第167話 グリーンドラゴン戦2

文字数 1,441文字



 おかしい。どう考えても変だ。
 HP三万の巨竜が戦闘不能になってるのに、たかだかHP二百ていどのちっこい人形が、なんで立ってるんだ?

 僕は市松人形の特技をもう一度、よく見なおした。

「あっ! 隠れるって技がある! アンドーくんが使うやつだ」

 姿を消して、なりをひそめることによって、戦闘中、自分だけターゲットにされない特技だ。な、なんてやっかいな技を持ってるんだ……。

「ねえ、市松人形って、意外と最強じゃない?」
「だな。身を隠しながら相手の攻撃を封じる。強いモンスターと組んだら、とんでもない補助役だ」

 ああ、味方が持ってたら、ものすごく便利だ。
 いいなぁ。市松人形も……欲しい? いや、見ためがちょっと、怖い、かな? 呪いの人形みたいで、夜中に見たら心臓が……。

「とにかく、僕、倒すよ」
「ああ。頼む。兄ちゃん、つまみ食いしたから、もう動けない」

 まだ通常攻撃は使えない。
 もしかしてこれって、一回封じられると、その戦闘中ずっと使えないのかな?
 そうだとしたら、やっかいだぞ。戦闘が長びけば長びくほど、こっちのできる行動パターンが減ってくってことだ。通常攻撃しかできない人だったら、逃げるしかないってこと?

 まあいい。今はもうグリーンドラゴンはいない。
 市松人形二体だけ。たいした攻撃はしてこない。

「えーと、じゃあ、魔法攻撃しかないかな。行くよ? ミニコ」
「ミ〜」

 またまた僕とミニコのコラボだ。やまない連鎖の嵐。まあ、今は二撃で終わるだろうけどさ。

「燃えろ〜」
「ミミミ〜」

 と言った瞬間、一体の人形がスウッと姿を消した。残る一体に炎は直撃する。
 けど、魔法の連鎖は起きない。ターゲットが消えたから、攻撃できないのだ。

「ああっ! ズルイ!」
「困ったな」
「どうしたらいいの?」
「まだ戦闘音楽もかかってるし、このまま、市松人形が姿を現すまで待つしかないな」
「ええーッ!」

 なんてヤツだー!
 隠れるって、ターンに関係なく、いつでも使えるのか。隠れたまま逃げたら、最低でも負けることはないな。

 しょうがないんで、たまりんはハープをひき、ぽよちゃんとアジは身を守った。

 敵の番だ。
 スウッと姿を現した市松人形。よし。次のターンでしとめるぞ。
 ん? 両手をあわせて祈るようなあのポーズ。何してるんだ?

 次の瞬間、グリーンドラゴンが復活した!

「ええー! なんでーっ?」

 僕は恐る恐る、市松人形の特技をもう一度、見た。
 ある。たしかに、書いてある。

 復活の祈り——

「兄ちゃん。市松人形、特技で蘇生魔法使うよ」
「……だな」

 なんて最強のサポーターだ。
 こんな敵、見たことない。

「どうしよう?」
「もう一回、グリーンドラゴン、倒すしかないんじゃ?」
「だよね……」

 よみがえったグリーンドラゴンは花吹雪を散らしてくる。全体物理攻撃!

「ああっ、アジとぽよちゃんが戦闘不能に!」
「さっき、守ってない。すまん。グリーンドラゴン倒したから、もう大丈夫だと思ってた」
「猛。ドンマイ」
「ははは……」

 くうっ。だんだん追いつめられてくな。
 でも、次はこっちの番だ。
 猛がグリーンドラゴン倒してくれるし、市松人形もあと一体だ。

 僕は楽観してたんだけど。

「猛、攻撃しないの?」
「えっ? まだ動けないぞ?」
「僕らの番だよね?」
「のはずだけどな」

 僕らの番じゃなかった。
 復活の祈りは全体蘇生術だったんだ。


 市松人形Bの攻撃!
 タケルのギガファイヤーブレスは封じられた!


 ああっ、市松人形も復活してたか。ヒドイよ。隠れてるなんて。
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