第98話 義留堂

文字数 1,498文字



 異国のギルド。
 ヒノクニにもギルドがあってよかった。

 見た感じ、設備はボイクドのギルドとあんまり変わらないみたいだ。
 武器屋、防具屋、雑貨屋などの店屋。教会、マーダー神殿。酒場。情報屋。銀行! 僕の大好きな銀行。

 僕はダッシュで銀行にむかった。けど、受付のお姉さんに呼びとめられてしまった。

「そちらのお坊ちゃん。わが国のギルドには初めてどすな? 一見はんはこちらで、まず名前を登録してくれまへんか?」

 誰が坊ちゃん? えっ? もしかして、僕?

 僕はお姉さんを見ながら、自分の鼻を指さす。お姉さんは大きくうなずいた。
 もしかしなくても、僕だったか。子どもじゃないんだけど……。

「ボイクドのギルドで登録したんですけど?」
「義留堂はわが国独自に運営しとるんどす。もちろん、ボイクド国は友好国やさかい、銀行、預かり所、称号は連携しとります。ただし、ボイクド国からお金を引き落とすには手数料がかかりますけどな。そのほかの設備の利用には、当国の義留堂への登録が必要になりますえ」
「そうなんだ。もしかして、ギルドランクも別になるの?」
「さようどす」

 受付は和服のお姉さん。
 舞子口調。楽しい。いいギルドだ。気分だけでもお座敷遊び。

「じゃあ、登録してください」
「へえ。こっちゃへお名前どうぞ」

 僕は必要事項を登録用紙に書きこんで手続きをすます。
 せっかくSランクまで行ったのに、また最初からかぁ。と思ったけど、称号の確認をされたら、いっきにAランクになった。

「お客はん、たいそうな冒険者どすなぁ。竜殺し、朱雀殺し、寄生木(ヤドリギ)殺し、豚殺し、牛殺し。勇ましい称号、ぎょうさん持ってはりますなぁ」
「いやぁ、それほどでも」

 朱雀はフェニックスのことかな? 言っとくけど、殺してないからね? 戦闘に勝っただけ。

 それに、竜殺しや朱雀殺しはカッコイイけどね。牛殺しだけでも肉屋なのに、豚殺しまでくわわって、ますます屠殺業感増し増しだからね。

「あ、あとね。ギガゴーレムも倒したよ」
「ほんまどすなぁ。巨大機械兵殺しの称号もさしあげますえ」
「巨大機械兵! カッコイイ」
「お客はんならギルドに寄付さえしてくれはりましたら、すぐにトリプルAランクになりますえ」
「するする。寄付する。いくら?」

 なんか乗せられてる気もするけど、ギルドランクは高いほうが何かと旅がしやすい。ヒノクニに汽車があるかどうかは知らないけど、蒸気船は確実にボイクドとのあいだを結んでる。チケット購入にもランク高いほうが優遇されるからね。

 僕は受付で、ぽんと五百億円を寄付だ。ゲンカンからここへ来る道中だけでも、六千億円ひろったからなぁ。貯蓄が増えれば増えるほど、一回でひろうお金が巨額になっていく。

 それに、やっぱり、招き猫のガマグチが戻ってきたせいか、ミャーコの機嫌がいい。僕が言わなくても、せっせとひろってくれる。

「五百億円の大口寄付、ほんま、おおきに。かーくんはんにはトリプルAのランクをさしあげますえ。現状、ヒノクニのギルドでは最高ランク所持者どすえ」
「へえ。そうなんだ。ランクとして最高はS?」
「さようどす」
「どうやったらなれるの?」
「青龍の守護者の異名を持つ
 、タツロウはんを負かさはったときどすな」

 ん? タツロウ?
 僕はピンと来たね。
 この国には僕が書くあのシリーズの主役もいるらしいぞ。
 だよね。同じシリーズの穂村先生や清美さんが出てるんだから。

 そう考えて、僕はにわかに不安になった。思いだしたのだ。

 ゲンカンの街で見かけた女神級の美女。あれって、もしかして、青蘭(せいら)だったんじゃないか?
 青蘭の最大の特徴って、さらわれ癖なんだけど……大丈夫かな?
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