第266話 城内をさまよう僕ら

文字数 1,451文字



 パーティーメンバーが一人ふえた。やっぱり友達といると嬉しいな。

 それにしても、出てくるのはやっぱりオバケモンスターなんだけど。

「なんか、長いねぇ。水路、こんなだったかなぁ?」
「かーくん、迷ってないよな?」
「わかんない。蘭さんたちはどこなんだろ?」

 こんなことなら、ナッツだけでもついてきてもらっとけばよかったかな。

「かーくん。こっちやないか? ほら、空気がゆれとるで」
「風が流れてるってことか。行ってみよう」

 三村くんに言われたほうへ進んでいくと、ようやく城へ出ることができた。城の地下のようだ。でも、以前に通った牢屋とは別の場所だ。

「ここ、前には通らなかったなぁ。でも、あの古城だってことはわかるよ。様式とか壁や床の模様が同じだし」
「広い城なんだな」

「えーと、蘭さんがどこにいるかわからないし、とにかく、このへんの部屋を調べながら進もうか?」
「ふえ子のお母さん、助けたいもんな」

「人間をモンスターに変える機械が置いてある研究室は、四階にあったと思う。だけど、あの機械にフェニックスが入ると思えないんだよね。身長二メートルまでしか入らないと思う」
「じゃあ、フェニックスだけ、ほかの用途でつれてこられたのかもしれない」

「なんだろ?」
「巨大な鳥だから、何かを乗せて飛ばすためか、または新しい研究の実験台」
「猛、怖いこと言うね」
「推理だよ。おれが実験台にするわけじゃないからな」

 うーん。たしかに、ただの大きな鳥ならほかにもいる。魔王軍なんだから、ドラゴンもいるだろうし。
 だとしたら、なんのためにフェニックスを……?
 ああ、早く見つけてあげないと、悪いことが起きそうでイヤだよ。

 城のなかを進んでいく。
 どうも前に通った表門からの通路と反対の裏門あたりじゃないだろうか? 遭遇するモンスターが以前と違う。

 ドラゴンが出るよ。レッドドラゴンとかのブレスを吐くやつじゃない。デッカいイグアナみたいなのだけど、やっぱり前の竜兵士見習いにくらべたら、ずいぶん手ごわい。

 いや、手ごわいっていうのはウソかな? 数値書きたす前の三村くんにとっては、手ごわい。つまり、ふつうにレベルアップしただけの人には。

 ということは、僕ら正しいルートで来てるってことなんだろうな。たいてい、こういうダンジョンって、二度めに来るときはモンスターが強くなってる。


 チャララララ……。
 ドラゴンA、B、Cが現れた!
 竜隊長が現れた!


「アイスブレス!」


 戦闘に勝利した。ドラゴンABCを倒した。竜隊長を倒した。ドラゴンのウロコを手に入れた。竜隊長の魂を手に入れた。


「ああ! 猛、すぐ倒さないでよ。つまみ食いしてからって言ったじゃん。ドラゴンはHPそこそこ高いんだからさ」
「あっ、ごめん。ごめん。じゃあ、順番につまみ食いな」
「うん」

 僕らにかかれば、ドラゴンなんて一瞬でマットに沈むね。ここ、リングじゃないけどさ。

「なんか、城のふんいきが前と変わったなぁ。前より暗くなったよ」
「そうなのか?」
「前はさ。亡霊店主が宿なんかやっててさ。もっとこう、コミカルだった」
「ふうん」

 一階、二階とあがっていく。
 なんだろうか? どこからか、変な振動が伝わってくるんだよな。

「ズシン、ズシンって床がゆれる」
「そうだな」
「かーくんら、ボスがおるんちゃうか? 難物ダンジョンなんやし、ボスも一匹二匹とちゃうやろ」
「うーん」

 その可能性はたしかにある。
 ボスかぁ。蘭さんなら危険察知で前もってわかるんだけどな。
 蘭さん、いまだに出会わないんだよな。心配だ……。
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