ん?」
「ピー」
あっ、ふえ子だ。
どうしたんだろう?
「ピーピー、ピピー」
「ごめん。ふえ子。何言ってるかわかんない」
「ピー……」
ところがだ。
「かーくん。手紙を読んでと言ってるな」
「えっ?」
「えーと、なんとか先生の手紙」
「ホムラ先生」
「たぶん、それ」
「なんでわかるの?」
「モンスター職、あれこれマスターしたから、なんとなくわかるようになった」
「…………」
ああ、わが兄がますますモンスター化していく……。
ともかく、手紙だ。
さっきのあの
「ミャーコ。ホムラ先生の手紙、お願い」
「ミャっ」
あっ、鳴いた。たまに返事するよね。ミャーコ。
「えーと、なになに? うーん。やっぱり読めない!」
「ブヒっ、そろそろ攻撃を——」
くるっと僕と猛は同時にふりかえる。
「ウルサイ」
「黙れ」
「はい。ブヒヒ……」
手紙の文字は走り書きすぎて意味不明。でも、ミニゴーレムがなんとか書いてあることだけはわかった。
「かーくん。これ、研究だ。ギガ?」
「ギガゴーレムだね!」
「暴走を止めるって書いてあるな」
「わかった。ギガゴーレムに同調して暴走したミニゴーレムを、ミニコが止めたときのことを調べるって言ってた。その結果なんじゃないの?」
すると、ふたたび、ふえ子が僕の袖をひっぱる。
「ピー。ピピ、ピピピー」
「かーくん。リボンをミニコにつけるんだって言ってる」
「ああ、リボンあったね。封筒にいっしょに入ってた」
ズルズルとミャーコの口から出てくる赤いリボン。
これをミニコにねぇ。
ま、いいか。つけてみるか。